GARNiDELiA、中国での絶大な支持が自信に 奇跡のような日々から生まれた『TEN』を語る

GARNiDELiA、中国での支持が自信に

 GARNiDELiAが約2年ぶりのアルバム『TEN』をリリース。Nintendo Switch用ソフト『滄海天記』主題歌「蒼天」やテレビアニメ『贄姫と獣の王』エンディング主題歌「ONLY」などの人気ナンバーに加え、スマートフォンゲーム『陰陽師』7周年記念ソング「暁桜」、スマートフォンゲーム『猫之城』主題歌「猫の城」など中国ではお馴染みの人気ナンバーを多数収録。さらに壮大なサウンドの表題曲「TEN」、「QUEEN(S)GAME」や「フィクション」といった、新たなチャレンジを形にした新曲も収められる。

 ボーカルのMARiAは、現在日本企業の中国における広告アンバサダーを多数務め、中国のTVCMやバラエティ番組にも数多く出演する等、中国で国民的な人気を得ている。GARNiDELiAにとっての奇跡のような日々の中で生まれた作品だ。今作の話を中心に、MARiAの中国人気を決定づけたリアリティ番組出演の経緯や感想、中国と日本の音楽文化の違い、ワールドツアーを開催するなど世界中を飛び回るMARiAとtoku、2人の“今の思い”に迫った。(榑林史章)

常に世界中を飛び回っているような感覚

GARNiDELiAインタビュー写真(撮影=梁瀬玉実)

――前作『Duality Code』はコロナ禍における思いも込めて制作されたと思いますが、今作は4年ぶりのワールドツアーもあったり、海外にも行けるようになった上で制作されました。率直にどんなアルバムになりましたか?

MARiA:前作から2年経った感じは全くなくて。カバーアルバム『GARNiDELiA COVER COLLECTiON』もあったので、リリース自体止まった感じはありませんでしたけど、確かに2年前の『Duality Code』は、家で歌詞を書いていることが多かったし、ツアーもコロナが明けてやっとできたタイミングだったので、そのために書いたアルバムという感じでしたね。マスク着用ではあるものの、やっと声出しができるようになったツアーで、そこで披露するために作った曲たちを詰め込んでいたアルバムでした。

――今作は?

MARiA:その後、私に関しては中国にいるかワールドツアーをやっているかで、半年くらいちゃんと家に帰れていない状況で、昨年5月に中国のオーディション番組『乗風2023』に出させていただいてからは、常に世界中を飛び回っているような感覚です。そんな最中に今作のリリースが決まり、飛び回っている状態のまま書いている曲がほとんどで、昨年のワールドツアー中に書いた曲もあります。なので、止まっていたものを動かすために曲を書いた『Duality Code』とは、明らかに状況も気持ちも一変しています。逆に全然止まれなくなって、そういう今の自分たちの勢いが表れているかなと思いますね。

――中国での活動が反映されたアルバムということですね。

MARiA:確実に反映されています。

toku:中国の音楽現場を、ここまで意識して作ったことはなかったです。中国でリリースする音楽はこうであるべきとか、そういうことを新鮮に感じながら制作していました。

――もともと中国で活躍するようになったきっかけが、約7年前に「極楽浄土」が中国でヒットしたことでした。その当時お二人は「理由が全くわからない」とおっしゃっていましたが、実際に中国に行って活動するようになり、理由はわかりましたか?

