怒髪天 増子直純が明かす、“メンバー解雇”決断の経緯 4人最後のステージは「感謝しかない」

究極の1曲、究極のライブを夢見てやってる

——この「ザ・リローデッド」ができたときは、まだそんな話はなかったわけですよね。

怒髪天「ザ・リローデッド」Music Video

増子:全然何もない。これからいろいろあってもやっていくぞ! っていうのが、なんか予言書みたいになっちゃったね。いろんな意味を持っちゃって。

——〈人生の大サビに乗って〉と高らかに歌っていますが、これは40周年以降のこと、そして60代へ向けての大勝負という意味合いですよね。

増子:そうだね。まさかこんなことになるとは思わなかったけどね。矢沢(永吉)さんを見て思うけど、やっぱりこのスタイルで続けられるのは、あと十数年だと思うんだよ。アコースティック編成になったりとか、そういうことはできるかもしれないけど。あと十数年しかないと思ったら本当に“大サビ”なんだろうな。そこをどう駆け抜けていくか。歳を重ねることによって、身体のいろんなところに不具合が出てくるわけじゃない。それをどう乗り越えるかだよね。できなくなったこともあるけど、逆にできるようになったこともあるし。そこのバランスをどうやっていくのかっていうのは楽しみだね。あとやっぱり周りのミュージシャンが死んじゃったりしてさ。それを考えると、もうとにかくやっとかなきゃ駄目だなっていう。焦るわけじゃないけど、悠長にやってる時間はないね。もう時間がないからね。やるしかない。

——それだけやりたいことがあるということですよね。

増子:ある。ここからできることもいろいろあるから。こんなに苦労してる中で曲を作ったらどうなるのかな、とかね。

——あと十数年という、バンドの人生設計を描いたりはしているんですか?

増子:大きいところでやりたいとか、たくさんのお客さんの前でやりたいとか、そういうことじゃなくて、本当に良い曲作って、いいライブやるっていうだけだからね。もうこれ以上良いものはできないって思えるものをやってみたいだけなんだよ。それを「次こそは」と思ってずっとやってきて40年経ったわけだから。だから本当にできるものなのかどうかもわからないけど、そこを目指していく。それがやっぱり夢だもんね。健康に気をつけながら。めちゃめちゃ健康だったけど(笑)。

——健康面でいうと、食べ物に気を遣ったりしてます?

増子:いや、好きなもん食ってるね。そんなに食えないから、失敗したくないじゃない。坂さんみたいにもう1回食い直すくらいできればいいけど、そうもいかないからな(笑)。タバコもかなり昔にやめたし、酒もそんなに呑まなくなったもんな。それが健康にはいいんじゃない。ライブやって、歌って、運動してるし。あとは異様なほど寝てるから。ツアー中だって、大体0時にはもうベッドに入ってるからね。朝は11時くらいに起きてるから、かなり寝てるよ(笑)。

——何よりです。増子さん、喉もますます絶好調じゃないですか。

増子:ケアもあまりしなくなったけどね。前に山本譲二さんに「喉のケア、どうしてますか?」って聞いたら「そんな弱い笛、持ってるやつは歌う資格はない」って言われたよ。“笛”って、例えが昭和だよな(笑)。ただやっぱり甘やかすと良くない。喉は筋肉だからね。あとは自分に合う声の出し方をちゃんと見つけるというのは長年やってる。無理して歌ったりするわけじゃないから、声が枯れるってことはまずない。透き通った声で歌ってないから、大丈夫なんだよね。

——でもそれが逆に負担が掛かっているように聴こえる場合もある思います。

増子:よく言われるな。でも自分たちの曲の歌い方は自分の表現だから、この方がいいっていうのをいろいろ自分で考えた結果だからね。俺ね、昔からカラオケだと「歌うまいね」ってよく言われたけど、あれはお手本があるじゃない。それに近づければうまくなるからね。でも俺は元々パンクバンド出身だから、歌をうまく歌うことがカッコ悪いと思ってたんだよね。俺らの世代のパンクバンド出身のやつ、みんなそうだからな。あとになってわかるんだけどね、ちゃんと歌った方がいいということが(笑)。

——「My Revolution」(渡辺美里)も原曲キーで歌えちゃいますし!

増子:ホントだよ! 俺、二井原(実/LOUDNESS)さんと同じキーだからね。

怒髪天と渡辺美里(撮影=西槇太一)

——「CRAZY DOCTOR」も友康さんのギタープレイ含めて最高でした!

増子:最高だよね!

