きゃりーぱみゅぱみゅ復帰、KAWAII LAB.躍動 『ASOBIEXPO』で示したアソビシステムの現在地【出演者独占コメントあり】

 アソビシステムが主催するミュージック&カルチャーフェス『ASOBISYSTEM 18th Anniversary ASOBIEXPO 2025』が、7月20日に幕張メッセ 国際展示場 展示ホール 9~11にて開催された。

 きゃりーぱみゅぱみゅ、新しい学校のリーダーズ、FRUITS ZIPPERなど、多種多様なアーティストを擁するアソビシステムは、原宿を拠点にMADE IN JAPANのコンテンツを発信するカルチャープロダクション。2018年にアソビシステムの設立10周年を記念した昼夜2部制のイベントとして『ASOBIEXPO』が新木場STUDIO COAST/ageHaにて開催されて以来、7年ぶりにして約12000人の来場者が集まるフェスへと成長を遂げた。

 その10周年開催の際にも出演していたきゃりーは、昔も今もアソビシステムを象徴する存在であることは変わらないが、この7年を経て、多くの後輩アーティストが事務所に所属し、より先輩アーティストとしての貫禄を放っている。リーダーズのSUZUKAは「かわいいを作ったレジェンド」と紹介し、大トリを務めるきゃりーへとバトンを繋げていた。2011年に「PONPONPON」がYouTubeを通じて、国内外で大きな注目を集め、若くしてワールドツアーを成功させたきゃりーは、現在アソビシステムが掲げる「原宿から世界へ」を体現している一人であり、そのコンセプトは特にFRUITS ZIPPERをはじめとする「KAWAII LAB.」にも受け継がれている。

 今回は昨年出産し、1児の母となったきゃりーにとっての復帰ステージとなったが、「ファッションモンスター」を皮切りにしてそのブランクを全く感じさせないキレキレのパフォーマンスだ。きゃりーの生みの親である“あーみーさん”こと中川社長のアーティストファーストな姿勢に感謝を示しつつ、「今日はオタが多いから」と観客のダンスへの信頼を覗かせながら「キミに100パーセント」での“くるくるダンス”をフロアに任せていく。ほかにも「CANDY CANDY」「にんじゃりばんばん」「原宿いやほい」といった誰もが口ずさめるオールタイムベストなセットリストの中で、異彩を放っていたのが初披露となった新曲の「KURU KURU HARAJUKU」だ。タイトルに“HARAJUKU”を冠しながら、エキゾチックかつドープな重低音が響く、きゃりーにとって新境地とも言えるテクノサウンドだ。『ASOBIEXPO』が音に溺れるクラブと化した瞬間だった。なお、会場入口のブースでは、きゃりーの産後復帰を祝う「きゃりーおかえりボード」と題したフォト企画が展開されており、帰り際に覗いた時にはボードいっぱいにメッセージチェキが貼られていたのが印象的だった。

 リーダーズは、前日に同じ会場で結成10周年記念ワンマンライブ『宣誓 ~個性や自由ではみ出し10年~』を開催。身体も心もバキバキのメキメキ状態ながら、仕上がったパフォーマンスでリーダーズファン以外の界隈も圧倒していく。セットリストは新曲「Go Wild」から「Toryanse」へと繋ぐ流れから始まる、ワンマンライブをギュッと凝縮したような選曲。代表曲「オトナブルー」に、中川社長へと感謝の意を伝えた「Arigato」、そして彼女たちにとってさらなる転機となった「Pineapple Kryptonite (Yohji Igarashi Remix) 」でフロアを狂乱の渦へ。「Tokyo Calling」ではSUZUKAが客席に降り立ち、「青春は今を全力で楽しむ、生きることなんです! 青春はエンドレスにあるものなんですよ!」と鼓舞していく。リーダーズのライブは全曲動画撮影可能となっており、アイドルファンの“青春”をも肯定するSUZUKAのこの言葉が、SNSでも話題になっている。終演後、筆者の近くから「かっこよかった! ワンマン行ってみたい!」という会話が聞こえてきたのが忘れられない。きゃりーと同じく、ワールドツアーを開催し、海外のファンも魅了してきた百戦錬磨のリーダーズの4人は伊達じゃない。

 日本のアイドル文化を世界へ発信するプロジェクト「KAWAII LAB.」は、アソビシステム全体をも牽引する、一大勢力となっている。その先頭をひた走るのが、FRUITS ZIPPER。月足天音、松本かれんが体調不良のため、5人でのステージとなったが、気持ちは7人。1曲目の「NEW KAWAII」では、松本が本来担当している落ちサビ前のフレーズを櫻井優衣が担い、「18周年を迎えたアソビシステムがNEW KAWAIIと思います! これからもずっとずっと続いていくアソビシステム、とっても大好きなんだよな」とこの日だけのアレンジで届けた。さらに代名詞と言える「わたしの一番かわいいところ」、デビュー3周年記念ソング「さん」に続いて披露されたのは「かがみ」。かわいいに全振りしたサウンドと歌詞、振り付けが魔法少女アニメを連想させる。『ASOBIEXPO』には親子で参加する姿も多く見られ、筆者の席の近くにいたドレスアップした女の子がキラキラした瞳で、「かがみ」を歌うFRUITS ZIPPERを見つめていたのが心に残っている。ブースエリアには、明治ブルガリアヨーグルトを使ったラッシースタンドが出店。FRUITS ZIPPERが「明治おかし大使」を務めているということで、チョコやグミといったおかしをかけてラッシーフラッペをアレンジすることもできた(飲みやすい!)。また、原宿にあった「KAWAII MONSTER CAFE」のモンスターガールも場内を歩いており、MCで触れていたメンバーの真中まなはモンスターガールの出身だ。

