VALORANT×XG、KISS OF LIFE/LOL×NewJeans……Riotが仕掛ける音楽展開 K-POPシーンとチームゲームの親和性

 TWICE、(G)I-DLE、NewJeans……。どれも時代を彩ってきた人気のK-POPアーティストだが、もう一つの共通点がある。それは、Riot Gamesとコラボレーションした経験があるということだ。

 Riot Gamesはアメリカ・ロサンゼルスに拠点を構えるゲーム会社であり、これまで『League of Legends』(以下、『LoL』)や『VALORANT』といった世界的な人気を誇る作品を発表し、特にeスポーツシーンにおいて圧倒的な存在感を発揮してきた。同社はゲームの世界観を他の媒体にも拡大する取り組みを続けており、単体のアニメーション作品としても絶大な人気と評価を獲得した『アーケイン』(Netflix)を筆頭に、その多くは確かな成功を収めている。

 そして、音楽もまた、Riot Gamesが長らく力を入れてきた分野の一つだ。

積極的にK-POPとのコラボレーションに取り組むRiot Games

 2014年の『LoL』の世界大会のテーマソング「Warriors」にImagine Dragonsを起用して以来、同社は長きにわたってさまざまなポップアーティストとのコラボレーションを積極的に続けている。そこにはZedd「Ignite」(2016年)やリル・ナズ・X「STAR WALKIN'」(2022年)、ポーター・ロビンソン「Everything Goes On」(2022年)などが含まれるのだが、近年、特に目立つようになっているのがK-POPアーティストの起用だ。先日も、KISS OF LIFEとMark Tuan(GOT7)による「SUPERPOWER」が今年の『VALORANT』の世界大会である『VALORANT Champions 2024』の公式テーマソングとして発表されたばかりである。

SUPERPOWER ft. KISS OF LIFE & Mark Tuan(公式ミュージックビデオ) // VALORANT Champions 2024テーマソング

 『VALORANT』といえば、今年の4月に地域大会に相当するインターナショナルリーグ(アジア太平洋地域大会『VALORANT Champions Tour Pacific 2024』)のテーマソングとして制作されたXGとのコラボレーション楽曲「UNDEFEATED」が起用されていたことも記憶に新しく、まさに今年は『VALORANT』の大会全体をK-POPがサポートしているような構図となっていると言ってもいいだろう。また、XGはインターナショナルリーグの決勝戦にゲストとして登場し、ゲームの世界観と一体となった壮大なパフォーマンスを披露していた。世界大会決勝での「SUPERPOWER」にも期待したいところだ。

UNDEFEATED - XG & VALORANT (Official Music Video) // VCT Pacific 2024 Song
VCT PACIFIC 2024 Opening Ceremony Performance // XG - UNDEFEATED

 また、Riot Gamesの看板タイトルである『LoL』においても、昨年の世界大会ではNewJeansがテーマソング「GODS」を担当している。普段のグループのコンセプトとは大きく異なる、壮大な世界観と対峙するかのような堂々とした曲調や歌唱は、ファンにとっても新鮮に受け止められていたのではないだろうか(通常とは異なり、Riot Gamesのコンポーザーがソングライティングを担当しているのも、楽曲の大きな特徴の一つだろう)。こうした動きからも、現在のRiot Gamesが特にK-POPに力を入れていることがわかる。

GODS ft. NewJeans(뉴진스)(公式ミュージックビデオ) | Worlds 2023 テーマ曲 - リーグ・オブ・レジェンド
NewJeans (뉴진스) - GODS | Worlds 2023 Finals Opening Ceremony Presented by Mastercard

K/DAの成功が示したK-POPとチームゲームの親和性の高さとは?

 こうしたRiot GamesとK-POPの接近において、最も大きなきっかけとなったのが、2018年の『LoL』の世界大会のために結成されたバーチャルK-POPグループ K/DAの成功であることは間違いない。『LoL』に登場するプレイアブルキャラクター(Champions)の中から選ばれた4人のキャラクターによって構成され、(G)I-DLEのミヨンとソヨン、アメリカのシンガーであるマディソン・ビアー、ジャイラ・バーンズが歌声を担当した同グループは、デビューシングルとなる「POP/STARS」のMVが本稿執筆時点(7月29日)で6億回再生以上を記録するほどの大ヒットとなり、ライブパフォーマンスにおけるバーチャル演出も相まって、ゲームの枠を超えた大きな反響を巻き起こした。

K/DA - POP/STARS (ft. Madison Beer, (G)I-DLE, Jaira Burns) | Music Video - League of Legends

 当初はあくまで大会のために結成されたグループという位置付けのK/DAだったが、2020年にはカムバックが実現。新たにセラフィーン(歌声はLexie Liuが担当)も加わり、ゲストとしてTWICEやキム・ペトラスらが参加したミニアルバム『ALL OUT』をリリースし、再びシーンに話題をもたらした。

 K/DAの成功は、『LoL』とK-POPの親和性の高さを示すだけではなく、K-POPシーンそのものにおいても大きな影響を与えている。特にバーチャルグループという文脈においては、aespaがデビュー当時に各メンバーのアバターを発表した際にK/DAとの比較や、その類似性を指摘する意見が相次いだように、ある種のパイオニア的な存在として定着したといっても過言ではない。また、昨年末には日本で開催されたRiot Games主催のeスポーツイベント『Riot Games ONE 2023』において、ホロライブプロダクション所属のVTuberによるスペシャルユニットがK/DAの楽曲のパフォーマンスを披露するなど、その影響は日本のバーチャルシーンにも波及している。

Riot Games ONE Opening Act 「POP/STARS」「THE BADDEST」3D Live Performance

 また、K/DAを紐解くことで「なぜ、Riot GamesはK-POPに力を入れているのか?」という疑問の答えも見えてくるだろう。最も重要なポイントは、K/DAのメンバーが実際の『LoL』のキャラクターであるという設定が与えられているということだ。『LoL』や『VALORANT』は、ともにプレイヤーがゲーム内に用意された個性豊かなキャラクターを選び、それぞれのスキルを最大限に活用しながら、5人1組のチームの一員となって戦うタイトルである。一人のフロントが主体となるのではなく、異なる才能を持つ個人が集まり、チームが一体となることで圧倒的な力を生み出すという構造は、まさにK-POPのみに止まらないアイドルグループ/ダンス&ボーカルグループの在り方に近いものであり、K/DAはその考えを具現化した存在でもある。

関連記事