THE BACK HORN「25年経って今が最高だと思ってる」 ライブ音源から振り返る変化と広がり
「『つまんなくなってないか?』って昔の自分に言われてる感じもある」(山田)
ーーこうして具体的な音源で自分たちを俯瞰して見ることで、自分たちの成長といったものを一番感じるんですね。
松田:その視点で見ると、こういう演奏でこそ聴かせられる楽曲の良さもあるんだと思えて。ライブだとギター1本だし、その時のみんなの思いを感じながら演奏していくんで、そのテイク、そのライブっていうのを音源で感じられるのがすごくいいなと、栄純は言ってましたね。ずっと何回も何回もその曲を演奏してきた。でもその曲が生まれたのは2000年代前半とか、自分たちが20代の頃で。
山田:20代かぁ~。
松田:まあ、「カラス」とかは10代ですからね。
山田:10代の(書く)曲じゃないけどね(苦笑)。
ーーインディーズ時代の曲が入っているのはファンとしては嬉しいことだし、それを今のTHE BACK HORNが演奏するとまた新たなイメージが生まれます。こうして並べて聴くと、インディーズ時代の曲の方が渋めというか、歌詞も難しいことを考えて書いているような感じです。
松田:やっと自分たちが10代の自分たちの曲に追いついてきた(笑)。これはなかなかバンドとして珍しいと思います。10代が一番老けてた。もっと年取りたかった感覚でいたような気がしますね、あの当時の栄純とか将司は。大人に対する憧れと敵意。
山田:何考えてたんだろうね。憧れもあるから敵意もあった。
松田:「比べられたくない、早く俺たちもあの場所に行ければ」という気持ちも混ざっていたと思う。そういう思いで生まれてきた楽曲には、背伸びじゃないけど、そういう部分が入ってきていて。で、いろいろ経験して味わってきた自分たちが、今その楽曲にフィットしていくというのは必然的なことかなと思います。
ーー自分たちは目の前の大人たちとは違うんだみたいな気負いもあり、誰かが作ってきたものとは違うものを作るんだというすごい意欲がある。そこらへんで流行ってるチャラい曲じゃないものを自分たちはやってるんだという決意表明みたいなものがはっきり出ている。
松田:本当そうですね。オリジナルってなんだ? 誰もやったことないものをやればやるほど自分たちらしさなんだ、っていう感覚がすごく強かったんで。
山田:『マニアックヘブン』とかで古い曲をやったりしてきたこともデカい。それこそ気持ちが先行して作ってたあの当時の曲たちを、ほぼほぼ年1で振り返る。そこで「お前らつまんなくなってないか?」って、昔の自分に言われてる感じもあって。
松田:注ぎ込んでいた思いとか感情とかとは別に、楽しみながら作り上げてた部分もある。ハチャメチャだけど、当時はこんな面白いことをやりたがっていたんだなというのは、『マニアックヘブン』でどの曲やろうかってスタジオでやってると、毎回感じるところ。
山田:なんでこの展開なんだろうかとか(笑)。いびつだけどすごい。絶対あの時じゃないとできない。
松田:当時のメンバーからしたら、「Running Away」とか「ユートピア」とか、こういう建設的な曲が入ってくるというのも想像できなかったと思う。一方で、そういう豊かなソングライティングになってきてる今がいいというのもあって。それは、Disc1の「心臓が止まるまでは」「ユートピア」に象徴されてる。
ーー25年前のTHE BACK HORNなら許さなかったみたいなことも、バンドの進化の証としてここに記録されている感じでしょうか。
山田:そうですね。「なんで機械に頼ってんだ」とか、作った栄純が一番言ってそう(笑)。
松田:ピアノとかストリングスとか、メンバー以外の音を取り入れたのとか、「グローリア」でバグパイプの音流したりとか、同期的なものを入れてきたこととかね。でも「最後に残るもの」は、もう一度原点に戻ってメンバーだけで演奏した楽曲。
ーーその曲がバンドにとっての起点でもあるライブハウスでの録音というのも象徴的ですね。
松田:この曲のメッセージと、あとミドルテンポのサウンドだというのも大きいです。一昨年、ツアー前に1曲作ろうかみたいな話をした時に、栄純が「じゃあ俺ちょっと探ってみるわ」って言ってたんだよね。「アッパーな曲が続いてきて、それがTHE BACK HORNの代名詞になってるけど、俺ら振り返ってみると『冬のミルク』みたいな、ああいうミディアムで切ないところから始まってきたと何となく感じてて」みたいな話をしていて。「最近のバックのサウンドはロックでがっつりきてるけど、そういうミディアムでメロディは切なかったり、じんわり響いてきたりするのができたら確かに良いかもね」って話になったんです。それで、今だからこそ生まれた新しい楽曲だなという感じがすごくしますね。
ーー確かに「最後に残るもの」は言葉が穏やかだったりメロディも親しみやすかったり、栄純さんの新境地を感じる曲ですよね。
松田:今言ったようなことは、あまり考えたことなかったって言ってた。栄純って、THE BACK HORNの中では半歩先に行く音楽とかメッセージみたいなことを考えてて。引っ張っていくみたいな。
山田:THE BACK HORNの中での自分の役割みたいなね。だからネクストステージをいつも考えてる。俺もびっくりしたもん、栄純が「冬のミルク」みたいな感じの曲、狙っていくわみたいなことを言ってて。栄純からそれが出るんだって。「昔作った曲みたいな」とか、絶対そういうこと言わないもん。だから、なんかすごい熱いものがあるんだなって。栄純の中で、研磨して、最後に残ったものがこの曲のメロディであり歌詞なんだなと思いましたね。ちょっと恥ずかしいぐらい、言葉がピカピカだなって最初は思った。
松田:「Days」が将司と俺で、25周年を意識して書いた曲だったので、栄純もその流れで、自分と向き合う曲をここで書いてみるのもアリかなという感覚だったと思います。だけど、サウンド的には原点に帰って、バンドだけの演奏で、ミディアムでがっつりロックなサウンドだけどメロディが切なくて沁みてくるーーそこでまた新しいものを作れたという手応えはあったんだと思います。
「いろいろ経験してきたから、昔が良かったなという感覚は全然ない」(松田)
ーーTHE BACK HORNにとって、この25年はどういうものでした?
