2024.05.31 12:00

松下優也、時代を射抜くメッセージ　“日本語”を大事にする理由と新曲「Ride It」を語る

文・取材＝高橋梓、写真＝西村満

勉強できることが今は楽しい

ーー観客の方々も思いっきり楽しめそうです。そして、松下さんのこれまでを振り返るとソロデビュー、グループ活動、YOUYA、アミューズへ移籍という変遷を辿られています。この4つの時代を振り返って、アーティストとしてどんな変化を遂げてきたと分析されますか？

松下：正直に言うといいこともたくさんありましたが、苦しみもそれなりに多かったように感じます。これは主観の話ですけどね。でも、今までの活動を否定するわけでも、誰かに何かを思うわけでも決してなくて、これまでがあるから表現できるものがあると思っています。苦しみがないとアーティストとして、表現者として、届けられないこともあるはず。特にこの年齢になってから、苦しみをたくさん経験してきたことはまったく否定的なことではないと思うようになりました。

ーー逆に変わらないこともありそうです。

松下：たぶん僕のいちばん近しい人たちに聞いたら、「何も変わってない」と言われると思うんです（笑）。でも、少し外側にいる人たちには「すごく変わった」って言われるんですよ。アミューズに移籍するきっかけとなったスタッフさんがいるのですが、その方は僕が20代前半の頃からの知り合いで。僕、すっごくイメージ悪かったらしいんです（笑）。

ーーなぜ（笑）！？

松下：尖っていたからだと思います（笑）。でも、僕は尖っているつもりなんてなくて、めっちゃフラットなだけ。何も変わっていないつもりなんですよね。でも、唯一変わったと自分で思うのは、人とのコミュニケーションかな。若い頃はスタッフさんやチームをそこまで意識していなかったのですが、今はすごく大切に思っています。10代、20代の頃はがむしゃらになりすぎて、「自分が、自分が」になってしまっていました。でも、そうじゃなくなりましたね。

ーー視野が広がったのですね。

松下：そうですね。でもそのぶん、ある意味厳しくなっている部分もあるかもしれません。今は自分がチームの真ん中にいるとは思っていなくて。役者が“俳優部”と言われるくらい、舞台の世界はみんな横並びなんですよ。そんな環境でやってきたからこそ、分業として関わる人全員をプロとして見るようになりました。それは役者をやって気づけたこと。だからこそコミュニケーションをしっかり取りたいと思うようになりましたし、僕も人間らしくなったかなって（笑）。

ーーなるほど。

松下：あとは、歌やダンス、芝居など、芸事に対して丁寧になりましたね。若い頃はなんなら丁寧じゃないほうがかっこいいと思っていた時期があったくらい。ちょっと斜に構えるというか。でも、今はそれがなくなって一個一個を丁寧にやるようになりました。あとは何も変わっていません。

ーー役者の仕事とアーティストの仕事、それぞれいい影響があるのですね。以前インタビューをさせていただいた時に、役者は音楽の仕事、音楽は役者の仕事のインプットになっているとお話しされていたのを思い出しました。

松下：そうですね。松下優也として生まれたら“松下優也”を生きるしかないのですが、役者は他の人の人生を擬似的に体験できるわけじゃないですか。そうなった時に、松下優也だけだと書けない歌詞が書けるんですよ。松下優也の人生は、別に曲にすることなんてないですし（笑）。先日、ジョナサン・ジョースター（ミュージカル『ジョジョの奇妙な冒険ファントムブラッド』）を演じましたが、まさにあんな経験、普通はできないですよね。大切な人を失って、父親が死んで、最後には兄弟同然だったヤツを倒す、みたいな。そんな役を中身からちゃんと作って演じていくので、メンタル的にもテクニック的にも音楽に影響することはたくさんあります。逆に音楽から役者への影響もありますよ。大きなステージにひとりで立ってその場を持たせられるのは、明らかにアーティスト活動をやっているからできること。そういう相互作用は間違いなくありますね。

ーーいい相互作用ですね。

松下：そう考えると、いろいろな仕事、いろいろな人に影響をもらっています。あと、最近役者をやっていてよかったと思うのは、学校に行っている気分になれることなんです。僕はほとんど学校に行っていなかったので、勉強できることが今楽しくて。役って、本を読み解いて、自分の表現すべきものを勉強しながら作っていくんですね。それが面白い。この先もいろんな経験を活かして、いい音楽作品、いい舞台作品を作っていきたいです。

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