 CANDY TUNEは「キス・ミー・パティシエ」、そして「倍倍FIGHT!」という最旬のキラーチューンでフロアを沸かせていく。会場BGMとして、度々「倍倍FIGHT!」が流れていたが、つい口ずさんでしまうを超えて、つい踊り出してしまう楽曲としてファンのあいだで浸透しているのが現地にいて強く感じたことだ。SWEET STEADYは、呼び出し音で始まる人気曲「Call me, Tell me」のほか、デビュー1周年を記念したメンバー一人ひとりの歌声が響く「SWEET BLOOM」、さらにサムズアップの振り付けが印象的な「ぐっじょぶ!」で『ASOBIEXPO』に集まった全てのファンを肯定する。なお、Pontaパスブースでは、CMに出演しているメンバーの白石まゆみと俳優・ゆうたろうのトークショーが行われていた。アソビシステムにはクリエイターも多く所属しており、「CREATOR'S EXHIBITION」という形で、26名のクリエイターによるアート作品が展示されていることも、“EXPO”としての特徴のひとつだ。

 本編トップバッターを飾ったCUTIE STREETは、「ひたむきシンデレラ!」を皮切りに、ラストは古澤里紗の「盛り上がっちゃだめですか?」を合図にして、大ヒット曲「かわいいだけじゃだめですか?」へ。CANDY TUNEの「倍倍FIGHT!」と同様の一体感が会場に生まれる。また、桜庭遥花の「エンジン全開で来ました」という前振りから、新曲の「キューにストップできません!」。メンバーの真顔や桜庭を中心にしただるまさんがころんだのパートなど、何度見ても発見のある情報量の多い、楽しい楽曲だ。

 ほかにも、FRUITS ZIPPERの松本とCUTIE STREETの桜庭のユニット・PiKiは、「Kawaii Kaiwai」に続く新曲「Tell Me Tell Me ☆」を初披露した。「Kawaii Kaiwai」からユニットのレトロな世界観はそのままに、ジャンルとしてはニューウェーブに踏み込んでいる。一際大きな歓声とピンクのサイリウムの海で迎えられたPiKiだが、新しさと懐かしさの両面を感じさせつつ、アソビシステム印のKAWAIIでラッピングしたオリジナリティ溢れる音楽は、たとえばきゃりーのファンなど、新たな層も取り込んでいきそうな予感がしている。

 新人からベテランまで、音楽ジャンルも異なる多彩なアーティストが所属しているのもアソビシステムの特徴だ。『ASOBIEXPO』にも、シンガーソングライターからバンド、VTuberに至るまで、それぞれの個性を発揮したステージが展開された。

 開演前のOPENING SHOWには、砂月凜々香、bala、かわにしなつき、近藤夏子が短い時間でステージを繋げていった。balaはクリエイティブ・ガールズ・コレクティブ、すなわち女性アーティスト・クリエイター集団。砂月、かわにし、近藤がTouaと同じシンガーソングライターとなる。近藤は10周年開催の『ASOBIEXPO』にも出演していた“古参アーティスト”で、“おしゃべりモンスター”の異名を持つ通りに持ち時間をほぼ喋り尽くしてから、渾身の1曲「Good day by day」を歌唱した。

 アソビシステムは、今年3月にKizunaAIとエージェント契約を締結。3年ぶりに活動再開を果たした彼女の初めてのオフラインライブが『ASOBIEXPO』となった。「future base」「Hello, Morning」といった従来の楽曲をアレンジしたバージョンで歌唱しつつ、セットリストのほとんどは活動再開後にリリース予定の新曲。バーチャルな出演はKizunaAIのみだったが、それでもKizunaAIの歌声、世界観に魅了されている参加者は散見された。終演後、駅に向かう道中で前を歩いている男性がKizunaAIのTシャツを着ていたことも、記憶に残っている出来事だ。

 KizunaAIが唯一のバーチャルな出演であれば、唯一のバンドでの出演となったのがKlang Rulerだ。ブラックビスケッツ「タイミング 〜Timing〜 」のカバーで一躍有名となり、メンバーのyonkey(Vo)は「オトナブルー」を作曲したことでも知られている。バンドは現在ライブハウスツアー中ということもあり、その熱量を幕張に直送するようなアグレッシブな演奏に。中でもTikTokを中心にして話題となっている「Teenage Blue」の悩みを打ち破るストレートで前向きなメッセージは多くの人の心に響いたのではないだろうか。

 “Z世代のニューアイコン”と呼ばれるTouaは、ありのままの自分を肯定するキャッチーなポップナンバー「I am I」を披露。サビの〈OK OK〉の声出しでは、Touaが「すごくない? めっちゃやってくれる!」と歓喜するほどに、コールが揃っていた。リーダーズのSUZUKAはアソビシステムは「全員がファミリー」と話していたが、それはどのアーティストも楽しもうとするファンの姿勢にも言えるのかもしれない。

 きゃりーのアクトのアンコールには全アーティストがステージに集結し、「PONPONPON」をパフォーマンス。歌い出しにある〈あの交差点で みんながもしスキップをして/もしあの街の真ん中で 手をつないで空を見上げたら〉という歌詞が、ジャンルや世代を超えてアソビシステムというプロダクションの中で、クロスオーバーしている様子を表しているように聴こえてならなかった。ラストは“社長コール”で中川社長がステージに登場。「会社を作って18年で、一番素晴らしい景色が見られています」と感慨深そうにコメントしている。

 来年6月には『ASOBIEXPO 2026』の開催も発表された。「原宿から世界へ」――アソビシステムにとっての祝祭であり、展示会としての側面も持ち合わせている『ASOBIEXPO』は今後もアソビシステムの今を象徴する場所としてあり続けていくだろう。

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