『BiS研究員 IDOLファンたちの狂騒録』刊行記念 ちょい読み第5弾:BiS研究員 Tumapai、あるいは田中友二へ

 音楽評論家・宗像明将による書籍『BiS研究員 IDOLファンたちの狂騒録』が、2025年1月7日に株式会社blueprintより刊行される。

宗像明将『BiS研究員 IDOLファンたちの狂騒録』

 2010年に結成、2011年からライヴ活動を開始し、それまでの「清純派」のアイドルとは異なるラディカルなスタイルを打ち出した、アイドルグループ「BiS」。アイドル業界に一石を投じる存在として、現在でも大きな影響を与えている。特に2024年7月8日に再結成ライブを行った、プー・ルイ、ヒラノノゾミ、カミヤサキ、テンテンコ、ファーストサマーウイカ、コショージメグミなどが在籍した第1期BiSは、これまでのアイドルのイメージを覆すアイドルとして、今でも語り継がれるようなさまざまな過激な伝説を残した。

 そのBiSのファンである通称「BiS研究員」たちは、圧倒的な熱量でBiSに人生をささげるようなファンが多くいるほど、明らかに他のアイドルファンとの特異性が見られる存在であった。中には若くして亡くなってしまった研究員や、BiS研究員として生きた証を墓石に刻んだファンもいる。ただ、BiS研究員のそういった記録は時代とともに風化をしており、ほとんど残ってない状況にある。本書では自身も研究員として当時の熱狂を体験していた著者が、元メンバーのプー・ルイやミチバヤシリオをはじめBiS研究員と関係者のギュウゾウ(電撃ネットワーク)などの取材を重ねた渾身のルポルタージュ作品である。

 リアルサウンドでは本書の刊行を記念し、内容から一部抜粋してお届けする「ちょい読み」企画を連続展開。第5弾となる今回は、BiS研究員Tumapai、あるいは田中友二へを紹介する。

<BiS研究員 Tumapai、あるいは田中友二へより一部抜粋>

 Tumapaiと出会ったのは、2008年12月1日のことだ。その日、日本武道館で「Act Against AIDS 2008」が開催され、Perfumeが出演するので見にいった。終演後、近くの飲み屋に、音楽ジャーナリストの原田和典といたところ、サインを求めてきた人物がいた。Tumapaiである。サインをしたのは、原田和典も私も寄稿していた「MUSIC MAGAZINE」2008年10月号。「Perfume現象」と題したPerfume特集が組まれていた。

 二度目に会ったのは2009年、まてこいが主宰し、私も参加していたPerfumeのDJイベント「Perfume Night」の開催中だった。同じくPerfumeのDJイベント「E3!!!」のメンバーが挨拶に来たのだ。やって来たのは、「E3!!!」の主宰者である班長、そしてスタッフのTumapai。当時「Perfume Night」と、2ちゃんねるから生まれた「E3!!!」は、敵対しているという設定にインターネット上で勝手にされていた。

 それ以降、テクノポップのアーティストの現場に行くたびに会うTumapaiは、2ちゃんねるというバックグラウンドがよく浮きでた、暗い目をした内向的な青年であり、いつもフロアの後ろのほうにいた。

 そのTumapaiを一変させたアイドルがいた。2011年からライヴ活動を始めたBiSだ。よく覚えているのは、2011年3月のBiSの最初の大阪遠征の映像の中で、「nerve」でサイリウムを振って踊り狂うTumapaiの姿だった。それまでとは、まるで別人のように。

 BiSとの出会いにより、Tumapaiの人格は変わった。フロアでボソボソ話すタイプだったはずのTumapaiは、Twitter上でBiSに関して辛辣な意見も大量に書き込み、他の研究員の反発も同意も浴び、ときにはBiSのメンバーからブロックもされながら、それでもライヴ会場とインターネットで、BiS現場を常にかきまわし続けた。泥酔しながら現場でガヤり、泥酔しながらTwitterに憎まれ口を書き込んだ。

 Tumapaiが第1期BiSのTO、トップオタクだったことに異論がある者はいないだろう。2014年7月8日のBiSの解散まで、私たちは長すぎるモラトリアムをともに浪費した。

 2016年に、私がBiSのマネージャーについての書籍『渡辺淳之介アイドルをクリエイトする』を上梓したとき、多くの研究員が、私に「次は研究員の生きざまをまとめるべきだ」と言ってくれた。私もそれには興味があったが、時間の余裕があるだろうとたかをくくっていた。その結果、2022年5月19日にTumapaiが急逝した今、話を聞くべき筆頭の研究員がこの世から去った現実に愕然としている。

続きは書籍にて

■書籍情報
『BiS研究員 IDOLファンたちの狂騒録』
著者:宗像明将
amazon予約:https://www.amazon.co.jp/dp/4909852476
四六判/268ページ(口絵20ページ)
ISBN:978-4-909852-58-8 C0073
定価:2,750円(本体2,500円+税)
発売日:2025年1月7日(火)

■目次
はじめに
BiS研究員  ごっちん
BiS研究員  越田修
2011年のBiSと研究員
BiS研究員  みぎちゃん
BiS研究員  Kん
2012年のBiSと研究員
BiS関係者  高橋正樹
便器の男
BiS研究員  Kたそ
2013年のBiSと研究員
BiS研究員  がすぴ〜
BiS研究員  Tumapai、あるいは田中友二へ
Tumapaiの母
2014年のBiSと研究員
BiS関係者 ギュウゾウ(電撃ネットワーク)
BiS元メンバー  ミチバヤシリオ
2014年7月8日の横浜アリーナ
BiS解散後の研究員
BiS元メンバー  プー・ルイ
2024年7月8日の歌舞伎町シネシティ広場
BiS年表2010-2024
あとがき
BiSオフィシャル&ブートTシャツとBiS研究員

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