The Biscats、“ロカビリー”の火を絶やさないための戦い 久米浩司の意志を継ぐ、渋谷公会堂への想い
狭い価値観でいたらロカビリーに興味をもつ人も減ってしまう
ーー2023年からは、The Biscatsの主催ライブは、18歳以下は無料にしているそうですね。
Kenji:自分たちのファンは、やっぱり自分たちよりも上の方達が多いんですけど、そのお子さんたちの中には親の影響でロカビリー好きもいて、その人たちにももっとライブに来てほしいし、もしかしたら、その人たちが学校で、The Biscatsのライブに行ったんだって話をしたら興味を持ってくれる人たちもいるかもしれないし。ただだったら、ちょっと見にいってみようって思うじゃないですか。もちろん、僕達はこれからもずっと活動を続けていきますけど、ロカビリーってかっこいいと思う若者が出てこないと、ロカビリーはなくなっちゃうから、そういう意味でも、若者と言うか、自分たちよりも年下の、中学生とか高校生とかにも気軽にライブに来てもらって、ロカビリーに触れてほしいという思いがあったので、18歳以下無料を導入してみました。
Suke:10代ってあんまりお金ないじゃないですか。もちろん、お金を払ってライブに来るっていうのも大切ですけど、僕らは敢えてただにして、浮いたお金でロカビリーの服を買ってよみたいなスタンスで行こうって。
ーーYouTubeでライブハウスの行き方を紹介していましたね。
Misaki:ロカビリーっていうと、やっぱり怖そうというイメージがあるので「そんなことないよ。誰が来ても楽しいよ」ってことを、まず知ってもらいたかったんです。あと、ロカビリー・ファッションじゃないと浮いちゃうんですかって聞かれることが多いんですけど、全然そんなこともなくて。Tシャツに短パンの人もいっぱいいるよって。でも、そういうことも来てみないとわからないし、わからないところに飛び込むのはやっぱり怖いと思うし、だから、全然そんなことないよって私たちが言うことによってライブハウスに来やすくなるのかな。実際、安心しました。行きますって言ってくれる方も多いので、これからもロカビリーは怖くないぞっていうのは、どんどん発信していきたいと思います(笑)。
ーーさて、The Biscatsはハイブリッド・ロカビリーを掲げ、音楽的にさまざまなトライを繰り返してきました。そんなトライを振り返ることができるのが8月7日にリリースされるベスト・アルバムですが、ハイブリッド・ロカビリーを改めて言葉にすると、どうなりますか?
Misaki:元々あるロカビリーをそのままやるのはつまらないと思っているんです。だから、いい意味で、ぶっ壊すと言うか、型にはまらずに、どんどん新しいことをやっていきたいんです。ロカビリー好きな人から、こんなのロカビリーじゃないよって言われることもあると思うんですけど、それは気にしないと言うか、自分たちのロカビリーを作っていければいいと思っているんです。
ーーそれを象徴する曲を挙げるとしたら?
Misaki:「ノッてけ!Sunday」かな。
Kenji:あぁ、確かにギターソロ行く前とか、ちょっとメロコアっぽいリズムになってたりとか、ロカビリー なんだけど、型にはまりすぎないっていう。そういう柔軟性のあるロカビリーっていうのがThe Biscatsらしいなっていうのはありますね。
ーーそれにしても、ロカビリーじゃないと言われることもあるんですね?
Misaki:そういうことを言ってる人はいるみたいです。でも、そんな閉鎖的な考えや狭い価値観でいたらロカビリーに興味をもつ人も減ってしまうと思います! だから今の若い世代にあまり知られていないという現状があるのかなと思うので、誰かがもう一度ブームを起こさない限りこんなに素晴らしいロカビリーという音楽ジャンルが日の目を浴びることがなくなってしまう。そこで私たちは未来に繋げていくためにも必死にロカビリーの布教活動をしてます! そんなロカビリーの火を消さないように活動している私たちに「そんなのロカビリーじゃない」と言う人には「本当にロカビリーを愛していますか?」って聞きたいですね!
ーーさて、ここからはベストアルバムに収録されている全14曲の中から思い入れのある曲を聞かせてください。
Misaki:私は「Sweet Jukebox」です。The Biscatsが4人から3人になって最初の曲で。ここからがらっとイメージを変えたということもあって思い入れがあります。The Biscats結成当初は、まずロカビリー好きの人たちにも認めてもらえるようにゴリゴリのロカビリーな感じでやっていたんですけど、そこからロカビリーを広めていくために、それこそハイブリッド・ロカビリーと掲げて、いろいろ要素を入れていくことも含め、新しいことをやっていくぞって決めたタイミングがちょうど「Sweet Jukebox」で。思いっきり可愛い感じに振っているんです。
ーーさっきおっしゃっていた第2章がこの曲から始まったわけですね。
Misaki:そうですね。第2章の始まりの曲ですね。
ーーKenjiさんとSukeさんも聞かせてください。
Kenji:僕は「My Hometown」ですね。
ーーノスタルジックなポップソングという印象です。
Kenji:そうですね。ちょっとカントリーテイストもあって。デモの段階で聴かせてもらった時からめっちゃいい曲だと思っていたんですけど、ギターアレンジはまるまる任せるよって言われて、はりきりすぎちゃったのか、いざレコーディングするってなった時にギターを重ねすぎて、弾くのにめちゃくちゃ苦労しました(笑)。ギターを重ねすぎてもよくないということを学んだ曲でもあるし、これまででレコーディングが一番しんどかった曲でもあるしという意味で思い出に残っている曲です。
ーーSukeさんは?
Suke:僕は「Teddy Boy」です。これまでライブで欠かさずにやってきた定番曲なんですよ。だから、お客さんも乗り方を知ってるし、声を出すところも体に染みついているし。この曲を渋公でやったとき、どれだけでかい声が聞けるのか、今から楽しみでしかたないです。