「自分が幸せだったら勝ち」――ENVii GABRIELLA、“時代の違和感”をダンスミュージックに 『ENGABALL』を語り尽くす!

“エンガブ風盆踊り”に隠されたシリアスなメッセージ

――「誕生誕生Birthday」は、お祝いソングでもありますが、ひとりでじっくり聴きたい曲でもありますよね。

Takassy:そうなんですよ! 大人になると「私、今日誕生日だから」とか言いづらいじゃないですか。「忘れてた」とか言っちゃって。私はそのタイプなのですが、そういう人の脳内を表現した感じです。よく3人でも話すんですけど、HIDEKiSMは誕生日とかイベントを純粋に楽しめるタイプ。「もうすぐ誕生日」「今週、誕生日」「今日、誕生日」「先週、誕生日」……って延々と誕生日にかこつけて何か言うタイプなんですけど(笑)、私とKamusはそういうことを言わない、順当に大人になったタイプ。

HIDEKiSM:あら(笑)!

Takassy:(笑)。いや、いいと思うんですよ。心のなかではそういうタイプをうらやましく思うんだけど、表立って「誕生日祝ってよ!」とは言えなくなっちゃった大人のバースデーソングです。

――ボーカルではHIDEKiSMさん節が全開で。

HIDEKiSM:Takassyにオモチャとして遊ばれました(笑)。なんか「大草原をイメージして」みたいなことを言われまして。

Takassy:Dメロね。あそこは「『ライオンキング』のイメージでお願いします」って言いました。赤子を取り上げて「生まれたぞー!」というイメージ。「聖母の感じで歌って」って。ステージングもそういう感じにしています。

Kamus:そのサバンナパートの前に、歌詞カードに載ってないセリフがあるんですが、そこもエンガブらしい遊びポイント。ライブでどう料理されるかも楽しみにしてほしいです。

HIDEKiSM:Kamusちゃん、ライブの時は笑いを堪えるのに必死でしょ?

Kamus:そうなの(笑)。いかに真顔でいられるかが勝負で。

Takassy:毎回セリフの言い方も変えてくるからね。

Kamus:そんな楽しみもある楽曲なので、ぜひ愛してもらえたらと思います(笑)。

――8曲目「Unloved」はボーカルがグッと入ってくるロックチューンです。これはどのようにできた曲なのでしょうか?

Takassy:「ダンスアルバムでなんでロック?」と思われるかもしれないんですけど、アンダーグラウンドなキャバレーやストリップクラブでポールダンサーが踊るような曲がほしいなと思って。曲をたくさん作る時期だったこともあって、ちょっと他の方につくっていただきたくて、(一緒に楽曲制作をしている)Carlos K.さんのおすすめの方にお願いして作ってもらいました。

――歌詞は、トラックを受け取ってから作った?

Takassy:はい。曲を聴いて「地獄だわ!」と思って(笑)。

――この曲はおふたりのボーカルがかなり活きていますよね。

HIDEKiSM:私たちふたりは“声量おばけ”と言われるくらい声がデカいので、ロック系の楽曲は意外と合うんですよね(笑)。だから、本領発揮という感じで、「持っているものが使える!」と思ってレコーディングに挑んだんですけど……いざ歌ってみると難しかった。テンポが速い曲ではないので、勢いだけでは行けなくて。あえて、もたつかせるというか。そのニュアンスを出すという意味では新たな挑戦でしたね。

Takassy:トラックやギターのニュアンスに引っ張られると、がなりたくなるんですけど、あえて「抑えて歌って!」とずっとリクエストしていました。「絶対に張り上げないで!」って。

HIDEKiSM:そうすると、もがいている感じが出るもんね。

Takassy:うん。怒りを誰かにぶつけるというよりも、自分が傷ついてボロボロになっているという歌なので、そのニュアンスを出したかった。自分のテイクも、いつもだったらアウトテイクにするようなガラついた声を使ったりして。試行錯誤しましたね。

Kamus:私、この曲大好きなの!

