乃木坂46 向井葉月、アンジュルム 川村文乃......卒業と芸能界引退に見るアイドルのセカンドキャリアの多様化

 元アイドリング!!!の朝日奈央や元私立恵比寿中学の廣田あいか、元HKT48の菅本裕子、元NMB48の吉田朱里など、アイドル卒業後のキャリアとして、モデル、俳優、クリエイターといった自らのやりたいことを叶える場所として広義のタレント活動を選択し、活躍するケースが以前よりも増えている。これはアイドル活動といわば地続きなキャリア選択だとも言えるが、一方で近年は芸能界引退を宣言し、新たにセカンドキャリアを志向するケースが増えているのは興味深い。

 アイドルのセカンドキャリアを考える際に重要な視点がある。それはその選択が“ポジティブ”なものであるか、“ネガティブ”なものであるかだ。アイドルの活動の延長として芸能活動を続ける場合、ある程度アイドルとして成功、もしくはしっかりと地盤を固めた上でのキャリア形成であることが大半である。しかし、一方で芸能界引退の場合には、これまでは“芸能界引退=芸能界で生き残れなかったアイドルたち”という消極的なイメージがあったことも事実だろう。

 しかし、2010年代後半を境に、この状況は大きく変わったように思う。2017年には乃木坂46のメンバーとして絶頂期にあった橋本奈々未、カントリー・ガールズ及びハロー!プロジェクトとして活動していた嗣永桃子を皮切りに、元AKB48の渡辺麻友、元乃木坂46の星野みなみらが芸能界から引退している。彼女たちに共通するのは積極的な意味合いを含んでいるということだ。

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 向井の「乃木坂を卒業したその先の未来の自分にも前向きになれている」(※1)という言葉からもわかるように、2人に共通しているのはアイドルからの卒業を人生のひとつの区切りと捉え、その先に新たなキャリアを明確に描いている。

 そこにはワークスタイルやライフスタイルの多様化によって、キャリアの選択肢が広がっているという社会的な背景がある。特に現代ではキャリアのみならず、ライフスタイルそのものの多様化が進み、誰もが自分らしいビジョンを描くことが容易になってきている。それは社会的な豊かさとも直結するものだが、ともあれ、アイドルのセカンドキャリアを積極的に選択できる環境になっているのは素直に喜ばしい。

 しかし、同時に芸能界での疲弊という問題も付きまとう。積極的な選択であるはずの芸能界引退だが、SNS時代となり、誰もが気軽にコメントができ、アイドルは常に誰かに視線を向けられていると言ってもいい。そうなった時に、自分らしくいられる場所として芸能界から離れた一般的なライフスタイルを求めるようになることは自然な流れのように思う。

 アイドルのセカンドキャリアの選択肢は広がりを見せている。それは“第二の人生”と言っていいかもしれない。誰もがどこからでも自分の意思で自分の人生を決定できる。彼女たちの勇気ある決断を応援したい。

※1:https://www.nogizaka46.com/s/n46/diary/detail/102848
※2:https://www.helloproject.com/news/17620/

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