トゲナシトゲアリ、2024年の集大成となる過去最大規模ワンマン 進化を遂げた“ライブバンド”としての姿

 アニメ『ガールズバンドクライ』と連動するリアルバンド・トゲナシトゲアリ(略称:トゲトゲ)の4thワンマンライブ『協奏の響』が12月20日、豊洲PITにて開催された。11月2日の3rdワンマンライブ『咆哮の奏』から短いスパンで実施された今回の単独公演だが、トゲトゲはその間にも韓国の音楽フェス『WONDERLIVET 2024』(11月8日)に出演、そして中国にて単独ライブ『Live in SHANGHAI“凛音の理”』(12月14、15日)を開催するなど初の海外公演にも取り組み、ここまでライブ活動を途切れさせることなく、積み重ねてきた経験や熱を4thワンマンで思う存分に放出させてみせた。

 オールスタンディングでキャパ3000人という過去最大規模のワンマンライブ。今年3月に初ワンマンを行ったばかりのバンドとは思えない盛況ぶりは、もちろん『ガールズバンドクライ』という作品の人気ぶりを証明するものでもあるが、何よりもTVアニメ放送前から地道に続けてきたトゲトゲの音楽活動がここで結実した表れだと筆者は解釈している。事実、彼女たちはこの日のライブでもオープニングから、その存在感の強さやバンドマンとしての実力を遺憾なく発揮。ライブの幕開けを飾るには少々異色な「誰にもなれない私だから」からスタートという挑戦的なセットリストにもかかわらず、緩急に富んだボーカルを響かせる理名(Vo/井芹仁菜役)、サポートドラマーとともにリズムの要となりながらも随所でうねるようなベースラインを鳴らす朱李(Ba/ルパ役)、そして理名が抑え気味に歌う裏でブルージーなフレーズを奏でる夕莉(Gt/河原木桃香役)とそれぞれが着実に成長した姿を提示する。ライブデビューからまだ1年強という彼女たちだが、そんな逞しい姿を目の当たりにしたら、きっと誰もそんな事実を信じないのではないだろうか。

 薄暗い照明のもとジワジワと熱を高めていく「誰にもなれない私だから」を終えると同時に、理名の高速アカペラをフィーチャーした「名もなき何もかも」になだれ込むと、フロアの熱気も急加速。派手なレーザー演出も相まって、ライブは早くも佳境と呼ぶに相応しい盛り上がりを見せる。

 アニメのストーリーをなぞらえた演出の2ndワンマンライブ『凛音の理』を経て、前回の3rdワンマンライブではアニメの世界観を包括しながらもロックバンドとして新たな道を歩み始めたトゲトゲだが、この日の4thワンマンライブも基本的にはその3rdワンマンの延長線上にある構成だったと言える。だが、今回は過去2回のワンマンとは比にならないほどに生々しさや躍動感が増しており、さらにはずっしりとした安定感までもが加わった、ライブバンドとして理想的な進化が伝わるステージを展開。これは間違いなく、この短期間に積み重ねたライブ経験がよい方向に作用した結果だろう。どの楽曲ももともとBPMがかなり速いものばかりだが、この日のライブではフロアの熱気も後押ししてか、原曲以上のスピード感と迫力が伝わった。そうした高速チューンの数々を、トゲトゲらしいグルーヴ感を生み出しながら、時にタイトに、時にはラフに届けるその様は「これぞロックバンド」と太鼓判を押したくなるほどの説得力をにじませていた。

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