二井原実(LOUDNESS)(撮影=西槇太一)

——ああいうカバーを生で聴いて、怒髪天の演奏力の高さと引き出しの広さを改めて見せつけられました。普段、そこがちょっと伝わりにくいところもあると思うんですよ。

増子:ホント、そう! 友康に悪いなと思ってるのは、アレンジとかコードを凝ったり、いろいろ作り込んでも俺が歌っちゃうと全部塗りつぶされるんだよ。キーも高く聴こえない。俺らの曲がどのくらい難しいかっていうのはやってみないとわかんないと思うけど、かなり難しいからね。声、潰れると思うよ。

——楽器の演奏も難しいですからね。

増子:難しいよ。やっぱり長年やってると、自分が楽しめるように、飽きないようにいろいろ仕掛けを作っていくから。でもあんまりそう聴こえないようにしてる。ロックでもパンクでもそうだけど、ポップであるべきだと思ってるからね。難しい曲を作ろうと思えば誰でも作れるけど、シンプルで良い曲を作るのがやっぱり難しい。

——あくまでも普遍的な歌ありきで活動してきたバンドであるというところですね。

増子:そう。今の若い子、バンドでもアーティストでも、ものすごく複雑で難しいじゃない。それをTikTokとか、“歌ってみた”とかでやってみたりする。なんというか、もうチャレンジだよね。難易度の高い問題を出して、「これできるか?」みたいな感じになってるよね。俺の概念では歌ってそういうもんじゃないから。そういう側面も音楽にあってしかりとは思うけど、俺が求めてるものはそこじゃないから。いろんなときに鼻歌で口ずさめるようなものが歌だと思ってるから。

——そういう信念があるからこそ、40年活動できたというところもありますよね。

増子:そうだね。まぁ、でも楽しいからやってこられたって一番デカいかな。そんな儲かる商売でもないし。さっき言ったように、究極の1曲、究極のライブを夢見てやってるからね。

——30周年、35周年と、これまでいろんな節目あったと思うんですけども、40周年は気持ち的には違います?

増子:どえらいサプライズあったから、だいぶ違うよね。ここに来て「まだこんなことあんの?」って。もう本当にいつまでも落ち着かないんだなっていう。でもそれはバンドにとって悪いことじゃない。いつまでもケツの座らない感じでいいんじゃないかな。いつかそのうち間違ってなかった、あれでよかったんだなと思えるようになったらいいね。

——そして3月から始まる全国ツアー。12月までスケジュールが入っていますが、どんなツアーにしたいですか。

増子:初めての経験というか、何が正解かわからない状態で、こんなに手探りでツアーに行くことないよね。なかなかないことだからすごいツアーになりそうだね。倒れないようにだけはしたいね。健康だから大丈夫だと思うけど(笑)。でもホント、今までにないくらいドキドキもしてるけど、わくわくもしてるよ。

——多くの人が気になるところ、サポートベーシストが誰なのかは事前に発表しない形ですか?

増子:そうね、とくに発表はしない。初日は千葉LOOKだけど、今年は3人くらいで回してくと思う。8割くらいメインの人にやってもらって、スケジュールと場所によって変わると思う。でもね、周りのバンドの連中は当てたね、誰がやるか。この人しかいないだろうみたいなさ。

——ベースライン動くし、複雑ですし、弾ける人は限られてきますね。

増子:かなり動くし、アンサンブルもすごいきっちり組んでるから。ある程度の腕がないと弾けない。でも今日やってみてちょっと安心したな。めちゃめちゃうまいのは知ってたけど、やってみないとわからなかったから。やっぱり面白いもんでね。同じ曲弾いてもやっぱりちょっと違う感じになるんだよ。

——新しいグルーヴが生まれたり、楽曲がブラッシュアップされていったり、そういう演奏面での面白さもありますよね。

増子:面白いと思う。そこを楽しんでもらえればなと。弾く人が違えば、曲も変わるんだよね。本当に違うんだよな、こんなに違うのかと思うくらい違うから。面白いよ、聴いたことない感じの曲になってるというか、自分的にもいつも聴き慣れてる感じじゃない。

——そうなるとやっぱり歌も変わっていきますよね。

増子:変わるだろうね。しっかり歌わなきゃ。しっかりとした人が弾いてるからしっかりしないと。でも今日やって楽しみになったな。

——ちょうど、初リハーサルを終えての手応えを感じられたところで、こうしてインタビューできたのはよかったです。

増子:うん。何て言うか、俺らが勉強させられるというか、ここ、こうなるんだみたいな、今まであやふやだったフレーズとかも明確になって、面白いね。音楽的にまた成長できそうだ。

——1年かけてのツアーでどう変化していくのか、楽しみにしております。さらに今年は対バンなど面白そうなイベントもたくさんありますし。

増子:こんな状態なのに大きなイベントが結構あるから、ホント、「何やってんだよ!」と思いつつ。楽しそうなことはいっぱい待ってるね。楽しみがあると人間っていうのはね、強くなるもんだよ。悲しいことや大変なことあっても、あとに楽しみがあればだんだん元気になっていくからね。

