柚希礼音、大先輩・越路吹雪への憧憬とシャンソンへの挑戦 「ようやく入り口に立ったところ」

自分を使って私の「愛の讃歌」を表現したい

――アルバムは7曲入りで、定番も押さえつつ、幅広い楽曲になっていますね。曲目はどういうふうに選んでいったんですか?

柚希:やはり、「これは外せない!」という曲が多くなりました。「雪が降る」や「枯葉」は私に合ってるということで入れていただいて。「夢見るシャンソン人形」はちょっと私のイメージとは違うかもしれないけれど、とてもキャッチーだからやってみたり。バリエーションを持たせることも考えて決めていきました。アルバムに入りきらない素晴らしい曲がまだまだあるので、それはコンサートで歌いたいなと。

――歌ったことがある曲も多いですか?

柚希:「愛の讃歌」はあるんですけど、それ以外は初めてです。「雪が降る」や「枯葉」は歌いたかった曲ですね。

――「愛の讃歌」は、宝塚においても教科書的な一曲で。王道の名曲だからこその難しさもありましたか?

柚希:私も10年前に歌った時は、“ザ・シャンソン”というくらいの王道な曲だと思っていて。でも、ピアフさんや大竹さんの歌を聴いたり、曲が生まれた時のエピソードなどを知ると、定番というだけでは収まらない奥深いストーリーがあるんですよ。ピアフさんの大恋愛に、みなさんそれぞれが大恋愛をした時の感情を乗せて歌われていて。

――みんなが歌ってきた歌だからすごいのではなくて、あくまで一人ひとりの「愛の讃歌」が素晴らしい、と?

柚希:まさに。たとえば、宝塚で『ベルサイユのばら』を上演した時も、「定番」だとか「宝塚でいう歌舞伎だよ」って言われていたんですが、どうしても自分のなかで腑に落ちなかったんです。アンドレ役を3回務めたなかでも、最初は「セピア色の化石ともなれ」というような詩的なセリフをどういう気持ちで言えばいいんだろう、と悩んでいて。でも、いわゆる名台詞として意識せず、本当にリアルなストレートプレイだと思って『ベルばら』を考えてみたら、アンドレがあまりにも嬉しくて、今の瞬間を止めたくてそのセリフが出てきたことがわかる。だから、みんなが歌ってる「定番」というだけで大きな曲に挑んではいけないんだなと思ったんです。エディット・ピアフさんが「愛の讃歌」を作った時も、恋人に早く会いたくて、お願いして飛行機で帰ってきてもらったら、その飛行機が事故を起こして亡くなられてしまって。そういう部分も含めて、自分を使って私の「愛の讃歌」を表現したいです。

――たしかに、聴く側の気持ちとしても大事な部分ですね。柚希さんが名曲を歌ったアルバムとして聴くよりも、一曲一曲のなかに違う柚希さんがいるのを楽しむというか。

柚希:そうですね。私も、いろいろなシャンソンを聴いていくうちに、どんどん聴き方が変わってきました。自分が変わっていくと、歌も変わるし、人の歌の聴き方も変わる。そこもシャンソンの面白さだと思います。

――「夢見るシャンソン人形」も有名な楽曲ですが、あらためてすごくキャッチーな曲だなと思いました。

柚希:ポップでかわいいですよね。「♪私は夢見るシャンソン人形」って、今の私がどういう気持ちで歌えばいいの!? とも思いましたけど(笑)。「もっとかわいく、もっとかわいく!」と言われながら、自分も頑張ったんですけど、それだとちょっとしっくりこなくて。最終的には、ただかわいいを目指しているだけではない、私がこの歌詞を歌うという意味を大切にして歌いました。

――対して、「ろくでなし」の強気なムードも印象的です。

柚希:この曲は男に振られた女の歌、というイメージだったんですけど、(サルヴァトール・)アダモさんの原曲では、「不良少年」という男が振られる側の曲だったそうなんです。

――越路さんに向けて、岩谷時子さんが訳す時に女性目線にしたということで。

柚希:そう。だから、男も女もかっこいいというイメージが湧いて。女性側が振られたわけではなく、「この人とは合わなかっただけだから、また新たな人生を気持ちよく歩いて行きます」というような女性像を歌いたいと思いました。ダンスが映えるアレンジにしていただいたので、しっかりとダンスを入れ込みながら、生き生きとした女性を歌えたらいいなと思っています。MVもそういう感じになっています。

このアルバムで、ようやく入り口に立ったところという感覚

――本当にいろいろな柚希さんが表現されているんですね。CDとしてできあがったものを聴いてみて、ご自身としてはいかがでしたか?