山田:この質問、一番難しい(苦笑)。足並みをそろえていく時期だったのかなと思いますね。そういう感覚がある。みんな大人になってきた感覚もあるし、このバンドが存在する意味もそれぞれ感じていて。わかんないですけど、また面白いものをインディーズみたいな感じで作り始めるかもしれないし。どっちもできるからこそ、今バンドの土台が固まってるのかなと。
松田:人間誰しも生きてる限り止まっている人はいなくて、どんどん変わっていく。変わっていくことにネガティブになってしまう時期もあるんですけど、その中でいろいろ経験してきたから、今のバンドの音がいいなと実感できていて。この25年、いろいろあったけど続けてこれたよさが、今ここで感じられているのが大きい。昔が良かったなとか、もうあの頃に戻れないという感覚は全然ない。さっきおっしゃってくれたように、インディーズの頃の方が大人びていたみたいな、それも含めて、そういう風に思える今で良かったなと思う。先を考えるのが苦手なバンドなんで(笑)。
山田:バンドの夢とか、いつも答えられない(笑)。普通に、いい曲作っていいライブやっていくっていう。
ーー(笑)。その時その時の燃え尽き症候群みたいなライブも魅力ですから。この25曲を聴いても、どの曲も全力で演奏して歌ってて、もしもライブをこの曲順でやったら死にますよぐらいな熱量です。
山田:俺も心配(笑)。でも気持ちは常に前向きなんで、歌も1つの楽器として、違う鳴りようで上げられると自分でも信じてます。THE BACK HORNの持ってる根っこの部分には、いろんな表現の仕方があるから。そこを自分の今のフィジカルと照らし合わせて、うまく表現していければいいと思います。先駆者たちは、みんなそうやってきてるんですもんね。
ーー25周年の締めくくりとして、パシフィコ横浜のライブが待っています。この会場でのライブは初めてですよね?
松田:実はTHE BACK HORNは横浜と何かと縁があって。2006年に赤レンガ倉庫で『フリーライブ~路上弾き叫びの旅 番外編』をやったり、今はないけど横浜BLITZでやったり、神奈川県民ホールもやったことあるし。25周年で会場を探していく中で、パシフィコ横浜がいいなと。新しい場所から新たな一歩を踏み出す感じもあるし、ここがまたホームになっていったらいいなとも思っています。
■リリース情報
ライブセレクションアルバム『25th LIVE SELECTION』
[Digital Edition]
2023年12月17日(日)配信リリース
ダウンロード/ストリーミング:https://jvcmusic.lnk.to/TBH_25thLiveSelection
<収録曲>
01. サニー (Live at 日本武道館 2019.2.8)
02. 涙がこぼれたら (Live at Zepp Tokyo 2014.7.10)
03. 光の結晶 (Live at 渋谷公会堂 2015.4.30)
04. コバルトブルー (Live at 中野サンプラザ 2016.12.8)
05. ブラックホールバースデイ (Live at 日本武道館 2019.2.8)
06. 美しい名前 (Live at 日比谷野外音楽堂 2017.10.21)
07. 罠 (Live at 日本武道館 2019.2.8)
08. 閉ざされた世界 (Live at 中野サンプラザ 2016.12.8)
09. シンフォニア (Live at STUDIO COAST 2021.3.4)
10. コワレモノ (Live at 日比谷野外音楽堂 2017.10.21)
11. 悪人 (Live at 中野サンプラザ 2016.12.8) ※w/Strings
12. Running Away (Live at 日本武道館 2019.2.8)
13. 心臓が止まるまでは (Live at STUDIO COAST 2021.3.4)
14. ユートピア (Live at EIGHT HALL 2022.7.30)
[Package Edition]
2024年3月27日(水)CD発売 ¥3,000(税込)
購入:https://victor-store.jp/item/95632
<CD収録曲>
[Disc 1]
※[Digital Edition]と同一
[Disc2]
01. その先へ (Live at STUDIO COAST 2016.6.12)
02. 声 (Live at 日比谷野外音楽堂 2017.10.21)
03. ひょうひょうと (Live at 日比谷野外音楽堂 2017.10.21)
04. 甦る陽 (Live at Zepp Tokyo 2014.7.10)
05. 生命線 (Live at STUDIO COAST 2014.12.25)
06. ジョーカー (Live at Zepp Haneda 2021.6.21)
07. カラス (Live at 中野サンプラザ 2016.12.8)
08. 戦う君よ (Live at 渋谷公会堂 2015.4.30) ※w/Strings
09. グローリア (Live at VICTOR STUDIO 2022.8.2)
10. 刃 (Live at 日比谷野外音楽堂 2017.10.21)
11. 最後に残るもの (Live at 千葉LOOK 2023.10.13)【通常カート】
※本商品はVICTOR ONLINE STORE限定商品となります。
◾️ライブ情報
『THE BACK HORN 25th Anniversary「KYO-MEI SPECIAL LIVE」~共命祝祭~』
2024年3月23日(土)パシフィコ横浜 国立大ホール
OPEN17:00 / START18:00
【券種・チケット代】
<全席指定>
通常チケット ¥7,000
U-18チケット ¥4,000
※チケット詳細はオフィシャルHPにて。