THE STREET SLIDERS、40周年再始動を総括 後続バンドに影響を与え続けるロックへの真摯な思い

 昨年5月3日、22年ぶりに集結し日本武道館のステージに立ったTHE STREET SLIDERS。八角型の会場の座席は3階まで360度オーディエンスで埋まり、その熱気溢れるライブはWOWOWで生中継された。その後も全国ツアーを行いファンを喜ばせてきたが、この4月6日には『THE STREET SLIDERS 40th Anniversary Final Special GIG「enjoy the moment」』と銘打って、1985年以来の日比谷野外音楽堂でライブを行う。これは3月から始まった全国ツアー『40th Anniversary FINAL TOUR「Thank You!」』のスペシャル・ギグ。彼らに熱い想いを送ってきたファンに彼らからの素敵なサプライズである。このライブもWOWOWで生中継されることが発表された。

 活動休止あるいは解散を宣言したバンドが活動を再開し話題になることはよくあるが、THE STREET SLIDERSほど驚きをもって再集結を迎えられ、ツアーや作品のリリースが話題になったバンドはいないのではないかと思う。“孤高”のバンドというイメージ通り、寡黙に音楽と向き合い、何ものにも媚びることなく自分たちの楽曲を届けてきた歴史があるからこそ、4人が集まればそれだけで空白を超えて時が動き出す。活動再開を記念して制作された『On The Street Again -Tribute & Origin-』は、オリジナル音源と彼らをリスペクトするアーティストたちによるカバーが話題となり、アナログ12インチ・シングルの再発、CDでリリースされた作品の初アナログ化、初期のアナログ盤のリマスター&リイシューと彼らの足跡が蘇り、さらにそれがツアーによって未来へと繋がっていく。この1年、そんな奇跡を目の当たりにした思いがする。

 THE STREET SLIDERSは、村越“HARRY”弘明(Vo/Gt)、土屋“蘭丸”公平(Gt/Vo)、市川“James”洋二(Ba/Vo)、鈴木“ZUZU”将雄(Dr)の4人が、1980年に揃ったところから始まる。地元のライブハウスなどで活動するうちに”リトル・ストーンズ”の異名を取るほどになり、デビューのチャンスを掴んで1983年にメジャーデビューした。もちろんこの1文で語れない苦労もあったが、前述の異名通りThe Rolling Stonesの血を受け継いだ如き硬派で華やかなロックバンドとして注目を集めていく。時代はシティポップ黎明期でありパンク/ニューウェイヴが胎動して流れが変わろうとしていたが、彼らの無骨なまでにリアルなロックを求める音楽ファンも多かった。精力的なツアーと順調なアルバムリリースが続き、初の日本武道館公演は1987年。だがその年に鈴木が交通事故で負傷し止む無く活動休止。村越と土屋は、それ以前から名乗っていたソングライターチーム「JOY POPS」の名でアコースティック・ライブを行なった。このユニットは2000年代に何度か復活し作品もリリースしている。1988年にTHE STREET SLIDERSは活動を再開、以前に比べライブは少なくなったが2000年のラストライブまで不動の人気を保っていた。

 その余韻は今も続いているし、再集結でさらに大きく鳴り響いている。その理由を考えると、4人はロックバンドとして最も重要なことを全く無駄なく実現しているからだろう。The Rolling StonesのKeith Richardsをリスペクトし彼に倣って5弦のギターを弾く村越、Jimi Hendrixや B.B.Kingを始め多くのブルーズマンに影響を受けてきた土屋、ロックンロールやブルースに傾倒してきた市川と鈴木、この4人が鳴らす音は最初からブレがなかった。軽はずみに流行に乗ったり大人の甘言になびかない、音からも感じられるそんな芯の強さも彼らの音と出会った人は圧倒されるのだ。

 さらに重要なのは村越の書く曲が、ロックのマナーに則りながら日本語の歌にしか成し得ない光景や情景を描き出すことだ。例えば1stシングルのカップリング曲「のら犬にさえなれない」は〈最後のコインは何に使うのさ〉と問いかけ、〈空は晴れてるのに雨が降ってる〉と心情を表す。残っていないものはコインだけではないから、のら犬にもなれない。そんな物語を4分半で歌うのだ。浮かれた恋心だの別れた悲しみを陳腐な言葉で歌う凡庸な曲にはない上質な聴き応えがこの曲にはある。彼の曲にはいずれも同様の質感があるが、それは村越が持つ価値観が明確だからだろう。それを彼自身が歌うことでリアルな物語として伝わってくる。それを3人のメンバーが十分に理解し共有しているから、バンドとして説得力のある演奏になり楽曲として記録されてきたのだ。

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