MARiA:今も全然わかっていないです(笑)。なぜ「極楽浄土」があんなに流行ったのか、中国のみんなもわかっていないと思います。「なんだかわからないけど好き」みたいな、そんな感覚だったんじゃないかな。「極楽浄土」のヒットがあった流れで私が中国の番組に出させていただいて、今まで曲だけしか聴いたことのなかった人たちが歌っている私自身のことも知ってくださった。そこからさらなる広がりが起きて、今のような爆発的なことになって。さらにわけがわからなくなりました(笑)。

――アルバム『TEN』はバラエティに富みつつ、GARNiDELiAらしさもふんだんで、複数の曲であえて同じ音が使われているなど、音楽的に1本筋が通っている印象がありました。

toku:MARiAが歌えば全部GARNiDELiAになるというのはありますけど、毎回アルバムごとに「この音色を使おう」みたいなプランはあります。今回は中国のタイアップ曲が多く、「極楽浄土」的なエッセンスがある曲がほしいと言われて制作した曲も多いので、おっしゃるような統一感が自ずと生まれたのかなと思いますね。

――中国のゲームのために作った曲、日本のアニメのタイアップ曲、さらにノンタイアップのアルバム曲が同時に収録されるという部分で、バランスの難しさはありましたか?

toku:確かに、ノンタイアップで作った曲に関しては、タイアップ曲とはちょっと角度が違うと思いますが、共通して言えるのは、どちらにしてもGARNiDELiAの音楽としてカッコよくなればいいなということです。そもそもアルバムという概念が、サブスクなどの隆盛によってどんどん崩れていて、そういう中でアルバムを作るのならこういう統一感はあっていいだろうと、そこは原点回帰するような気持ちもあって曲を並べてあります。

好きなものを好きなように作ることに振り切れた「TEN」

GARNiDELiA tokuインタビュー写真(撮影=梁瀬玉実)
toku

――『TEN』というタイトルには、何かコンセプトやテーマを込めていますか?

toku:ゲームとかアニメのタイアップは、戦いとか目的地に向かう的なストーリーがどの作品にもあったので、じゃあその目的地はどこか、全てに通じるのが“天”であるというのが1つテーマです。“天辺(てっぺん)”だったり“天下”だったり、いろんな“天”があって、もともとは漢字で『天』というタイトルにしようと思っていたけど、語感的な意味も含めてワールドワイドに伝わるよう『TEN』にしました。

MARiA:アルバム表題曲の「TEN」ができたことで、アルバムとして成立した感じがあって。「TEN」はコンセプトを決めてから取りかかった曲で、このアルバムの意味を表すのはこの1曲だけだから、この1曲だけでこのアルバムのことがみんなに伝わるんじゃないかと思っています。

――その表題曲「TEN」は、すごく斬新だと思いました。ビートがあまり入っていなくて、中盤にヘヴィなビートが入りますけど、ほかはシンセと歌だけで。

toku:何か変わったことがやりたいと思って(笑)。

MARiA:キャッチーじゃなきゃいけないとか、メロディアスじゃなきゃいけないとか、みんなに覚えてもらわなきゃいけない、売れなきゃいけない、そういった考え方が全くなくなって、好きなものを好きなように作ることに振り切れたのが表題曲の「TEN」です。なぜなら、「極楽浄土」がなぜウケたかはいまだにわかっていないけど、でも実際にウケたわけで。さらに、コロナが明けてから異国の地で突然すごい状況になっている。大人になってから「こんなにすごいことが起きるんだ!」と思うことがたくさん起きているんです。大げさではなくGARNiDELiAが中国で一番有名な日本のアーティストになったこともそうですし。誰も経験したことのない奇跡みたいな体験が、今もずっと続いている。そのきっかけとなったのが、昨年5月に『乗風2023』の放送が始まってからで、そこで私たちの世界が一変して天変地異が起きたみたいな。だから『TEN』というタイトルを付けました。

 そこには、私たちが中国で天変地異を起こしたという意味合いもあります。今まで日本人が出られなかった番組に出させてもらえたり、GARNiDELiAが中国で初めてのことをたくさん築き上げている。日々、奇跡の連続のような、本当にすごい光景が目の前に広がっているんです。私たちの音楽が起こした奇跡で、今の私たちだからこそ言えることが詰まっている曲だと思います。