Takassy:今回の作品のなかでいちばん好きって言ってたよね。

Kamus:そうそう。初めて聴いた時に「おお、かっこいいじゃん!」って思った。1番はTakassyが歌っていて、2番になったらHIDEKiSMになって、声質もガラッと変わって。異なる2組のアーティストがフィーチャリングしているような感覚になるんですよね。それで最後のTakassyが〈over〉って歌うところで、拳上げて「行け行け〜!」ってなっちゃう(笑)。それくらい動かされるものがあったので、同じようにハマる人にはしっかりハマって、めちゃくちゃ愛される曲になるんじゃないかなと思います。

――9曲目の「サイコダンス」も面白い曲ですよね。

Takassy:これはハロウィンライブ(2024年10月開催『DVORAKKIA β 〜Halloween Villains Night〜』)の前に、Carlos K.さんがデモをくれたんです。普段はあんまりそういうこと言わないのに、「これ、エンガブでやってほしいんです」って持ってきてくださって。ただ、デモの仮歌では男性の声だったから、最初は私たちの声で歌ってもあまりしっくりこない気がして。でも、Carlos K.さんの感覚を信じてライブで歌っているうちに、どんどん馴染んできました。

ENVii GABRIELLA - サイコダンス (Official Lyric Video)

――HIDEKiSMさんは歌ってみていかがですか?

HIDEKiSM:楽しいです! 最初振り付けをもらった時に楽しすぎて、普段は言わないのに「もう一回踊ろう!」って言っちゃったくらい。さっきも、撮影の時にリアルサウンドの編集さんが、私たちがポーズを取っているのを見て「最高! 最高!」って言ってくれてたじゃないですか。この曲のサビは〈Psycho, psycho, psycho, psycho dance!!〉だから、「歌っているのかな!?」という気持ちになって(笑)。それくらいハッピーな気分になります。ライブでも皆さんサイコになって踊り狂ってくれて、楽しい楽曲です。

――ただ、歌詞はなかなか鋭いですよね。

Takassy:そうですね。

HIDEKiSM:〈喝采の矛先〉から始まったんでしょ?

Takassy:そう。もう本当に私、SNSにイラついていたんでしょうね。芸能人のニュースを見ていて思ったんです。ものすごく人気が出た人が、ちょっとのことで一気に攻撃される。みんなが常にその標的を探しているように感じて。その“終わりの始まり”が喝采に見えて、怖くなっちゃって。

――それがお祭りサウンドになっているという、メタ構造になっているのもすごいですよね。

HIDEKiSM:恐ろしい祭りですよね。

Takassy:私たちはこの曲を「エンガブ風盆踊り」と言っているんですが、この曲は祭りを外から見ているんじゃなくて、神輿で担がれている人の歌。「そんなに担ぐんだったら、中途半端に担がないで、もっと全力で上げてきな!」「そしたらバカなフリしてあげるから!」って。

HIDEKiSM:私はバカになれちゃうタイプよ! っていうか、もともとバカなのかしら?

Takassy:……急にどうしたの? 誰も何も言ってないよ?

――(笑)。でも、だからこそ、この曲も楽しく歌えたのかもしれないですね。

HIDEKiSM:そう。乗っかっちゃったのかも!

Takassy:でも実際、そんなこと考えずに楽しんだ人のほうが強いよね。裏が見えて覚悟を決める人と、何も知らずに人生楽しんじゃっている人。どっちが強くて頭がいいのかって言ったら、もうわかんない。自分が幸せだったら勝ちだもんね。

HIDEKiSM:本当にそう!

Kamus:振り付けも、ダンスをしたことのない人でもちょっと練習したら真似できるようになっています。レクチャー動画も出していて、ライブではみんなが踊ってくれているんですよ。皆さん、年齢も性別も忘れて、汗をかいて踊ってくれて!

Takassy:まさに盆踊りだよね。

関連記事