Number_i、初ライブツアーで示した答えとは何だったのか? 高らかな宣言に触れた一夜――福岡公演を観て
さて、『No.Ⅰ』にはメンバーのソロ楽曲も収録されており、公演内で披露されたことも特筆すべきだろう。まず、ベースやシンセサイザーなどの楽器が置かれたセンターステージに立った岸は、それらを一つひとつ奏でながらその場でビートを作り、自身はギターを手にして「Recipe」を歌い上げる。この曲は岸のセルフプロデュースだが、彼はステージ上でもひとりで楽曲を作り上げることを選んでいた。そこに、岸のこだわりと音楽に懸ける情熱が感じられたし、毎回その時だけ生まれる「Recipe」に、どれだけの人が心を掴まれたことだろう。少なくとも、筆者はそのひとりだった。
岸に続いて、メインステージに現われたのは神宮寺。部屋のようなセットが透明のケースに囲まれ、そのなかで彼は「Bye 24/7」を歌う。〈離れ離れの24/7/この部屋は時が止まってる〉を表す演出だ。途中から、悲しみを表すように上から水が降ってくる。神宮寺の歌声は繊細かつ伸びやかで、この切ないバラードによく似合っている。彼の歌声の魅力が際立つと同時に、楽曲の世界観を見事に再現したステージだった。
平野は大量のスモークが焚かれたメインステージで、スタンドマイクで「透明になりたい」を披露。照明も薄暗く、表情もあまりよく確認できない。だからこそ、彼の儚い歌声に聴き入ってしまう。最後に水が降り注ぎ、水に打たれたスモークがステージ上に大きく広がっていく。幻想的な雰囲気が増していき、彼が過去に見た夢をモチーフにして制作したというこの曲への没入感を高めていった。
三者三様のソロステージを経て、「Numbers」ではメインステージにひとりずつ登場し、そのメンバーにちなんだ言葉が詰まった、自己紹介とも言えるラップを披露していく。こうして、平野、神宮寺、岸の3人で“Number_i”なのだと、あらためて宣言してみせたように思えた。
アンコールでは再びトロッコに乗って「花びらが舞う日に」「Is it me?」を歌い、スタンディング席まで笑顔を届けた3人。アリーナでも、外周だけでなくブロックとブロックの間までトロッコが進んでいた。そんなに細かいところまで行くのかと驚いたし、ここにいる誰ひとり置いていくつもりはないのだと思った。
アンコールの3曲目に届けられたのが、3人によるプロデュース曲「iLY」だった。この曲のみ撮影可であることを告げ、センターステージ、花道、メインステージと歩きながら、彼らは歌う。「iLY」はタイトルからもわかるように、iLYsへのメッセージソングだ。3人がNumber_iとして出発をする際、どれだけの苦悩があったかは計り知れない。積み上げてきたものが大きいほど、手放すのも怖くなる。相当な覚悟が必要だったと思う。しかし、3人を待っていた人は大勢いた。互いの存在が支えになったのは、彼らもiLYsもきっと同じだろう。
“i”で固く手を繋ぎながら、Number_iとiLYsはこの一年をともに過ごしてきた。そして、この先も一緒に歩んでいきたい――。ライブの最後に、映像としても残る形でこの曲を歌い上げるところに、そんな彼らの想いが見えた気がした。
グループが本格始動した2024年。デビュー年のラストに行われた初の全国ツアー。それはこの一年の集大成でもあり、ある種イントロデュース的な部分もあったと思う。Number_iはこのツアーで、あらためて「これがNumber_iだ」と宣言してみせたのだ。そして、彼らはきっと歌うだろう。〈間違いじゃないこれが俺の Answer〉だと。