chilldspotの輪郭がより色濃く浮き彫りに ワンマンツアー『模様』で示したEPの完成形

 今年1月にEP『まだらもよう』をリリースした4人組バンドchilldspotが、3度目となるワンマンツアー『模様』を全国5カ所で開催。そのファイナル公演を2月21日、東京・Zepp DiverCity (TOKYO) で行った。

 今回のツアーはドラムのジャスティンが休養期間に入ったこともあり、サポートドラマーの嶋英治を迎えて行われることとなった。

 季節外れの陽気だった前日から一転、あいにくこの日は小雨が降り続く真冬日に。そんな中、ツアーで大きく成長した彼らのパフォーマンスを一目見ようと多くのオーディエンスが集まっていた。

 定刻となり、暗転したステージにストロボが点滅する。フロアの温かい拍手に迎えられながら、比喩根(Vo/Gt)、玲山(Gt)、小﨑(Ba)、そしてサポートの嶋が現れた。まずは昨年5月にリリースされた2ndフルアルバム『ポートレイト』から、リードとなったメッセージソング「Girl in the mirror」でこの日のライブはスタート。抑制の効いたタイトなAメロから、躍動感たっぷりのサビへとなだれ込むドラマティックな展開に、早くもオーディエンスのボルテージは上昇する一方だ。

 続く「遠吠え」は、『まだらもよう』収録曲。フリーテンポで奏でるイントロのフレーズを、玲山と小﨑が向かい合って呼吸を合わせている。曲が進むにつれじわじわと熱を帯びていくアンサンブル、思わず口ずさみたくなるサビの印象的なリフレインなど、彼らの非凡なソングライティング~アレンジ能力にも改めて唸らされる。

 「みなさんこんばんは。chilldspotです。今日はよろしくお願いします!」と比喩根が短く挨拶し、玲山の歪んだギターが「crush」のイントロを奏でると大きな歓声が上がる。比喩根が低音ボイスでしゃくりあげるように歌い、かと思えば透明感のあるファルセットボイスを放つと会場の空気が一変。一方、ペグを左手で回しながらギターをかき鳴らす玲山のソリッドかつトリッキーなギターソロは、いつ聴いても痺れる。

比喩根
玲山
小﨑

 「Heart Jack」では、ハイトーンボイスで浮遊感たっぷりのメロディを歌い上げる比喩根。ジェスチャーを交えたパフォーマンスにも魅了される。ドラム始まりの「未定」では、比喩根が天井に吊るされたミラーボールを指差し、それと同時にキラキラと回り出す演出など、この場の空気を完全に掌握する姿はカリスマティックですらあった。

「改めましてみなさんこんばんは、chilldspotです。今日は本当に雨の中、ツアーファイナルにお越しいただいてありがとうございます。今日はせっかく天気の悪い中集まっていただきましたので、この時間がとても素敵なものになるよう、私たちも頑張ります。最後まで楽しんでください」

 再び比喩根が挨拶した後、披露されたのは『まだらもよう』から「キラーワード」。渾身の力を込めて打ち鳴らされる嶋のドラムが、この曲のメッセージを情感たっぷりに引き立てている。

 紫のライトに照らされたミラーボールが放射線上の光を放つ中、ロマンティックに歌い上げた「ネオンを消して」「シーン」「music」などを経て、この日のハイライトとなったのは「愛哀」だ。比喩根によるピアノの弾き語りからスタートし、サビが終わると同時に響き渡る怒涛のバンドサウンドに思わず息を呑む。張り詰めた緊張感が一気に解放され、まるで洪水のようなウォール・オブ・サウンドが会場を埋め尽くすと、観客からは割れんばかりの歓声が巻き起こった。

 「単純に喜怒哀楽では表しきれないような、同じでいて同じじゃないような、表裏一体の感情を歌う楽曲が今回多く収録されているので、そんな感情を表すためにタイトルはひらがなにしました」と、『まだらもよう』の由来をMCで丁寧に説明した比喩根。「それに対し、ツアータイトルを漢字表記の『模様』にしたのは、私たちchilldspotが思う『まだらもよう』の完成形をここで提示したかったからなんです。もちろん、曲の受け取り方は色々あるけど、みなさんに『こう伝えたい』という覚悟を見せたくて、今回のツアーは『模様』という漢字にしました」

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