AA=『#7』ロングインタビュー 上田剛士が語る自分にしかできない音楽、BUCK-TICKカバーへの思い
BUCK-TICK楽曲カバーの理由、終幕に託した未来への意志
――そして次の曲「NEW WORLD」には驚きました。今回、BUCK-TICKの楽曲をカバーしようということはあらかじめ頭の中にあったんですか?
上田:何よりも「NEW WORLD」が好きだからカバーすることにした、というのが大きいですね。とはいえ、彼らに起きたことがあり、これもそれ以降に作ったものなので、あの出来事がなければもちろんやっていなかっただろうとは思います。
――BUCK-TICKの曲をカバーしようとなる場合、もっと古い曲、少年期に影響された曲などに目がいきがちじゃないかと思うんですよ。しかしこの曲は、まだ生まれてから10年も経っていない(オリジナルは2016年発表のBUCK-TICKのアルバム『アトム未来派No.9』に収録)。
上田:そうですね。だけどめちゃめちゃいい曲じゃないですか。BUCK-TICKが今でもBUCK-TICKであり続けるということをすごく感じさせられた曲でもあるし、それ以前に、単純にこの曲が本当に好きで。彼らの優しさみたいなものが、すごく表れていると思うんです、曲にも、言葉にも。今井(寿)君なり、メンバーが楽しんでくれたらいいな、という気持ちで作りました。もちろん櫻井(敦司)さんも含めて。
――今井さんはこのカバーをすでに試聴済みなんですか?
上田:もちろん。「ああ、いいじゃん」みたいに言ってくれてました(笑)。これ音源にしなよ、と言ってくれたのも彼なので。
――なるほど。そして最後に「ALL ARE UNITED」が登場。ライブで例えるならばアンコールの最後というよりも、それが終わった後に会場に流れていそうな感じでもあります。
上田:確かに。これも曲自体は結構前からありました。その時点では言葉はないままに作っていたんですけど、のちのち聴き返してみて「ああ、やっぱりこれも入れようかな」と思った曲の1つです。
――歌詞的には、マンチェスター方面(英国プレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッド)からのお告げがあったんでしょうか?
上田:そんな感じになっちゃいましたね、いつの間にか(笑)。
――シンプルながら、言いたいことを明確に表したタイトルだと思います。
上田:そうですね。しかも自分の音楽人生、自分自身にも通じるものだと思うし。〈そろそろパーティも終盤だ〉という歌詞がありますけど、自分だっていつどういうことになるかわからないというのを、ひしひしと感じる年齢にはなってきているので。それこそ仲間や友達がいなくなったり……。その意味では「NEW WORLD」にも重なるところがあるんですけど、そういう局面にあるからこそ、自分の今やるべきこと、あるべき姿を音にして歌っていきたいなと思わされた曲ですね。
――いろいろなものと繋がっているという意味では“connected”なのかもしれませんけど、精神的な意味でも結び付いているという意味では“united”という言葉のほうが似つかわしいでしょうし、そこはAA=の音楽のあり方自体にも通じるものがあると思います。
上田:そうですね。あと、「If Kids Are United」という曲があるんですけど(英国のパンク・バンド、SHAM 69の1978年のヒット曲)、あれからも触発されたところがあって。ただ、僕も、僕らのライブに集まってきてるやつらも、もはやキッズではないので(笑)。だから“all”にしたんです。もちろん気持ちとしては“kids”なんですけどね。
――この全14曲、すごく気持ちのいい流れなんですが、曲順をシャッフルしても楽しめそうな気がします。コンセプチュアルな作品に伴うライブをやる場合、セットリストのアルバムの曲順を軸とするものにならざるを得ないところがあるのに対して。
上田:ええ。特に1つ前の『story of Suite #19』(2022年)のライブはそのままの流れでやりました。そうせざるを得ないというのもありましたけど。
――あの作品については、そうしないわけにいかないですよね。そして、ツアー『AA= TOUR #7』に向けての準備はこれからですか?
上田:そうですね、準備はこれからです。みんなが“united”するようなライブ、ツアーにしたいですね。
――公演日程については長期間にわたるツアーですが、各公演の間に時間を空けながら組まれていますよね?
