水瀬いのり、“アーティスト”としての変化を語る 「『孤独じゃなかったんだ』と気づけたことで救われた」

“アーティスト”と“声優”の境目がなくなってきた

――それまで一歩踏み出すことに抵抗感があったところから、意識が変わるきっかけでもあったのでしょうか?

水瀬:「アイオライト」の前にリリースした、「glow」の存在が大きいかもしれません。制作している時、「もっと挑戦して知らない自分に出会おう」という気持ちに対して、「楽しみたい!」という気持ちが強かったんです。普段なら、「怖い」が勝ってしまうのに。

水瀬いのり「glow」

――そのモチベーションのまま、「アイオライト」のMV制作にも入れたんですね。

水瀬:そうですね。実際にやってみて、「“アーティスト”をしていないとできない表現だな」と実感しましたし、自分の表現に落とし込めた手応えもあって。この先も、みなさんが想像できないようなアプローチをやっていきたいと考えられるようになりました。どんなことも、挑戦したもん勝ちだなとあらためて思いましたね。

水瀬いのり「アイオライト」

――では、印象に残っているMVというと、何が思い浮かびますか?

水瀬:「HELLO HORIZON」かな。富士山が見える広大な草原で、ドローンを使って空撮したMVです。スケールの大きな映像になっているので、自分のMVだということを忘れて、普通に癒やされたくてこのMVを観ることがあります(笑)。で、「また行きたいなあ」と思いを馳せたりしますね。

水瀬いのり「HELLO HORIZON」MUSIC CLIP

――ドローンが360度ぐるりとまわって水瀬さんをとらえる場面もありますが、スタッフさんはこの時どこにいたんですか?

水瀬:見切れないように、すごく遠くにいました。しばらく私とドローンだけの時間があって、みなさんがこちらに走ってきたら「あ、終わったんだ」みたいな(笑)。監督の「カット」の声が聞こえないくらい離れていました。撮影は順調で、日が沈むまで空き時間ができたんです。そこで、スタッフのみなさんで記念撮影をしたのも楽しかったですね。大自然のなかにいるからか、みんなテンションが上がっちゃって。ジャンプしている瞬間の写真を撮って、誰が一番高く飛んでいるかみたいな勝負をしたりして(笑)。もう、ずっと楽しかったです。仕事というよりは、オフをいただいた気持ちになるくらい、癒やしのひと時でした。

――個人的には「Starlight Museum」のMVも印象的でした。水瀬さんの自室を再現したセットのなかで、リアルに台本チェックする水瀬さんを映し出すという。

水瀬:オフの私とステージに立つ私を撮影してもらったMVですね。素の状態を撮影されるのは、逆に難しいんだなと感じる経験でした。台本チェックを終えてベランダに出るという一連の動きを撮る時も、「歩く時、いつも右足から出していたっけ?」と混乱するくらいには緊張しました(笑)。

水瀬いのり「Starlight Museum」MUSIC CLIP

――(笑)。でも、そんなふうに自然体な姿を見せてくれるのも水瀬さんのアーティスト活動の魅力だなと感じます。

水瀬:今ではありのままを見せることが私らしさになっていると思っています。かわいらしいお洋服を着たり、ロックサウンドを追求したり、ジャンルを絞って表現する方法もありだと思いつつ、いつも「飾りたくない」という気持ちは一貫してあったんです。私はあくまでも、歌を、歌詞を届けたい。そのためには、要素を削ぎ落としたシンプルな表現のほうがわかりやすい時もあるんだなと思いました。ここ数年は、“アーティスト・水瀬いのり”と“声優・水瀬いのり”の境目がなくなってきたんです。それが飾らない姿を見せてきたからなのかはわからないんですけど、この変化には自分でも驚いています。

――自分でも予想外だった?

水瀬:はい。「アーティストも声優も頑張ろう!」と走り続けていたら、いつのまにかひとつの線になっていました。切り替える必要がなく、シームレスに両方のことを考えられるから居心地がいいです。長く続けてきたおかげですね。

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