The Biscats、“ロカビリー”の火を絶やさないための戦い 久米浩司の意志を継ぐ、渋谷公会堂への想い

 結成5周年を迎えたThe Biscatsが代表曲を網羅したベスト・アルバム『The Biscats BEST 2019-2024』をリリースする。

『The Biscats BEST 2019〜2024』Sound Trailer

 The Biscatsは日本のロカビリー界のレジェンド、久米浩司(ex. BLACKCATS、MAGIC、RODEO他)のDNAを受け継ぐMisaki(Vo)を中心に2019年に結成されたロカビリー・バンド。オーセンティック・ロカビリーでも、ネオ・ロカビリーでもなく、ハイブリッド・ロカビリーを掲げた自分たちの音楽を多くの人に届けることだけにとどまらず、日本にロカビリー・ブームをもう一度起こすことを目標に活動を続けてきたこの5年間を、Misakiに加え、Kenji(Gt)、Suke(W.Ba)に振り返ってもらった。

 8月10日のLINE CUBE SHIBUYA(旧:渋谷公会堂)でのワンマン・ライブがその5年間の集大成と言えるものになることはまず間違いないが、そこからThe Biscatsの第3章がスタートすると考えているメンバー達は、自分達のハイブリッド・ロカビリーにさらに磨きを掛けることはもちろん、海外進出をはじめ、新たな目標に向かってすでに走り始めている。(山口智男)

暗黒の時代を乗り越えて目標の渋谷公会堂ライブへ到達

The Biscats

ーー『The Biscats BEST 2019-2024』は内容ももちろんですが、エドワーディアンジャケットでキメたアルバムカバーがまずクールですね。

Misaki:ありがとうございます。

Suke:8月10日に渋谷公会堂(現:LINE CUBE SHIBUYA)でライブがあるんで、きちっとしているほうがイメージに合うのかなと思って、今回はエドワーディアンジャケットにしてみました。

Misaki:それと、バンドを結成してから、みんなで撮影に行ったイギリスでThe Biscatsってバンド名を決めたということもあって。今回、The Biscatsはある意味、第3章に進むタイミングでもあるので、ビジュアルも原点回帰を意識してみたんです。

ーーなるほど。第3章という言葉が出ましたが、まずは結成5周年おめでとうございます。

全員:ありがとうございます。

ーーこれまでの5年を振り返ると、まずどんなことが思い浮かびますか?

Misaki:4人で始めたバンドが3人になったタイミングで第2章が始まったと思っているんですけど、私たちはこの5年間、目標を設定しながら活動してきたんです。The Biscatsとしてツアーをするぞというところから始まって、少しずつ目標を達成しながら活動してきて、渋谷公会堂でワンマンライブをするという目標を定めてから2年。そこを目指して、がんばってきて、そのライブから第3章が始まると考えているんですけど、だから一言で言うと、一つ一つの目標に向かって、こつこつとやってきた5年間だったのかなって思います。

ーーコロナ禍やメンバー脱退も経験した濃密な5年間でしたよね?

Misaki:The Biscatsを結成してから1年くらい作品が出せなかったんですけど、その間にバンドとしての暗黒期が早速あって(笑)。その中で、いろいろなことが起きて、ちゃんと活動ができるようになったのが1年経ってからなので、結成5年と言いながら、実質4年みたいなところはあるんですけど。

ーー暗黒期って何があったんですか?

Misaki:バンドとして、自分たちはこうしたいと思っているのに、その時、私たちの周りにいた大人が「こっちに行け!」みたいな。そのとき、みんなけっこうメンタルがやられちゃって。

Suke:めんどくさい時期やった。

Misaki:そうだね。本当に暗黒の時代でした。でも、その辛い時期を、メンバー全員で乗り越えてきたからこそ、絆が強くなった。最初に、そういう大きなアクシデントがあったから、今はもう、ちょっとやそっとのことじゃブレない。3人の中に確かなものができたと思います。

Misaki

ーーちょうどこの5年間の中でバンドを成長させた出来事を聞かせてもらおうと思っていたんですよ。今お話していただいたこともそうだと思うのですが、他にも何かありますか?

Kenji:やっぱり、YouTubeを始めたことが大きいですね。

The Biscats が「天使の誘惑/黛ジュン」 をやってみた!

ーー歌謡曲やJ-POPを、The Biscats流にカバーする「ロカビリーバンドが●●●をやってみた」というシリーズですね。

Kenji:はい。いろいろな人に見てもらえたおかげで、幅広い年齢層やジャンルの人達にライブに来てもらえるようになったし、自分たちの演奏的にも修行になったし。というのは、一発録りにこだわっているので、多少荒い演奏の時もあるんですけど、それでも本当に昔のレコーディングと同じようなやり方で、一発録りでやるんだっていうそのやり方にこだわったことが自信にも繋がって、全部がいい方向に向いていったんです。

ーーSukeさんはいかがですか?

Suke:うーん、何だろ? でも、最近一緒にピラティスしてるもんな(笑)。

ーーあ、3人で?(笑)

Misaki:確かにやってるけど(笑)。

Suke:それは冗談としても、でも、音楽以外でもそういう、たとえば、みんなでバーベキューしたりとか、YouTubeの撮影ではあるんですけど、サブチャンネルで、みんなで遊びにいったりとか、そういうのもけっこう大きいと思うんですよ。

Misaki:そうですね。YouTubeもそうだし、プライベートもそうだし、あとはツアーを毎年しっかりやるようにしていて、そこでも毎回、目標を立てるんですけど、来て下さる方も全国でどんどん増えてきていて、そういうこともバンドを成長させることに繋がっていると思います。

ーーYouTubeやライブを通して、ファン層もかなり広がったんじゃないでしょうか?

Misaki:そうですね。ロカビリーが大好きな方にももちろん来てほしいですけど、やっぱロカビリーっていうものを広めたいっていう思いが自分たちの根底にあるので。今までロカビリーを聴いてこなかった人たちにとって、ロカビリーを知るきっかけになってほしいと思って、YouTubeを始めたんですけど、いろいろな楽曲をカバーさせていただいている中で、その楽曲のファンの方も含め、本当にいろいろな方たちがライブに来てくれるようになったので、今はゴリゴリのリーゼントの方ばかりというわけではないんです(笑)。最初の頃はやっぱりリーゼントで強そうな方がいっぱいいたんですけど、今はそういう方もいつつ、いろいろな方がいて。私たちが目指していた理想の形になってきたのかなって思います。

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