松下優也、時代を射抜くメッセージ “日本語”を大事にする理由と新曲「Ride It」を語る
2023年8月にアミューズに移籍して新たなスタートを切った松下優也が、5月31日にニューデジタルシングル「Ride It」をリリースした。同曲は、約16年間のアーティストとしての経験と俳優としての経験を持つ松下だからこそ表現できる、「同じ時代・社会を生き抜く人々に向けた応援歌」。久しぶりとなる新曲に対して、彼はどう向き合ってきたのだろうか。そして、現状をどう見ているのだろうか。本人にたっぷり語ってもらった。(高橋梓)
「誰と一緒に音楽を作るか」ということの重要性
ーーニューデジタルシングルのリリースおめでとうございます。まずは、今の率直な心境から教えてください。
松下優也(以下、松下):“久々の新曲”というよりも、“事務所移籍後1発目の音楽作品”という気持ちのほうが強いです。表に出ているのは僕だけですが、新たに作ったチームでの作品なので、思い入れのある曲になりました。
ーーやはり、チームが変わると心境的な変化があったりも?
松下:正直、僕自身はそんなに変わっていないのですが、環境の変化を楽しみたいという気持ちはあります。というのも、これまでキャリアを重ねてきたなかで、「誰と一緒に音楽を作るか」ということの重要性を感じているんですね。誰かと組むとアイデアが広がりますし、誰と組むかによってもアイデアが違ってきますし。なので今回の変化でも、今までやってきたことを大切にしながら、新しいものを受け入れていきたいと思っています。
ーー誰と一緒に音楽を作るかの重要性に気づいたのは、やはり“YOUYA”として活動されていた経験が大きそうです。
松下:そうですね。移籍する前に、YOUYAとして個人で活動していた期間が数年間あって。事務所スタッフのような動きも含めて個人でやっていたこともあって、アーティスト活動、俳優活動だけではなく、クリエイティブやマネジメントなどがより身近になったんです。表には“松下優也”という名前しか出ないですが、それと同じくらいチームのメンバーが大切だと思うようになりました。
ーーそういった経験を経て、リリースされるのが新曲「Ride It」です。「同じ時代・社会を生き抜く人々に向けた応援歌」とありますが、なぜこの方向性の楽曲になったのでしょうか。
松下:ここ数年、YOUYAとしてやっていた音楽はR&BやHIPHOPの要素が強かったんですね。環境の変化を経て、これからどういうビジョンで音楽活動をしていくかを考えていた時に、「自分が表現したい音楽はYOUYAでひとつの区切りがついたんじゃないか?」と思ったんです。個人でやっていたこともあって、やりたいことをやれていましたし。今回の「Ride It」でESME MORIさんと一緒に制作するにあたって、今の年齢の僕が、日本人としてアイデンティティがある僕が、何を表現していくのかをあらためて話し合った時に、「J-POPは大切にしたほうがいいんじゃないか」と。といっても、これまでずっとR&BやHIPHOPをやってきたわけですから、J-POPに振り切っても僕の場合はJ-POPにはなりきらないんですよね。その化学反応も面白いと思ったのが、この曲の始まりでした。
ーーこれまでの松下さんの楽曲を聴いてきた人間としては、意外な方向性でした。
松下:隣の芝は青く見える、みたいな部分もあったと思います(笑)。僕はこれまで韓国のプロデューサーと組む機会が多かったのですが、日本から見ると韓国の音楽って素晴らしく見えるじゃないですか。実際、素晴らしいですし。でも、韓国に行くとJ-POPがめっちゃ聴かれていたりもして。そういうJ-POPが作りたかったんです。
ーーなるほど。
松下:曲の内容としては、実はそもそも「応援歌」というテーマで書こうと思って書いたわけではないんですよ。先に曲をいただいて聴いたのですが、今の僕の年齢で歌詞を書くとしたらラブソングではないな、と。ラブソングにすると若くなりすぎちゃうなと思ったんです。僕と同世代の人たちは社会に出て12年くらい経つ頃だと思うのですが、後輩もそれなりにできてきて、先輩もいる――ちょうど中間くらいですよね。職種は違えど、僕と同じように閉塞感のようなものを感じているんじゃないかなと思っていて。僕も閉塞感を感じていた時期もあったので、そういう人たちが聴けるテーマにしようと考えました。なので応援ソングではあるのですが、「頑張れ!」というメッセージではなくて「頑張っているからこそ今日は辛いことを忘れよう」という曲です。
ーーそうなんです。新曲は応援歌だと伺ったあとに曲を拝聴したのですが、松下さん節がきいている応援ソングだな、と。
松下:そう。きっと僕と同じ世代を生き抜いてきた人たちはすでに頑張っていて、それは当たり前のことなんですよね。だから、「一旦頑張ることを忘れてバカになろうぜ!」という気持ちで作りました。僕もずっと仕事を頑張って閉塞感を感じることもあるけど、みんなでお酒を飲んだら一旦リセットできたり。意外と単純なことでまた頑張れるようになるから、そういう気持ちを込めたいな、と。
ーー応援歌というよりも、同世代に向けてのメッセージソング。
松下:うん、それが正しいかも。一昨年リリースした、プロデューサーのGRAYのビートで「21世紀少年 -21st Century Boy-」という曲が、まさに同世代に向けた楽曲で。知り合いや友達から「あの曲すごく好き」と言ってもらえた経験もあって、今回も等身大で書きたいと思ったんです。
ーー「21世紀少年 -21st Century Boy-」のテイストが受け継がれていたりも?
松下:直接的ではないですが、同世代からの「共感できる!」という反響が嬉しかったので、今回もそう言ってもらえるような歌詞を書こうという意識はあったかもしれません。それと、サウンド面も今はY2K系の流れになっているので、リリックもエモくしたくて〈平成〉というワードを入れました。曲調というよりも、リリックでY2Kを表現できないかと考えて出てきたのが〈平成の迷路〉というワード。まさに、僕ら世代は平成を生き抜いてきたわけじゃないですか。だからぴったりだなって。かといって、同世代だけに聴いてほしいわけではないのですが、表現のひとつとしてこういった形になりました。