櫻坂46 小林由依のアイドルとしてのプライド “アニラのその先”を描いた卒業公演

 個人的に強く印象に残ったのが、「偶然の答え」からのライブ中盤のブロックだった。「偶然の答え」ではセンターの藤吉を軸に、小林と大園玲が歌詞の世界観を見事なパフォーマンスで表現してみせる。小林と大園が並んで歩く場面で、大園が手をつなごうとするも勇気がなくてつなげない、そんなもどかしさや切なさがパフォーマンスの随所から感じ取ることができ、グループとしての表現力の豊かさも十分に伝わった。また、「桜月」では小林がセンターの守屋麗奈と対になる形で披露。同曲のMVに登場する鏡を思わせる表現方法と、繊細さが際立つ守屋のパフォーマンスから一瞬たりとも目が離せない。もちろん、そんな守屋と向き合い華麗なダンスを見せる小林も圧倒的な存在感を放ち、「桜月」という名曲のひとつの到達点へと導いてくれた。

 グループはじまりの1曲「Nobody's fault」から始まる後半の構成は、もはや櫻坂46のストロングスタイルと言えるもので、「BAN」「承認欲求」「Start over!」という激しさを伴うダンスチューンの連発を前に、このグループはここまでさまざまな武器を手にしたのかとため息が漏れる。そして、スクリーンの映像とリンクする形で始まるのが、本編ラストの「隙間風よ」。欅坂46時代、代理センターとして楽曲の中心に立つことはあったものの、約8年半のアイドル活動においてオリジナル曲でセンターを務めるのはこの曲が最初で最後。そんな1曲で見せる繊細かつ情熱的なパフォーマンスは、彼女のアイドルとしての集大成と言えるものではなかっただろうか。

 その一方で、アンコールで披露されたソロ曲「君がサヨナラ言えたって・・・」では表現者/パフォーマー/シンガーとしての集大成を見せる。MV同様に、独創的なダンスとともに堂々とした歌声を届ける彼女の姿には、8年前に同会場でギター弾き語りを見せた少女がここまで成長したのだという、ひとつの物語のエンディングのようにも映った。

 事前に休演が発表されていた一期生の小池美波、三期生の小田倉麗奈と的野美青も加わり、在籍する全メンバーが揃った形で小林という功労者の新たな門出を見送ることができた『小林由依 卒業コンサート』。寂しさから涙するメンバーの姿は多々見受けられたが、当の小林は最後まで一切涙を見せることがなかった。唯一、家族へ向けたメッセージを口にする際に感極まりそうになる瞬間があったが、ステージを去るそのときまで彼女は笑顔でアイドルを全うしてみせた。そういったところにも、彼女のアイドルとしてのプライドを強く実感することができたのではないだろうか。

 櫻坂46は2月21日発売の8thシングル『何歳の頃に戻りたいのか?』、そして3月からスタートする全国アリーナツアーで新たな局面を迎える。昨年の快進撃、そして小林の卒業を経てグループがどんな未来を目指すのか。そして、小林由依という表現者がこの先どういった形で我々を楽しませてくれるのか。両者の今後に期待したい。

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