『ギタージャンボリー』、Eggsとのタッグで取り組んだオーディションで見えたもの 藤田琢己が語るアーティストへの思い

Eggsを通していろいろな人と出会える場を提供できた

――そして、そんな『ギタージャンボリー』の独特の空気の中、「新弟子検査」で選ばれた2人のアーティストもステージに立ちました。こうしたオーディションをやることになったのはどうしてですか?

藤田:もともとオーディションは2022年からやっていて、それを僕が今回引き継いだ形なんです。ギターの弾き語りというのは知名度に関係なく実力や人間性が出てしまうものなので、若くてキャリアがなくても、実力があって、「これから伸びていく自分を見てほしい」という気持ちがあればすごいエネルギーを感じるライブができるんです。そういうアーティストをサポートしてあげたいっていう思いはありました。『ギタージャンボリー』ではオーディションをやる前からオープニングアクトを新しいアーティストにやってもらっているんですけど、それも同じ思いで続けています。

 たとえば大橋ちっぽけくんはオープニングアクトから出てきたんですよ。当時僕が彼の存在を知って、すごくいいからぜひ聴いてほしいって、『ギタージャンボリー』のプロデューサーに音源を手渡したのがきっかけだったんです。これをきっかけに次のステップに向かうアーティストも出てきてほしいというのはずっとあったので、それをさらに加速させていこうと。僕自身もずっとJ-WAVEで若手を応援する番組をやっていたので、僕がやらせてもらえるなら、もっともっといろんな人たちにチャンスを与えたいし、そこから出てきた人をもっともっとたくさんの人に聴いてほしいという思いで今回はオーディションを開催しました。

――今回は初めてEggsがパートナーとして関わってオーディションが行われたわけですけど、それはどういう経緯だったんですか?

藤田:経緯は単純なんです。コロナ禍が明けて、僕もライブの現場に昔のように足しげく通えるようになって。その現場でEggsの方にお会いしたんです。そこで「実はこういうことを考えているんだけれども、一緒に何かできないか」っていう話をさせていただいたのがきっかけでした。もともとEggsにはお世話になった方もいらっしゃって、どういう思いでアーティストの活動を支援しているかという理念は何年も前から知っていたんですよ。それは我々がオーディションをやる趣旨とも共通するので、協力していただけるならEggsさんと一緒にやりたいと思っていたんです。

――今回Eggsとタッグを組むことで、どんな効果があったと思いますか?

藤田:これまではJ-WAVE単独でオーディションを行っていたので、J-WAVEを聴いてくれているアーティストの方から応募してもらうという感じだったんです。今回はそれに加えてより幅広く、いろいろな人たちに情報が届いたなという印象があります。オーディションに実際に参加してくれた方の音源を聴いたり、プロフィールを見させてもらったりしているときからそれは感じていました。我々としてもこの『ギタージャンボリー』をいろいろな人に知ってほしいっていう思いがあるので、それはよかったですね。

――入り口が広がった?

藤田:うん、広がりましたね。今回エントリーが500組を超えたので、多くの方に興味を持っていただけたんだなと思っています。

――その応募音源をもちろん全部チェックして、選考していったわけですよね。

藤田:はい。Eggsの方と全部聴かせていただきました。年齢もジャンルもバラバラでしたね。数が多い分、そこから選んでいくというのはとても難しい作業でした。

――藤田さんの中ではどんな視点をもって選考をしていきましたか?

藤田:もしかしたら他のオーディションと違うんじゃないかと思うのは、実際にセンターステージに立って、ギターと自分だけで歌っていただくわけです。繰り返しになっちゃいますけど、ギミックが通用しない場所でのライブというのが不動のゴールとしてあるので、それに耐えうる人なのかどうかというのが絶対条件なんですよね。なので、必ず最終審査はライブ審査を行って生歌を歌ってもらうんです。歌が上手いだけでも、ギターが上手いだけでもダメだし。実際に国技館の客席にぐるりと囲まれたステージでどんな状況で歌うのかというのもイメージしながら見ていきました。でも一方で、はちゃめちゃに勢いがあればそれでいいのかっていうと、そういうわけでもないんです。声が大きい、小さいではなく、言葉や思いがしっかりと残る人がいいなと思って、最終的に今回のおふたりということになりました。

