柏木由紀「今のAKB48が最強で最高」 黎明期から現在までのグループの歴史を総括した卒業コンサート

柏木由紀、卒業コンサートレポ

 かつて柏木がセンターを務めていたユニット・チームPBの「遠距離ポスター」では、柏木とともにオリジナルのメンバーだった宮澤と高城も加わり、グループが生み出してきた派生ユニットのバリエーションや楽曲の豊かさを知らしめる。さらには、そのチームPBの対抗ユニット・チームYJの「Choose me!」へと続くが、ここで同ユニットのオリジナルメンバーでもあった指原莉乃と峯岸みなみが登場し、柏木を加えて3人で同曲を歌い上げる。常にグループの歩みの中にいた柏木を磁場にして、AKB48の歴史をつづってきた人物たちが次々と舞台上に召喚されていくその景色は、今なお柏木自身が際立った表現力を持ち、現在形のアイドルとして存在し続けているからこそ意義深い。このような仕方で過去と今日とを接続できるアイドルは、彼女をおいて他にいない。

 コンサート本編最終ブロックは「ジワるDAYS」に始まり、柏木がセンターに立っての「フライングゲット」、観客に撮影可能タイムが設けられた「君と虹と太陽と」「10年桜」と続く。また、柏木がWセンターを務めたシングル表題曲「Green Flash」では、もう一人のセンターであった小嶋陽菜がステージ奥から登場してともに歌唱し、コンサートの終盤にさらなる山場を作ってみせた。そして、グループの最新シングルにして柏木初の単独センターとなる表題曲「カラコンウインク」でコンサート本編は締めくくられる。

 アンコールでは、多くの花があしらわれた淡いピンクの卒業ドレスをまとい、ここまでの歩みを振り返りながら、多くの人々への感謝を口にした柏木。「どの時代もその時のAKB48が一番だと思ってやってきたし、今のAKB48が最強で最高だと心の底から思っています」「私にとってAKB48は人生そのもの」と語る言葉からは、アイドルシーンの基盤として存在してきたグループとともにキャリアを築いてきた人物の実感と矜持がうかがえる。

 そして、卒業ソロ曲「最後の最後まで」を歌唱すると、柏木の号令のもとに集まったのは、浦野一美、片山陽加、菊地あやか、田名部生来、仲川遥香、仲谷明香、平嶋夏海の初代チームBメンバーたち。恒例の円陣とともにチームBの象徴的楽曲「初日」をパフォーマンス、さらに現役メンバーたちも合流して「約束よ」を歌い上げる。

 その後、柏木と現役メンバー、さらには出演したOGメンバーが全員参加しての「桜の花びらたち」で、アンコールはクライマックスを迎える。現役でグループを支えるメンバーたちと、かつてグループの歴史を刻んだのちそれぞれの道を歩くOGたちが、AKB48の原点でもある同曲によって一つに繋がり、その全員と活動をともにした柏木がすべての結節点として中心に立つ。グループ初期から今日までのAKB48史が、ステージ上に一気に現出したような瞬間となった。

 ルーツとしての劇場公演曲から世間的なメガヒット楽曲、さまざまな特徴や文脈をもつユニット、組閣・兼任等のダイナミズムから生まれた作品など、柏木のキャリアをたどったこの日のコンサートは同時に、紆余曲折を経ながら長い年月を重ねるAKB48グループそのものの諸側面を映し出すものとなった。それも、幅広い楽曲群を乗りこなし表現を楽しんでみせる柏木の個性によって、AKB48が本来こんなにも豊かで可能性に満ちているのだという基本を思い起こさせる、実り多い時間であった。アンコールの最後には、再び「遠距離ポスター」を全員で披露、アイドルという表現の魅力をあくまでも軽快に伝えきって、柏木由紀は自らの卒業コンサートを締めくくった。

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