トンボコープ、キャリア最大規模のステージで“最高”を更新 憧れのSpotify O-EASTで見せた進化

 10月24日、トンボコープの1st oneman live tour 『WORLD ILLUMINATION』のツアーファイナル公演が、渋谷Spotify O-EASTにて行われた。2022年4月の結成から約2年半で辿り着いた悲願のO-EASTのステージ。チケットは見事にソールドアウト。破竹の勢いで今回のツアーを駆け抜けてきた4人は、自分たちのワンマンライブ史上最大キャパの会場となるO-EASTで、いったいどのような進化した姿を見せてくれたのか。順を追って振り返っていきたい。

 雪村りん(Vo/Gt)による「東京、待たせたなー!」という力強い呼びかけから、オープニングナンバーの「彗星」へ。そして、「最高の夜にしよう」という言葉を添えて「独裁者」「サンポリズム」へと繋ぐ。観客の歓声、ハンズクラップ、シンガロングは、どれも幕開け早々とは思えないほどの並々ならぬ熱量で、それらのリアクションはまさに、今のトンボコープが背負う期待の大きさを物語っていたように思う。何より、観客としっかり呼吸を合わせつつ、しなやかに、ダイナミックに躍動する4人のバンドサウンドは、いつにも増して逞しい響きを放っていて、今回のツアーを通して深めてきた輝かしい自信が確かに伝わってきた。また、雪村の渾身のロングトーンも圧巻で、その頼もしい歌声に強く心を震わせられた。

 ここで雪村は、「いいライブかどうかは、俺と君で心をどれだけぶつけ合えるかで決まると思うんで」と自身のライブ論を語り、「君と一緒にライブをつくっていけたらと思います」と、一人ひとりの観客に向けて真摯に呼びかける。その想いに応えるように、「風の噂」では、メンバーに合わせて観客が何度もジャンプを繰り返し、雪村の「聴かせてくれ、もっと、もっと!」という呼びかけを受け、懸命に大きな歌声を重ねていく。「くだらないこと」では、雪村がハンドマイクでステージの縁ギリギリまで迫りながら観客に歌声を求め、熱烈なコール&レスポンスが次々と成立していく熱い一幕も。まだ序盤にもかかわらず、まるでクライマックスのような一体感と高揚感が会場を満たしていて、同じ空間に立ち会う中で何度も胸が高鳴った。

 続くMCパートは、でかそ(Ba)による恒例の"でかそタイム"へ。でかそは、「今からこの空間を世界で一番平和にしようかなと思いまして」と趣旨を伝えた後、「せーの!」と力強く叫ぶと、観客は両手でピースをつくり、全身全霊の声で「Yeah!」と叫ぶ。でかそは、その声の大きさに思わずのけぞってしまったが、すぐさま「最高ー!」と返し、フロアから温かな拍手が巻き起こる。そうしたライブならではのコミュニケーションを経て届けられたのは、雪村が「あなたのどんな悩み事にも当てはめて聴ける曲にできたと思う」という一言を添えて披露された新曲「daratto」だ。まるで、一人ひとりの孤独に優しく寄り添うような歌の親密なメロディが心地よく、音源で聴く時よりも深く心に沁み入るような感覚を抱いた。

 ここで一転して、ロックモード全開の展開へ突入。雪村は、「全部曝け出そうぜ、ぶつかり合おうぜ!」「俺も全部ぶつけるからさ、君も全部ぶつけに来てよ!」と叫びながら「PARADIGM」を猛烈なエネルギーを放出するように歌い上げ、続く「明日の一面」の間奏では、そらサンダー(Gt)のギターソロ&でかそのベースソロが火花を散らすように交互に炸裂。そして、林龍之介(Dr)の猛々しいドラムソロを経て、雪村の「跳べー!」という呼びかけを合図に、観客が一斉にジャンプを繰り返していく。沸々としたフロアの光景を見た雪村は、「最高だ。愛で溢れちまうよ、愛で、愛で」と溢れ出る本音を伝え、その勢いのまま「過呼吸愛」へ繋ぐ。なんて熾烈な展開なのだろう。

 次のMCパートで雪村は、結成から現在に至るまでのバンドの歩みを振り返った。はじめは、曲を作ってライブをしても誰にも観てもらえなかった。それでも、4人とも負けず嫌いだったからこそ、めげずにスタジオに入って新しい曲を作り、一つずつライブを重ねてきた。たとえお客さんが一人だったとしても、全力でライブをやってきた。そして、その繰り返しを経て、ついにこの日O-EASTのステージに立ち、ソールドアウトすることができた。雪村がそう語った後に披露されたのは、活動初期から大切に歌い続けている「信号花火」だ。これまで何度も歌い届けられてきた〈君の1番になりたいの〉という言葉が、先ほど語られたバンドの歩みと相まっていつも以上にグッときたし、「夢の10年後」の〈がむしゃらに  ただ在るままに  生きてみよう〉という一節も同じように深く心に響いた。

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