木村徹二、『日本レコード大賞』新人賞を経て新曲「みだれ咲き」で歌う覚悟とは 幼少期からデビューまでの道のり

木村徹二、演歌DNAの根源を語る

兄の楽曲と僕の歌のパワーでひとつの時代を作っていく

木村徹二(撮影=池村隆司)

――今回の撮影は着物ではなくラフなジャケット姿でしたが、普段ファッションには気を遣っていますか?

木村:「清潔感があればいいな」と思うくらいで、デザイン性よりも機能性重視で、ブランドにもあまり興味がありません(笑)。ファンの方からいただくことも多くて、いつもいただいたものを着ている感じです。それに体が大きいので、似合う服とか合うサイズも限られていて……。ひとつだけこだわりがあるとすれば、今つけている「ファイテン」の磁気ネックレスですかね。実は羽生結弦さんのモデルなんです(笑)。

――徹二さんはスポーツ選手ではありませんよね(笑)。

木村:はい(笑)。でも、歌手もアスリートみたいなものですし、喉にいいかなと思って。ちなみに飾りの部分がブルーなのが一般のモデルとの違いで、僕のイメージカラーもブルーなんです。ファンクラブ入会特典の法被もブルーですし、父が海のイメージなのでそれを受け継ぎたいと思って。

――マリンスポーツをやったり、お父さまと魚釣りに行ったり、そういったことはあったのですか?

木村:父はもともと漁師でしたから、海で魚を釣るのは“仕事”で、それを趣味として楽しむという感覚がないんです。だから、遊びで釣りに連れて行ってもらったことは一度もなくて。木村家の男の掟として、全員船舶免許を取らされるんです(笑)。僕も二級船舶免許を持っていて、兄も持っています。取っただけで、一度も船には乗っていませんけど。

――何か趣味と呼べるものはありますか?

木村:食べることが好きなので、唯一趣味と呼べるのは美味しいものを食べることです。

――きっと幼少期からいいものを食べさせてもらっていたのでしょうね(笑)。

木村:魚とお肉は常に最高級のものを食してきましたね(笑)。小さい頃からカウンター形式のお店でしかお寿司を食べたことがなくて、回転寿司に憧れていました。

――(笑)。

木村:カウンターのお店って1貫ずつ出てくるし、ゆっくり味わって食べるのが醍醐味ですけど、子どもの頃ってマグロやサーモンばっかり、量もたくさん食べたいじゃないですか。でも、高級店でそういうネタって頼みづらいし、注文してから10分くらい待たなきゃいけないって、子どもにはなかなか辛かったです。カウンターのお店でトロを4貫くらい一気食いとかできないじゃないですか(笑)。大人になって、カウンターのお店の雰囲気や空間も味のひとつであることがわかりましたね。

――なるほど。ちなみに今、お好きな食べ物は?

木村:カレーです。神保町の店は全部行って、そこでいちばん好きな店がスマトラカレー共栄堂さんです。超スパイシーで薬膳料理に近い感覚のカレーなんですけど、癖が強くてカレー好きの中でも評価が分かれて、でも好きな人はめちゃくちゃ好きという。僕はめちゃくちゃハマりました。演歌歌手の方でも、グッズでカレーを出している方は多いですよね。僕もいろいろな方のカレーを食べましたけど、藤あや子さん監修の「彩カレー」がめちゃくちゃ美味しくて、それをどこかで話したらご本人に伝わったようで、後日段ボールでいただいたことがありました。でも「彩カレー」の美味しさには勝てる気がしないので、僕はグッズにするのはやめておきます(笑)。

――2月28日に2ndシングル『みだれ咲き』をリリースします。表題曲は、王道の演歌という印象でした。個人的には2番の冒頭の歌詞〈生まれた時代を恨むなら/お前が時代となればいい〉にグッときました。ここは、作詞作曲を手がけているお兄さんからのメッセージというか、エールなんじゃないかと思いました。

木村:僕も歌詞で印象的な部分をピックアップするとしたら、まさしくおっしゃっていただいたところです。生きづらさを感じる今の時代にもぴったりの曲で、今を生きるすべての人へのメッセージだと思います。演歌というジャンルで考えると、演歌を聴く人の数は全盛期と比べたらすごく減ったと思いますが、それを時代のせいにするのではなく、兄が作る楽曲のパワーと僕の歌のパワーによって、僕たち自身でひとつの時代を作っていこうと背中を叩いてくれているように感じました。僕と兄の大きな目標として、歌謡界や演歌界を盛り上げたいという気持ちがあるので、それが表れている歌詞だなと思います。

木村徹二「みだれ咲き」MUSIC VIDEO

――毎回お兄さんが楽曲を作っていますが、次はどういう曲がいいなど、曲について話をされるのですか?

木村:曲についての要望などは一切話をしないのですが、デビュー曲「二代目」を含めてカップリング曲についてなど、他の方から評価をしていただく機会は多いので、それは逐一伝えています。そのうえで、「方向性を決める大きな舵取りになる次の曲は大事だと思う」と兄に伝えていて、それでできあがったのがこの「みだれ咲き」です。

――デビュー曲も、タイトルが「二代目」というのはすごくインパクトがありましたよね。「二代目」がご自身のお披露目という位置づけだとすると、「みだれ咲き」はあらためてのデビュー曲のような感覚がありますよね。

木村:それに近い感覚です。「二代目」は必殺技で、父の名前も出していますから、これで話題にならないわけがない。「ではその真価はどうなのか?」という、勝負となるのが今回の曲だと思っています。

――「みだれ咲き」は、どういった演歌を目指して制作したのですか?

木村:兄との共通認識として、男っぽいド演歌を歌っている若手はあまりいないと思うので、その部分にリーチできたら、ほかの演歌歌手の方々とも差別化できるんじゃないか、と。それでこういうド演歌を作ろうと決めましたね。

――鳥羽さんの「兄弟船」のような男らしさと、今求められる男らしさはまた少し違うと思いますが、そこは意識されましたか?

木村:父の時代は、高倉健さんのような不器用で無口な感じが、男らしさの魅力の一端だったと思います。実際に父も高倉さんに憧れて芸能界に入ったわけですし。そういう男っぽさを今歌っている人はいないので、そこを目指していけば、方向性としてバッティングするライバルもいないんじゃないかと。体格の大きさも含め、男らしさを表現するうえでの一端だと考えています。

――カップリング曲「最後の酒」はムード歌謡っぽい感じで、バーで別れ話をしているような歌です。ムーディーなサックス演奏も印象的でした。

木村:これは、少し色気を感じさせる楽曲ですよね。表題曲は父・鳥羽一郎のニュアンスを感じさせますし、一方のカップリングでは叔父・山川豊のエッセンスを取り入れています。尊敬するふたりをリスペクトした一枚になっています。それぞれのファンの方にも楽しんでいただける作品になっています。

木村徹二(撮影=池村隆司)

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