柚希:2024年の5月くらいにレコーディングをしたので、もうすでに今の歌と違うなと思いました。だから、レコーディングしたあの時の自分が詰まっている作品ですね。研究を続けていくなかで、「もうちょっとこう歌いたかったな」という気持ちも出てきているので。1月のリサイタルでは、この7曲がまた違う歌になっているんだろうなと思います。

――1月19日にBunkamura オーチャードホールで開催される『柚希礼音リサイタル〜REON et Chansons〜』ですね。

柚希:はい。オーチャードホールで、オーケストラを従えて、すごく豪華な公演になります。もちろんシャンソンをしっかりと歌いながら、かっこいいダンスも盛り込んでやっていこうと思っています。

――シャンソンとダンスを合わせるのも面白そうですね。

柚希:いろいろ聴いていると、「このシャンソンでボレロを踊ってみたい」とか「この曲はインストにして裸足で踊りたい」「こういう衣装で歌いたい」と、いろいろ浮かぶものがあったんです。「愛の讃歌」では、越路さんの壮絶な人生を、宝塚で言うところの『ロミオとジュリエット』で天国に行くシーンになぞらえて表現してみたらどうだろう、とか。そういうイメージやキーワードを身振り手振りで頑張ってお伝えして(笑)、アレンジしていただきました。

――歌だけではなく、いろいろな表現に繋がっていくんですね。一日だけの公演なので、その日に懸けるという気持ちですか。

柚希:もう年末年始も関係なく、ひたすらシャンソンに向き合って。新しいシャンソン、新しい柚希礼音をテーマとして公演に臨みたいです。ずっとやってみたかったことですし、シャンソンに向き合ったことによって解き放たれたことや、新たな声との出会いがあったので。一回きりの本番でそれをどれくらい表現できるか、ですよね。でも、大きく考えすぎず、越路さんのように、エディット・ピアフさんのように、とにかく目の前の一曲一曲に想いを込めて歌っていこうと思います。

――あまりシャンソンに馴染みのない世代の方にも楽しんでほしいですよね。

柚希:そうですね。若い方はシャンソンを聴いたことがなかったり、知らない方も多いと思うんですけど。今、流行が一周まわって昭和の歌が再評価されているのと同じで、時代を越えても変わらない、いいもののよさがあると思います。シャンソンに詳しくなくても気負わずいらしていただきたいですし、そういう方々にも何か届けられるように頑張りたいです。

――これからもシャンソンの道を追究し続けていくんですか?

柚希:はい。このアルバムで、ようやく入り口に立ったところという感覚なので。半年前からでも変わっているんだから、また5年後に歌ってもまた全然違うんでしょうし、これからも探求していきたいです。

■リリース情報
『Les Nouvelles Chansons』
2025年1月15日(水)発売

価格:7,500円(税込)
・オリジナルトールケースサイズ/デジパック仕様
・撮り下ろしスペシャルフォトカード封入
・オリジナル特典応募券封入

<収録曲>
・サン・トワ・マミー
・雪が降る
・枯葉
・ろくでなし
・ラストダンスは私に
・夢見るシャンソン人形
・愛の讃歌

特設サイト:https://www.110107.com/reon

■ライブ情報
『柚希礼音リサイタル~REON et Chansons(レオン・エ・シャンソン)~』
公演日時:2025年1月19日(日)17:00開演(16:30開場)
会場:Bunkamuraオーチャードホール
出演:柚希礼音
演出:小林香
音楽監督/編曲:三枝伸太郎

<チケット>
全席指定:S席 11,000円/A席 8,000円/U25 4,000円※
※公演当日25歳以下が購入可能。公演日に年齢を証明できる身分証明書を提示の上、座席券と引き換え。席は選択不可。

・チケットぴあ:https://w.pia.jp/t/reonetchansons/(セブンイレブンで直接販売/Pコード:284-733)
・ローソンチケット:https://l-tike.com/reonetchansons/(ローソン、ミニストップ店内Loppi/Lコード:31851)
・イープラス:https://eplus.jp/reonetchansons/(ファミリーマートで直接販売)
・楽天チケット:https://r-t.jp/reonetchansons/(チケットスペース 03-3234-9999/オペレーター対応:https://ticketspace.jp/
・Bunkamura チケットセンター:03-3477-9999(10:00~17:00)
・オンラインチケット MY Bunkamura:https://mybun.jp
・東急シアターオー/Bunkamuraチケットカウンター:渋谷ヒカリエ2F(11:00~18:00)

<注意事項>
※未就学入場不可。
※やむを得ない事情により、公演内容が変更となる場合あり。
※主催者発表以外の理由による払い戻しは不可。
※公演中止・延期の場合、チケット代以外(旅費など)の補償は一切なし。
※車イスで来場予定の場合は、予め購入席番を(チケットスペース TEL:03-3234-9999/10:00~15:00※休業日を除く)まで連絡のこと。付添いが観劇される場合もチケットは必要。

『柚希礼音リサイタル~REON et Chansons~』特設サイト:https://reonetchansons.com/

柚希礼音オフィシャルサイト:https://www.amuse.co.jp/artist/yuzuki_reon/
STAFF X(旧Twitter):https://x.com/yuzukireonstaff/
Instagram:https://www.instagram.com/REONYUZUKI_OFFICIAL/

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