上田:そうなんです。アルバムツアーとしては本数や会場数的にいつもこれぐらいなので、短期間の場合は2週間、長くても1カ月ぐらいで終わっちゃう。だから「淋しいね」という思いもあったし(笑)、月イチでやるぐらいのほうが、自分の体力的にも都合いいかなと思って。二連チャンとかをやるのはキツいなと感じるようになってきてるし、ライブをやって、移動して、次の日もまたライブをやるんだったら、「1回オフを挟んで、もう1回くる方がよくね?」みたいな話になって、スタッフを説得したんです(笑)。
――短期間のうちに公演日程が詰まっているツアーの場合、今日の反省点や課題を明日に活かす、みたいなことがやりやすくはあると思うんです。それに対して、このツアーではその都度ちょっとしたリセットができるというか。
上田:そうなんですよ。アルバムツアーをこういう形でやるのは初めての試みです。その間に何か新しい方向が見えてきたりすることもあるのかもしれないですね。とりあえず今年いっぱいは、このモードで楽しみたいなと思ってます。
――では、2025年は年間を通じて1995年モードで?
上田:まあ1995年だとちょっとイケイケすぎるかもしれないので(笑)、その気持ちを持ちつつ今の感じでいきたいですね。
誰かが真似してみたところで、自分を超えているとは思わない──上田が語る自負
――上田さんは90年代にも「ほかとは違うカッコいいもの」をたくさん作ってきたわけですが、結果的にそれが模倣されるケースも多々あったように思います。自分が発明したものがそういうことを引き起こすことについては、どんなふうに感じていましたか?
上田:中には光栄に思えるものもたくさんありました。ただ、こう言っちゃなんだけど、「どのみち俺には敵わないよね」みたいなのは常にずっとあり続ける感じですね(笑)。
――頼もしいです。「できるもんなら先にやってみろ」みたいな?
上田:それもあるし、いくら誰かが真似してみたところで、それが自分が提示したもの、作ったものを超えているとは思わない。逆に、ちょっと違った魅力を感じることはありましたけど、なんだかんだで自分が作ったものが、自分としては一番好きですね。
――その意味では、今回も大好きなアルバムができた、と言えそうですね。
上田:そういう感じがしてます、自分で。
――大好きなアルバムだからこそ、装丁や付属するものにも全力で取り組みたくなるわけですよね。先ほどオンラインストア限定セットに含まれているキーホルダーを見させてもらったんですが、欲しくなりました(笑)。
上田:楽しいですよね、ああいうの。素材がメタルなところもいいじゃないですか。元々、ジャケット写真もエフェクターなので、そこに重なる感じが表せるし、しかもメタルキーホルダーというもの自体、質感的に懐かしさもある。なんだか、いろいろ重なってくるような気がします。
――アートワークに用いられているのはエフェクターの写真。やっぱりミュージシャンが使うものってカッコいいものが多いし、モチーフになりやすいなと思いました。
上田:ええ。これは自分のベースサウンドのためにずっと使い続けているエフェクターの1つなので、“上田剛士の音”といえばこれをイメージする人はある程度いるはずなんです。そこで、あえてそれを使うことにしました。
――なるほど。さて、アルバムはすごく気持ちよく聴かせていただきましたし、次はライブがどうなるのか、そして1995年の次はどこに向かっていくことになるのかを楽しみにしています。今回についても、いわゆる“ルーツ回帰”とは違うはずですし。
上田:そうですね。ただ、そういったルーツ的なものを取り入れることを恐れなくなった、というのはあるかもしれない。進化だけを求めるんじゃなくて。
――それを取り入れると、自分自身の焼き直しみたいなことになりかねないんじゃないかという怖さがあったということですか?
上田:それはずっとあったと思います。それが気にならなくなったのが一番大きいですね。
――それは今もなお「俺の作るものを超えられないだろ?」と思っているからこそですよね、きっと。
上田:そういうことにしておきましょう(笑)。
――上田剛士は最後に含み笑いを浮かべてそう言った、と書いておきます。
上田:ええ。ちょっと偉そうで、嫌な感じで(笑)。
■リリース情報
AA= アルバム
『#7』
2025年4月23日(水)リリース
品番:VICL-66062
価格:¥3,630(税込)
<収録曲>
01.BLUE & YELLOW
02.WAKE UP NOW (DROP THAT SxxT)
03.KURUU SONG
04.FIGHT & PRIDE
05.CLOUDED MIRROR
06.FLY
07.Re-create -AA= ver.- feat. JUBEE
08.CRY BOY
09.THE OLD BLOOD CLASSIC!!!
10.30 YEARS, STILL GOOD GIRL
11.BE LOST... feat. SHIGE (WRENCH)
12.THE BOMB
13.NEW WORLD
14.ALL ARE UNITED
■関連リンク
AA= 公式サイト:https://aaequal.com/