第1期BiS再結成ライブを宗像明将が目撃 解散から10年、メンバーと研究員の想いが交差した奇跡の一夜

 そのファーストサマーウイカは、「生きて集まってくれて嬉しいです」と言った後、涙を見せまいとするかのように上を向いた。旧研究員は知っている。再結成前夜、彼女がXに投稿した「\コイヨ コイヨー /」というフレーズは、2022年に亡くなった旧研究員の言葉であることを。その旧研究員はこの日、顔をプリントされて空気人形に貼られ、元気に会場を飛び跳ねていた。2023年に亡くなった旧研究員の遺骨を、リフトされながら掲げた研究員もいた。この夜は、あの世とこの世がつながっている一夜でもあった。

 

リフトされる空気人形

 6曲目は「primal.」。2011年の楽曲にして、第1期BiSの「エモい」と言われる楽曲の代表格だ。この楽曲では、サビでメンバーが両手を挙げて背中を向ける振付がある。それと同じように研究員も両手を挙げて振り返るので、その瞬間、私は3000人がこちら側に振り返るのを見た。圧巻である。

 7曲目は「nerve」。これも2011年の『Brand-new idol Society』の収録曲だが、同年にはシングルカットされ、さらに2014年には「FiNAL DANCE」との両A面でシングルカットされるなど、まさにBiSの代表曲である。2010年代のアイドルソングの代表曲として挙げられることも多い。そんな楽曲のため、熱狂とともにリフトはさらに激化していく。

 そして、メンバーが8曲目の「レリビ」の名を挙げようとしたとき、渡辺淳之介が「研究員舐めてたわ! これで終わりです!」とマイクでカットインした。私は会場内だけ見ていたのでわからなかったが、会場外にも人が集まりすぎ、予定されていた「レリビ」「primal.2」が披露される前に、安全確保のためにライブは終了となった。

 こうした結末となったが、現在は第1期BiSメンバーの全員が歌っているわけではないのに、歌が良いことには驚いた。ダンスもカミヤサキが一から組み直し、プー・ルイが「一番練習した」というほどで、10年前に劣るところはなかった。

 ライブ後には、第1期BiSはマスコミの囲み取材にも応じた。ファーストサマーウイカは、この日を一足早いお盆と述べ、青春の日々という言葉で過去の活動を形容した。そして彼女たちは、かつての研究員である私を見ると容赦なくいじってくる。これも10年ぶりの感覚であり、私の慢心を削いでくれた。

 プー・ルイは、若くてBiSを好きと言えない時期もあった、とMCで振り返っていた。そして、BiSは私たちの原点だ、とも。それは、会場の内外を埋め尽くしていた研究員たちも同じ心境だったのではないか。たった一夜の再結成だったからこそ、それぞれが生きてきた10年の歳月を抱えてメンバーと研究員は、馬鹿馬鹿しくも激しく交歓し合った。封印していた10年前の記憶が、不意に脳の奥底から湧きあがり、それが煮えたぎるかのような経験だった。まさか素直に第1期BiSに「ありがとう」と思う日が来るとは、私自身も想像していなかったのだ。

渡辺淳之介「実質的な経営業務に興味がなくなった」 BiSH解散、ロンドン渡航と海外展開――WACKの現在地

株式会社WACKの代表取締役 渡辺淳之介にインタビュー。2023年6月のBiSH解散以降、WACKではメンバーの退所も続いている…

ファーストサマーウイカ、プー・ルイ……旧BiSメンバーたちが経験を生かして築く独自のポジション

ファーストサマーウイカが、現在バラエティ番組に引っ張りだことなっている。  それを証明するのが「2019年下半期・急上昇テレビ…

関連記事