JASRAC、2024年度上半期徴収額&分配額が過去最高 海外からの入金額も増加傾向に

 日本音楽著作権協会(JASRAC)が10月24日、『2024年度上半期事業報告記者会見』を開催した。伊澤一雅理事長、増田裕一常務理事、須子真奈美常務理事が登壇し、上半期の徴収額と分配額などについて業務報告を行った。

 2024年度上半期の「徴収額」は672.8億円(前年度比+19.3億円)。これは上半期としては過去最高の徴収額で、コロナ禍前(2019年は529.7億円)より大幅に増加した。

 その内訳として「インタラクティブ配信」(YouTubeなどの動画配信やNetflixなどのサブスクリプション動画)が262.5億円(前年度比+23.6億円)。有料配信、無料配信、投げ銭システムなど、新たなビジネスモデルに柔軟に対応した結果とした。

 また「演奏等」が133億円(前年度比+11.2億円)で、これもコロナ禍前を上回った。ここにはコンサートやカラオケなどが含まれており、近年アリーナ規模の会場が多くオープンしたこと、アーティストやアイドルによるドーム公演が数多く開催されていることから、ドーム・アリーナ公演の活況が反映されたかたちだ。またカラオケの徴収額は前年度より4%増加しており、コロナ禍からの回復の兆候が続いている。

 一方TVなどの「放送等」は131.5億円で+0.9%と昨年からの伸びはわずかにとどまった。数の上限がない動画配信に対して、TVはチャンネル数と番組数がほぼ固定されているためだと思われる。また減収となった項目もあり、Blu-rayやDVDなどの「ビデオグラム」が40.9億円で前年度から約21%減、CDなど「オーディオディスク」は34.5億円で約12%減となった。

 伊澤氏によれば、今回減となったCDなどの徴収額は、1997~1998年のピーク時には500億円あったとのこと。音楽市場や音楽メディアが変化したことは徴収額にも顕著で、「インタラクティブ配信」や「演奏等」の伸びの大きさからは、ユーザーがイマーシブな体験を求めていることがうかがえる。

 対象作品数は約287万曲とのこと。実際にクリエイター側に支払われた「分配額」も、677.2億円と前年度から30.9億円の増加で上半期としては過去最高を記録した。海外からの入金額は10.9億円で、コロナ禍前の2019年度より3倍以上増加しており、日本楽曲の海外での人気拡大を示している。

 JASRACは昨年より新プラットフォーム「GDSDX」を運用し、世界の主要なデジタル配信サービスのコンテンツ情報と楽曲情報を共有・交換することを可能にした。これによりアメリカ、韓国、フランスなど120あまりの外国団体と連携し、国際間での楽曲データベースを共有、日本のさまざまなコンテンツや楽曲の海外展開をサポートしたことが「海外入金」の増加につながったと思われる。

 伊澤氏は分配額の増収について、「日本の音楽市場の豊かさを示しており、対価としてしっかり還元することができたと自負している」とコメント。今後についても「公平で均一な管理に努めていく。迅速なライセンスで、音楽ビジネスの成長とクリエイターへの還元を両立させていきたい」とした。

 2024年度の年間徴収額の見通しについても、「上半期が前年度比+3%であることから、コンテンツの配信やコンサート分野が全体を牽引するかたちで、2023年度の年間徴収額と同等の水準は維持できるだろう」とコメントした。

 著作権管理は、クリエイターの権利と生活を守るだけでなく、楽曲の使用料というかたちで、どの曲がどこでどのくらい聴かれているかを数値化することができる。今回の会見では全体の報告であったが、さらに細分化することでトレンド予測の一助ともなり得るだろう。今後も注視していきたい。

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