――最終審査は生配信も行われました。あれもカメラがあってマイクがあって、そこで「はい、歌って」っていう、アーティストにとっては相当緊張するシチュエーションだったんじゃないかと思うんですけど。

藤田:これまでどんなタイプのオーディションを皆さんが受けてきたのかは分からないんですけど、今回はJ-WAVEの会議室でやったんです。審査員がいて、その前でちょっと歌ってみてみたいな感じかなと思ったら、バッチバチのでっかいライトがふたつセットしてあったので、みんな面食らってたかもしれないですね(笑)。音もフルセットで、普段番組のスタジオで生演奏してもらったりするのと同じセッティングで作ってもらったので。

――確かに音はすごくよかった印象があります。

藤田:僕がずっと「巨匠」と呼んでいる技術さんに協力してもらったんです。以前やっていた番組でも、その方に音を作ってもらって生演奏をやったりすると、リスナーから「音がいい」っていう反響がすごくあるような方で。そこは全幅の信頼をおいてお願いしました。もう、J-WAVEクオリティでやらせていただきましたね。

――そんな最終審査を経て、大東まみさんと灯燈あかさんが『ギタージャンボリー』に出演したわけですが、おふたりの魅力がどんなところにあると感じましたか?

藤田:どちらも弾き語りの女性アーティストなので一括りにされてしまうかもしれないんですけど、大東さんは心情の機微みたいな部分を表現するのがすごくうまいなと思いました。それはただ歌詞がいいというだけじゃなくて、印象が残るフレーズを印象が残る譜割で、スッと置く感じ。聴いてくれる相手に言葉を喰らわせるのではなく、うまい具合にその言葉がフッと残るように歌うんです。力技じゃないんですよ。だから歌の力、声量だったりディーヴァ感みたいなものはもしかしたら他の人の方があるのかもしれないけど、思いと言葉を残していくっていうところにおいては、彼女の歌い方と歌、それから歌詞は力を持っていたなと思いました。

 灯燈さんは等身大の歌詞がすごく印象的で、その歌詞をリピートすることによって印象づけていくんです。まだリリース前の新曲をやってくれたんですけど、あの場で、ほとんどの方にとって今初めて聴いた曲でもこの部分はちゃんと覚えて帰ってくれるだろうっていう、自分の楽曲に対する自信があるんだろうなと思って。そうやって楽曲の強さを信じて、実際に印象に残るフレーズをしっかりと残していく。自分のアピールポイントをちゃんとわかってるんだなと感じました。

――実際、本番当日のおふたりの様子は藤田さんから観ていてどんな感じでしたか?

藤田:「緊張している」とおふたりとも言っていたんですけど、もっと縮こまっちゃうのかなと思ったら、いやいやどうして、存分に自分の表現をしていました。2日目の灯燈さんは歌う前にあまりに堂々と語り始めるので、もう余裕じゃんみたいな(笑)。本人は「緊張してたんで逆にちょっと喋っちゃいました」みたいなことを言ってたんですけど、そんなことないな、堂々としてたなと思って。幕間でお客さんもあったまっているタイミングだったので、拍手のリアクションもあって、そこに対する手応えはふたりともあったんじゃないかと思います。いい空気で演奏してくれました。

――でも、幕間という名称の通り、イベントの合間、休憩時間に出てきて、しかも1曲だけ歌って帰るというのは、かなり緊張するシチュエーションですよね。

藤田:1曲しか演奏させてあげられないのは心苦しいといえば心苦しいんですけど、そのぶん本当に1曲入魂の意気込みというか、そこで最大限全部伝わる方法は何かって考えてくれたと思うので。それはちゃんと届いたなっていう感覚があります。でも彼女たちには他にもいい曲があるんですよ。

