松本潤の独立を機に考える演出家としての功績 エンタメの可能性を広げたステージへの情熱
5月16日に嵐の松本潤が、5月30日をもってSTARTO ENTERTAINMENTから独立することを発表した。翌日には自身のInstagramも更新し、芸能界入りした10代の頃を振り返りながらファンやスタッフへの感謝のほか、この先の不安など正直な気持ちなどを含めながら新しい挑戦への決意を綴った。
松本といえば嵐のメンバーとしてだけでなく、俳優としてもドラマに映画と様々な作品に出演してきた。そして、ステージ演出にも多方面から絶大な信頼が寄せられていたことでも知られている。ご存知の通り、松本はドーム公演ではすっかりお馴染みのムービングステージの考案や、『ARASHI LIVE TOUR 2014 THE DIGITALIAN』でのFreFlow®(フリフラ/ペンライト等のLEDライト自動制御システム)の導入にはじまり、映画館で上演されたライブフィルム『ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM “Record of Memories”』にてコンサートディレクターを務めたりと、数々の演出を手がけてきた。
松本は、ステージ一面に広がる巨大モニターなど縦横無尽な発想で、大がかりな演出や革新的な挑戦を行ってきた。国民的アイドル・嵐ならではの取り組みであり、松本の様々な挑戦は後輩のステージへと受け継がれている。さらに、これらの演出はほかのアーティストのライブにも取り入れられるなど、日本のエンタメ全体におけるステージ演出の可能性を広げた立役者と言えるだろう。
また、演出家としての手腕を発揮したもののひとつが、2021年12月30日に東京ドームで開催され、同事務所所属の全14組のグループが出演したライブだ。松本は総合演出として総勢78名のタレントを束ねながら、同事務所としてはコロナ禍以降初、約2年ぶりの東京ドーム公演に挑戦した。
徹頭徹尾、滑らかな流れに乗せながら、各グループの特徴を捉えたパフォーマンスにはじまり、ファンの気持ちや解釈を深く理解したかのようなベストマッチなコラボレーションを打ち出した同公演。そのステージには驚きや納得感、そして満足感があり、コロナ禍でエンタメの楽しみを奪われたファンに向けて、これまでにない新しいイベントを届けた。さらに驚くのは、DVD・Blu-rayとしてパッケージ化した際に、その映像に対応するようにファンの持つペンライトが演出のひとつとなって映り、会場の熱気と興奮の瑞々しさを様々な方向から捉えた映像を通して再び感動を与えてくれたこと。同公演は、様々なグループが所属する事務所だからこそ実現したことであり、ファンとしても応援する醍醐味のひとつでもある。そんな面白さを損なわずに、音楽性やコンセプトやスタイルが異なるグループをまとめあげられたのは、松本自身が長年にわたってステージ制作の深部にいたからこそだろう。
アイデアが浮かんだとしても、それを企画し、形に落とし込み、成功に導くというのは容易ではない。自らアイドルとしてステージに立つ傍ら、発想を実現化するための労力を思うと、ステージにかける並々ならぬ情熱を感じずにはいられない。同時に、彼の実行力と、周囲からの信頼がいかに大きかったのかが伝わってくる。