■リリース情報
通販限定40周年記念パッケージ『ザ・リローデッド』
2024年1月31日(水)発売
CD+スペシャルブック(BOX仕様)
¥5,500(税込) / TEI-299
<収録曲>
1. ザ・リローデッド
2. ハナオコシ
<スペシャルブック>
結成40周年を記念した、メンバー個別ロングインタビューをおさめた自伝本

配信はこちら:https://dohatsuten.lnk.to/the-reloaded

■ツアー情報
『ザ・リローデッド TOUR 2024』
詳細はこちら:https://dohatsuten.jp/schedule.html#2024tour_02
2024年6月20日(木)渋谷CLUB QUATTRO
act:怒髪天(ワンマン)
開場18:30 / 開演19:15 / 終演予定21:15
前売 オールスタンディング ¥5,900(税込/Drink別)
※未就学児童入場不可(小学生以上のご入場される方全てにチケット必要)
※発券開始日:6月13日(木)
一般発売日:4月6日(土)10:00

2024年6月22日(土)大阪umeda TRAD
act:怒髪天(ワンマン)
開場17:00 / 開演17:45 / 終演予定19:45
前売 オールスタンディング ¥5,900(税込/Drink別)
※未就学児童入場不可(小学生以上のご入場される方全てにチケット必要)
一般発売日:4月6日(土)10:00

2024年6月23日(日)名古屋CLUB QUATTRO
act:怒髪天(ワンマン)
開場16:00 / 開演16:30 / 終演予定18:30
前売 オールスタンディング ¥5,900(税込/Drink別)
※未就学児童入場不可(小学生以上のご入場される方全てにチケット必要)
一般発売日:4月6日(土)10:00

2024年6月26日(水)札幌BESSIE HALL
act:怒髪天(ワンマン)
開場18:30 / 開演19:00 / 終演予定21:00
前売 オールスタンディング ¥5,900(税込/Drink別)
※未就学児童入場不可(小学生以上のご入場される方全てにチケット必要)
一般発売日:4月6日(土)10:00

2024年7月6日(土)新潟GOLDEN PIGS BLACK
act:怒髪天(ワンマン)
開場17:00 / 開演17:30 / 終演予定19:30
前売 オールスタンディング ¥5,900(税込/Drink別)
※未就学児童入場不可(小学生以上のご入場される方全てにチケット必要)
一般発売日:4月6日(土)10:00

2024年7月7日(日)郡山HIPSHOT JAPAN
act:怒髪天(ワンマン)
開場16:00 / 開演16:30 / 終演予定18:30
前売 オールスタンディング ¥5,900(税込/Drink別)
※未就学児童入場不可(小学生以上のご入場される方全てにチケット必要)
一般発売日:4月6日(土)10:00

2024年7月15日(月/祝)仙台darwin
act:怒髪天(ワンマン)
開場16:00 / 開演16:30 / 終演予定18:30
前売 オールスタンディング ¥5,900(税込/Drink別)
※未就学児童入場不可(小学生以上のご入場される方全てにチケット必要)
一般発売日:4月6日(土)10:00

2024年7月20日(土)金沢AZ
act:怒髪天(ワンマン)
開場17:00 / 開演17:30 / 終演予定19:30
前売 オールスタンディング ¥5,900(税込/Drink別)
※未就学児童入場不可(小学生以上のご入場される方全てにチケット必要)
一般発売日:4月6日(土)10:00

2024年7月21日(日)松本ALECX
act:怒髪天(ワンマン)
開場16:00 / 開演16:30 / 終演予定18:30
前売 オールスタンディング ¥5,900(税込/Drink別)
※未就学児童入場不可(小学生以上のご入場される方全てにチケット必要)
一般発売日:4月6日(土)10:00

2024年10月5日(土)高崎Club JAMMER’S
act:怒髪天(ワンマン)
詳細後日

2024年10月9日(水)和歌山CLUB GATE
act:怒髪天(ワンマン)
詳細後日

2024年10月11日(金)広島セカンド・クラッチ
act:怒髪天(ワンマン)
詳細後日

2024年10月14日(月/祝)岡山ペパーランド
act:怒髪天(ワンマン)
詳細後日

2024年11月2日(土)札幌PENNY LANE24
act:怒髪天(ワンマン)
詳細後日

2024年11月3日(日)札幌PENNY LANE24
act:怒髪天(ワンマン)
詳細後

2024年11月16日(土)心斎橋BIGCAT
act:怒髪天(ワンマン)
詳細後日

2024年11月23日(土/祝)Zepp Shinjuku (TOKYO)
act:怒髪天(ワンマン)
詳細後日

2024年12月7日(土)沖縄Output
act:怒髪天(ワンマン)
詳細後日

2024年12月8日(日)沖縄Output
act:怒髪天(ワンマン)
詳細後日

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