――ああ、そうやって気になって、他の曲も聴いてみようというときにEggsのプラットフォームとつながっているというのも今回こうしてタッグを組んだメリットですよね。

藤田:そうなんです。Eggsのページに行くとそのアーティストさんの他の曲も聴けるっていうのは去年まではなかったことですし、Eggsさんとやってるからこそ、審査中にもJ-WAVEのスタッフにも楽曲を聴いてもらうことができた。Eggsというインターフェースを通して今年は1次審査通過アーティストの「リスナー投票」も実施できたので、いろいろな人と出会える場を提供できたっていうのはすごく大きいと思います。

――今回オーディションであのステージを経験したおふたりがここから羽ばたいていくという流れになればいいですよね。

藤田:そしてまた『ギタージャンボリー』に帰ってくる。それで「あのときは緊張したんですよ」とか「1曲しかやらせてもらえなかったんですよ」とか話してもらえたら。それが一番の理想ですね。

――楽しみです。これからの『ギタージャンボリー』についてはどんな展望をもっていますか?

藤田:毎年やっぱり課題はありますし、毎年観たいなと思うアーティストもいるし、このアーティストの弾き語りはどんな化学反応を生むんだろうっていう想像もありますし。同じラインナップで来年やってもまた違う楽しさがあるとは思うんですけど、でもいろいろな人たちに出てもらいたいなっていうのも同時にあって。それこそ過去には布袋寅泰さんが出てくださったこともあるんですよ。布袋さん、エレキじゃないんですか? みたいな(笑)。でもやっぱりあのテクニックはどのギターを弾かせても超一流なんだっていうのを改めて皆さんに知ってもらえた。毎回たくさんの方に出てもらっていますけど、弾き語りとはいえ一人ひとり全然違うパフォーマンスを見せてくれるので、「弾き語りってこんな幅広くて奥が深いんだ」っていうのを感じていただける場にしていけたらと思っています。

――弾き語りって、もちろん奥深さもありつつ、同時に身軽さもあるじゃないですか。そういう意味ではオーディションなどでもいろいろな人にチャンスがあるなと思います。

藤田:そうですね。あと、弾き語りって自分で努力しないと上手くなれないんですよ。だからやればやるほど上手くなっていく。上達していく自分にも出会えるんです。今回Eggsで応募してくれた人の中にも、弾き語りを始めて間もないですっていう人もいたんです。これは磨けば絶対にいい歌、いい演奏になるなと思う人もいっぱいいたので、またこういう機会があったら応募してもらいたいし、去年より全然変わったんですよっていうのを聴かせてもらえたら、それも1リスナーとして楽しみです。実際にステージに立ったのはふたりですけど、出会いは無限というか、僕らもいろいろな人に出会えるし、このオーディションを通じてみなさんにも聴いてもらえるようにEggsさんに仕立ててもらっているので。そういう出会いの場が毎年用意できたらなっていうのは特に思っていますね。

――今年終わったばかりで来年の話をするのも変ですけど、来年もオーディションは――。

藤田:そのときは、ぜひEggsさんにお願いしたいと思っています(笑)。あと、これは個人的なことなんですけど、僕がライフワークのようにやっている、アーティストたちを応援していくということも『ギタージャンボリー』を通してやっていきたいですね。ずっと応援し続けていくことで、大きなものに変わっていく瞬間を僕はびっくりするほど見てきているので、Eggsで楽曲を発表して、夢を見ているアーティストたちが『ギタージャンボリー』という大きなステージに立つというのもそうですけど、そういうアーティストをずっと応援し続けていく幸せやそのアーティストが大きくステップアップする瞬間も伝えていきたいなと思います。オーディションが点で終わるのではなく、線に変わっていくきっかけになるといいなと。そういう意味では今回、去年のオーディションでグランプリを獲ったふたり(日菜、滝沢ジョー)も招待したんですよ。そういう繋がりを僕は大事にしていきたいので、個人的に連絡をして、観に来てもらいました。

――まさに点を線にしていくということですね。

藤田:そういうことも関係値としてやっていきたいなって思っています。

――次回開催されると、『ギタージャンボリー』はちょうど10回目の節目ということになります。その線がよりはっきりと見えるものになるかもしれないですね。

藤田:これまでお世話になってきたアーティストだけで30組くらいになりそうなので、どうしようかなと思うんですが(笑)。本当にいろいろな方に支えられているので、その関係を続けていきたいですね。

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