リュックと添い寝ごはんが『満漢全席』で届けた最大級の愛と8年の歩み 敬愛する星野源「SUN」のカバーも
3月7日、リュックと添い寝ごはんが自身最大規模となるワンマンライブ『満漢全席』をZepp Shinjuku(TOKYO)で開催した。ライブのタイトルとなった『満漢全席』とは、中国古来の超贅沢な宴会の様式。ライブハウスをそんな“宴の場”と捉えて、集まった人たちに心ゆくまで楽しんでほしいという思いが込められたのが、今回のワンマンライブだ。そしてそのコンセプトの通り、たくさんのオーディエンスを前にリュックと添い寝ごはんはどこまでもフレンドリーなライブを繰り広げ、ご馳走のような音楽の楽しさと喜びを分かち合った。常にライブの場でお客さんと一緒に音楽を楽しむ姿勢を大事にしてきたバンドだが、今回もその姿勢は貫かれているどころか、ますます強まっているように思えた。
中国っぽい雰囲気の衣装に各々身を包み登場した、松本ユウ(Vo/Gt)、ぬん(Gt)、堂免英敬(Ba)、宮澤あかり(Dr)と、この日サポートメンバーを務めるYOSSY(Key)。拍手が巻き起こる中、ライブの幕開けを告げたのは「灯火」だった。「自由に! 自由に楽しんで!」という松本の言葉にあたたかな手拍子で応えるオーディエンス。「ラララ」の歌声が会場を包み込む頃には、居心地のいい空気がすっかりできあがっていた。続いてぬんのギターが痛快に鳴り響く「Be My Baby」でもフロアとのコール&レスポンスを生み出すと、松本が「歌えるだろ?」と呼びかけて最後のサビへ。みんなの声もどんどん大きくなって、会場の気温がぐっと上がっていった。
「世界が愛を忘れても、僕は愛を歌い続けます」という力強い宣言から「ネットルーザー」を届けると、「今日ぐらい自由に、隣の人と肩組んで、踊ったり歌ったりして楽しんでいってほしいわけなんですよ!」と思いを伝えながらキャッチーなサウンドが弾ける「Pop Quest」へ。宮澤のパワフルなドラムに堂免のドライブするベース、そしてぬんのエモーショナルなギターソロ。YOSSYを含めたアンサンブルがぎゅっと密度を高め、塊になって放出される。筆者が見たのは昨年春の『リュックと添い寝ごはん 3rd album release tour "Terminal"』恵比寿・LIQUIDROOM以来だったのだが、その時も比べてもバンドの出力は明らかに増していた。
「今日めちゃくちゃ晴れてません?」と松本。たしかにこの日の東京は、昨日までのどんよりとした天気が嘘のように晴れ渡っていた。“晴れバンド”であることを自慢する松本に、堂免は「ついてきてくれている皆さんが“晴れ客”」と応えたりしながら、バンドは軽やかな「あたらしい朝」を響かせていく。そのまま宮澤のドラムをブリッジに「home」へ。クリスマスソングにはちょっとだけ時期外れだが、この曲の持つあたたかさは、むしろ春を目前に寒さがぶり返している今だからこそ心に染みる。
「ここからは少しディープなところへ……」。ゆったりとしたグルーヴに自ら身を委ねながら松本がフロアに語りかける。グリーンの照明の中で演奏されるのは「はっぴいえんど」。リヴァービィなギターの音色と鍵盤の音色がオーディエンスを揺らしつつ、誰よりも音を気持ちよく味わっているのはステージの上のメンバーだ。メンバー紹介がてらのソロ回しも挟みながら、ゆっくりと奏でられる音を味わい尽くすように松本は目を閉じて首を振っている。同じようにじっくり音とグルーヴを愛でるように「みんなのうた」を届けると、オーディエンスの手拍子と声がそこに重なり、会場を最高の雰囲気で包み込んだ。
ここでYOSSYがステージから去り、4人でのパフォーマンスへ。「みんなの悲しみは全部任せてください!」と「恋をして」の瑞々しいサウンドを解き放てば、フロアでは次々と腕が上がり、ぐっと熱を帯びる。そしてその熱をさらに加速させるように、松本とぬんのツインギターが炸裂する「グッバイトレイン」へ突入。この曲では恒例、曲の途中で喋り始めた宮澤(彼女によればこれは“ドラムソロ”らしい)は「初のZeppワンマンということで」と拍手を浴びつつ、用意したメモを読みながら「これからもどんどんZepp ツアーとかやりたい」と宣言。そしてお客さんの合図で曲を再開するという荒業も披露してみせた。