WHITE SCORPION「今日を超える日を私たちは更新していきます」 たしかな目標を刻んだリリースイベント
WHITE SCORPIONが4月23日にアーバンドック ららぽーと豊洲 シーサイドデッキのメインステージにて、7thデジタルシングル『Beach opening』のリリースイベントを開催した。
観覧無料のフリーライブ形式で行われたこのイベントは、グループにとってただの新曲披露の場ではなく、“来場者1000人”という公の目標が掲げられた、ひとつの挑戦の日でもあった。メンバーたちは事前のSHOWROOM配信やSNSを通じてこの目標を発信し続け、ファンもまたその達成に向けて想いを共有してきた。この日、豊洲に吹いた潮風と同じくらい、会場には物語の続きを一緒に作りたいという空気が満ちていたように思う。
イベントは19時にスタート。場内に「Overture」が響くと、SCOPIST(ファンの呼称)たちの手拍子が一体感を生み出し、静かに熱を帯びていく。ステージに現れた11人が最初に披露したのは、この日の主役「Beach opening」だ。洗練されたシティポップ調のナンバーでありながら、どこか懐かしさも感じさせるメロディとサウンド。そして何よりも印象的だったのは振付けだった。横一列で肩を組んだり、〈yeah yeah yeah〉という歌詞の部分では腕を振るなど、誰でも真似しやすく親しみやすい構成なのだ。メンバーたちが事前に「一緒に踊れる振付けがある」と語っていたように、より多くの観客が参加できるよう意図された、開かれたダンスとなっていた。
最初のMCパートを挟み、次に披露されたのはカップリング曲「なんて僕は無力なんだろう」。ALLYがブログで「めちゃくちゃかっこいい曲」(※1)と語っていた同曲は、この日が初披露。クールで緊張感に満ちたステージングで、一気に空気を変えていく。鋭さと統一感を両立させたダンス、あえてバリエーションを抑えた無機的な表情、息の合ったフォーメーション――。それらは、明るくキャッチーな「Beach opening」との対比によって、グループの持つ表現の振れ幅を鮮やかに描き出すものだった。ACEがのちのMCで語った「ポーズの魅力」や一年間で積み上げてきた表現力は、こうしたステージにこそ強く表れる。
続いて披露された「Satisfaction graffiti」では、イントロから会場のテンションが一気に上昇。声援こそ会場の規程で出すことはできなかったが、手拍子やペンライトで応えるSCOPISTの熱量は高く、制限下でも会場全体がひとつに溶け合っていくのがわかる。
さらに「I do love you!」では、CHOCOの「最後まで盛り上がっていきましょう!」の掛け声とともに、カラフルなペンライトの光が揺れた。恋心を等身大に描いたこのラブソングは、メンバーとSCOPISTが視覚的にも感情的にも繋がった瞬間だった。
中盤のMCでは、メンバーたちの素顔が垣間見えた。振付師のTAKAHIROに偶然出会ったというCHOCOの裏話、MOMOやACOによる抽選会、そしてACEによる振付け解説。特にCHOCOが語ったTAKAHIROとのエピソードにはメンバーのみならず、会場のSCOPISTからもどよめきが起こっていた。トークを締めくくったのはNICO。「今日を超える日を私たちは更新していきます!」――その一言に全員の想いが凝縮されていたと思う。ライブの最後、アンコールとして再び披露された「Beach opening」では、メンバーにもSCOPISTにも自然な笑顔があふれ、早くも訪れた夏を祝うような幸福な空気に包まれた。
だが、その空気が一変したのは、イベントのクライマックスとなる来場者数発表の瞬間だった。事前に掲げられていた「来場者1000人」という目標。それは、グループが自らSNSや配信を通じて公に掲げたものであり、メンバーとファンがともに追いかけたゴールでもあった。その発表を担ったのはCOCO。緊張感に包まれるなか、彼女はまっすぐ前を見据えて、こう語った。
「SCOPISTのみなさんのおかげでこの数字が出ていると思うのですが、私たちは1000人を目指していて、663人という数字しか出せなかったのは本当に悔しいのですが、ここでとどまるわけにいかなくて。私たちは東京ドームを目指して頑張っているグループなので、この1000人という壁を超えなければいけません。今日少しでも気になった方々は私たちの成長を見守ってくださると嬉しいですし、もうSCOPISTだよという方はこれからも私たちと一緒に成長してくださると嬉しいです」
数字が届かなかったことを悔しいと、涙ながらにストレートに口にしたその姿からは、結果を真摯に受け止める覚悟が滲んでいた。だが同時に、未来を見据える力強い意志もまた、言葉の端々から感じられた。“1000人”という目標は、WHITE SCORPIONにとって単なる通過点ではなく、「東京ドームに立ちたい」と願うその道のりのなかにある明確な壁。その壁を乗り越えていくには、今日の悔しさも、来場してくれた一人ひとりの存在も、すべてが必要不可欠なのだという想いが彼女のスピーチには込められていた。
こうして終幕を迎えたWHITE SCORPIONのリリースイベント。目標には届かなかったが、それ以上に心を打つ決意が、この日たしかに刻まれた。涙と笑顔が交錯した豊洲で、彼女たちはまた一歩、未来へと踏み出した。
※1:https://whitescorpion.jp/blog/2025/04/14/6278/