『怪獣8号』主題歌で描かれる不条理な世界と希望 YUNGBLUD&OneRepublicが寄せる原作へのリスペクト

OneRepublic

 続いて、OneRepublicが書き下ろしたエンディングテーマ「Nobody」について。OneRepublicは、2002年結成、2007年にデビューを果たした6人組ポップ・ロックバンド。フロントマンのライアン・テダーは、テイラー・スウィフトやアデル、ビヨンセをはじめとしたトップアーティストへの楽曲提供を多数手掛けるトップランクのソングライターで、過去に3度グラミー賞を受賞、他にも数々の名だたるアーティストのプロデュースを手掛けている。バンドとしても「Counting Stars」をはじめとしたヒット曲を多数擁していて、近年では、2022年公開の映画『トップガン マーヴェリック』の挿入歌に起用された「I Ain’t Worried」がロングヒットを記録した。2023年3月の来日公演の盛況も記憶に新しく、今年の『SUMMER SONIC 2024』への出演もアナウンスされている。

アニメ『怪獣8号』ノンクレジットED|OneRepublic「Nobody」 

 「Nobody」は壮大なスケールの中で眩いポップフィーリングが鮮やかに弾ける高揚感に満ちた一曲で、オープニングテーマ「Abyss」とは対照的に、アニメの物語のポジティブサイドをフィーチャーしている。この曲と重なるエンディング映像は、防衛隊第3部隊オペレーターの小此木このみが、夕陽が窓から差し込む室内でパソコンに保存された写真データを振り返るもの。第3部隊のメンバーのプライベートな一面を写し出した写真たちは、過酷な戦いの合間に確かに存在するかけがえのない日常を切り取っていて、メンバー同士の深い絆が伝わってくるものも多い。それらの写真が、「Nobody」の明るさと切なさを兼ねた美しいメロディと合わせてディスプレイに映し出されていくことで、そうした日常の尊さがグッと浮き彫りになる。一方、それらの写真と合わせて映し出される怪獣の記録写真の数々は、彼らの日常が常に残酷で不条理な非日常と背中合わせであることを暗に伝えている。

 「Abyss」の中で歌われていたように、世界は残酷さや不条理で満ちているけれど、ライアン・テダーは、その世界を生きていく上での希望を見い出して「Nobody」の中に込めている。「Nobody」というタイトルについて、アニメ公式サイトのインタビュー映像の中で、ライアン・テダーは「私があなたを守る」「世界中どこを探しても私のようにあなたのためにいつもそこにいてくれる人は誰もいないよ」というメッセージを込めたと語っていた。〈身代わりになっても構わない 孤立無援に感じていたら そう、そして 起きて見張っているよ、一晩中 悪夢に呑み込まれないように〉というバースの一節は、怪獣と化した悩みを人知れず抱えるカフカに対して、市川レノをはじめとした仲間たちが寄せる温かな想いであると読むことができるし、同じ〈孤立無援〉という意味の言葉が用いられていた「Abyss」と合わせて聴くことで、絶望的な世界の中にある希望を確かに感じ取ることができる。

 繰り返しにはなるが、2曲とも、原作への深い理解とリスペクトに基づいて制作された素晴らしいテーマソングだ。これらの曲は、アニメ『怪獣8号』が今後海を越えて広まっていく上で、とても大きな役割を果たしていくことになると思う。特に英語圏においては、これらの曲の歌詞を一つのきっかけとして、アニメに興味を持ったり、物語の理解度を深めたりする人も多いはず。その意味で、「日本のアニメ×海外アーティストの書き下ろしテーマソング」という座組みに改めて大きな可能性を感じるし、今後のムーブメントの動向に引き続き注目していきたい。

■リリース情報
YUNGBLUD「Abyss」(『怪獣8号』OPテーマ)
配信中:https://umj.lnk.to/YB_AbyssSR

OneRepublic「Nobody」(『怪獣8号』EDテーマ)
配信中:https://umj.lnk.to/ORNBK8SR

■アニメ情報
アニメ『怪獣8号』
4月13日より毎週土曜23:00~
テレ東系列ほかにて放送/Xにて全世界リアルタイム配信中
各種動画配信サービスにて23:30より順次配信開始

公式サイト:https://kaiju-no8.net
公式X:kaijuno8_o
Official English X for Anime:kaijuno8_o_en
作品公式TikTok:kaijuno8_o
作品公式Instagram:kaijuno8_pr

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