米津玄師、椎名林檎とのっち、Number_i、NewJeans、ヨルシカ、マカロニえんぴつ……注目新譜6作をレビュー

New Releases In Focus

 毎週発表される新譜の中から注目作品をレビューしていく連載「New Releases In Focus」。今回は米津玄師「毎日」、椎名林檎とのっち「初KO勝ち」、Number_i「BON」、NewJeans「How Sweet」、ヨルシカ「ルバート」、マカロニえんぴつ「poole」の6作品をピックアップした。(編集部)

米津玄師「毎日」

 「ジョージア」のCMソングとして書き下ろされた新曲「毎日」は、〈毎日毎日毎日毎日 僕は僕なりに頑張ってきたのに〉という冒頭のフレーズが聴こえてきた瞬間、“これは自分のことだ”という強い共感を呼び起こす。Yaffleと共同で制作されたトラックは基本的にワンループで、まるで代わり映えのしない我々の日々のようでもあるが、起伏に富んだメロディラインによって気分は徐々に高揚し、聴き終わったときには“どうしようもない毎日だけど、ここで生きるしかない”というポジティブな力を与えてくれるはず。日本のエンターテインメントシーンを代表する存在でありながら、市井の人の目線に立って曲が書け、そこに説得力を持たせられるのも米津玄師が国民的アーティストたるゆえん。彼こそが現代の“ワーキング・クラス・ヒーロー”なのかもしれない、と思わせてくれるエンパワーメントソングだ。(森)

米津玄師 - 毎日 Kenshi Yonezu - Mainichi ( Every Day )

椎名林檎とのっち「初KO勝ち」

椎名林檎とのっち「初KO勝ち」

 椎名林檎のニューアルバム『放生会』には7名の歌姫が客演で参加しているが、「初KO勝ち」はPerfumeのっちとの共演。二人のビジュアルは簡単に浮かぶのに、どんな歌になるか予測できないのは、「我々はいまだかつてエフェクトを通していないのっちの歌声を知らない」からだと気づく。その意味でも非常にレアな体験だ。ファンクなギターに乗って聴こえてくる最初の歌唱がのっち。思った以上に透明で、なおかつ強い芯を感じる声である。どんどん扇情的に盛り上がる曲調、挑発的な言葉を散りばめた歌詞世界はまさに椎名の世界だが、のっちはがっぷり四つでそれと向き合う。ラスト近く、〈本気が観たい!〉と歌う声の切実さ、MVに見る表情の格好よさは鳥肌ものだ。(石井)

Number_i「BON」

Number_i「BON」

 『Coachella Valley Music and Arts Festival 2024』でのパフォーマンスで世界への第一歩を踏み出したNumber_iの新曲「BON」は、平野紫耀のプロデュースによる“和”テイスト満載の楽曲。分厚い低音を響かせるトラックに和的なメロディや三味線的な音色を加え、日本発のグループというイメージを全面に押し出している。〈この曲だって、お前が価値を決めるんだ〉とリスナーに挑むようなリリック、〈BON BON BON BON〉のリフレインによるキャッチーなフックもそうだが、彼らの現在のスタンスや姿勢が明確に示されていると言えるだろう。「GOAT」と同じく全編ラップによる構成ながら、親しみやすいポップネスを(おそらくは無意識のうちに)反映できることもこのグループの特徴。海外リスナーの反応にも注視したい。(森)

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アーティスト分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる