ポケモン×VOCALOID コラボ続出の理由 ネタ被りや多様な解釈への寛容性が共通項に?

 近年熱い注目を集めるネット発ミュージックジャンルとして、今や一大勢力を築くVOCALOID。シーンの勢いはまさに盤石だが、その中でもまた一段とVOCALOIDカルチャーの大衆認知の拡大が推し進められているようにも感じられる。その象徴的な出来事のひとつが、今や世界的コンテンツである『ポケットモンスター』シリーズ(以下、ポケモン)との様々なコラボレーション企画だ。

 ゲーム・アニメほか多角的なメディア展開でワールドワイドな人気を獲得しているポケモンとVOCALOIDのタッグとして、最近話題になったのは、やはり『ポケモン feat. 初音ミク Project VOLTAGE 18 Types/Songs』(以下、『Project VOLTAGE』)だろう。

 初音ミク16歳の誕生日である昨年8月31日に情報が解禁され、「ポケミク」の通称で親しまれている本プロジェクト。その目玉はポケモンに登場する“18タイプ”になぞらえた、“18人”のクリエイターによる楽曲投稿企画である。

 招集された面々の豪華さももちろんだが、やはりリスナーを楽しませたのは、続々と発表される楽曲の多彩さだ。ポケモンに関する事象を主題とし、共通のテーマは「ポケモン feat. 初音ミク」であること、かつコンテンツのゲームBGM・SEをサンプリングする。そんなユニークなレギュレーションの下で制作された楽曲群では、結果として「ポケモンというコンテンツのどこを切り取るか」が面白いほどに多様化して露わになった。

 コンテンツ全体への解釈や憧憬を下地とした、ピノキオピー「ポケットのモンスター」やいよわ「たびのまえ、たびのあと」。クリエイター本人が個人的に思い入れのあるポケモンをピックアップしたOrangestar「Encounter」やまらしぃ「むげんのチケット」。ポケモンの“タイプ”に焦点を絞った、稲葉曇「電気予報」やナユタン星人「エスパーエスパー」。“わざ”を主体にした傘村トータ「きみとそらをとぶ」やかいりきベア「メロメロイド」。あるいはお馴染みのロケット団、チャンピオンなどの要素を主題にした、八王子P「PARTY ROCK ETERNITY」やEve「Glorious Day」といった曲もある。

ピノキオピー - ポケットのモンスター feat. 初音ミク / The Pokémon Inside My Heart
Orangestar - Encounter (Official Video) feat. 初音ミク
稲葉曇『電気予報』feat. 初音ミク

 クリエイターごとに、まさしく千差万別なポケモンの魅力が切り取られた楽曲たち。その幅広さも、リアルタイムで情報を追っていたリスナーに「次はどんな作品が来るのか」と、良い意味で予想のつかないワクワクを与えていた。

 またこれ以外にも、直近でポケモン×VOCALOIDのタッグは様々な形で大勢のファンを楽しませている。ボカロPとしても活動するAyaseがコンポーザーを務めるYOASOBIによる楽曲「Biri-Biri」もそのうちのひとつと言っていい。

 『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』発売1周年を記念し、パルデア地方の旅をテーマが描かれた武田綾乃による小説『きみと雨上がりを』を原作とした本曲。昨年11月にYouTubeで公開されたMVは2000万回再生に迫る(4月12日現在)。今後のユニット人気を背負うアンセムへと今まさに進化している最中と言える。

YOASOBI「Biri-Biri」 Official Music Video

 さらに同コンテンツでも、近年特に注目を集めているポケモンカードゲーム。定期的に制作されるゲームのルールソングの最新曲「スカーレット&バイオレット編」も『Project VOLTAGE』に引き続き、栗山夕璃が作編曲を担当。歌唱を務める96猫・そらるも、両名共にVOCALOIDカルチャーと縁の深い“歌い手”出身のシンガーだ。

【公式】ポケモンカードゲームルールソング スカーレット&バイオレット編

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