【MV】GARNiDELiA「ーTENー」

――今作は中国でもリリースされるんですよね。

toku:もちろんリリースします。ゲームのタイアップなどすでに中国でリリースされている曲も多く収録されているので、むしろ中国のほうが馴染みのあるアルバムになっているんじゃないかと。

MARiA:すごい話ですよ。日本人が知らない曲ばかり収録されているんですから(笑)。

自信がついたから書けた曲がたくさんある

GARNiDELiA MARiAインタビュー写真(撮影=梁瀬玉実)
MARiA

――新曲は「QUEEN(S)GAME」「フィクション」「FRONTiER」「一蓮托生」など。「フィクション」は、ちょっとR&Bっぽい雰囲気のあるドラマチックなバラードで、今までのGARNiDELiAになかった雰囲気ですね。

toku:ここまで“成就しない恋の歌”を書いちゃうんだ! という驚きがありましたけどね(笑)。

MARiA:「フィクション」に限らず、今回アルバムのために書いたノンタイアップの曲は、その時に書きたいと思ったことを書いただけなので、何かの狙いはもちろんメッセージも特にないんです。

――昔なら、聴いてくれるみんなやライブに来てくれるみんななどの対象や、その対象に対するメッセージが必ずありましたよね。

MARiA:はい。メッセージがある曲しかほぼ書いていなかったです。特に「QUEEN(S)GAME」や「フィクション」は、曲を聴いたインスピレーションで自由に書きました。メッセージはラストの「Future Wing」に全部込めたので、それを聴いてくれればいいという感じです。無理をしたり変に頑張ったりしなくても、私がストレートに歌えば伝わる。なので、何かを意図したり計算をして曲を書くことはなくなりました。

――中国での成功体験が、そういう自信に繫がったんですね。

MARiA:だから「Future Wing」が書けたんです。〈あなたからの愛が 私の翼に〉という一行がまさしくで、今は本当に何も怖いものがありません。だから「TEN」みたいに攻めた曲も書けたと思います。以前なら「これはやっても刺さらないかも」と、二の足を踏んでいたと思うし、どうやったらみんなの耳にたくさん届くかを考えながら作っていたと思うけど、逆転の発想というか、「自分たちがやれば刺さる」みたいな、そういう自信がついたから書けた曲がたくさん収録されています。

【MV】GARNiDELiA「Future Wing」/ “2023年原神誕生日応援ソング”

――そういう自信が持てるのは、相当すごいことですよね。

MARiA:それくらい頑張っていますから(笑)。これで刺さらないんだったらもういい、と思うくらい全力で、マジで死ぬ気で、命削ってます!

――ライブのMCでは「みんながいれば私は無敵だ」と言っていて、無敵状態で制作されたアルバムという。

MARiA:はい。『スーパーマリオブラザーズ』でスターを取ったみたいな状態です(笑)。どんな状態でも常に最高のステージをするという気合いでやっています。音が出なくなろうとも、マイクが声を拾わなくなろうとも(笑)。

――中国での音楽番組やライブへの出演時には、そういうトラブルも経験したそうですね。

MARiA:毎日です(笑)。生放送でそういうことが起きた時にはむしろ盛り上がって、現地のSNSでは「MARiAの強さが証明された」とトピックになりました(笑)。

toku:生放送でマイクの音が出なくなって、ファンが歌ってくれたんですよ。

MARiA:むしろめちゃくちゃ熱いライブになりました。そういうトラブルも楽しむしかないっていう感じですね。

――なかなかメンタルが鍛えられそうです。

MARiA:メンタルはもともと強いほうなので耐えられているんだと思いますけど、鋼のメンタルがダイアモンド並みになりました(笑)。

GARNiDELiAインタビュー写真(撮影=梁瀬玉実)

――tokuさんから見て、日本のポップスと中国のポップスの違いは、どういうところに感じますか?

toku:圧倒的にみんな歌が上手い。中国は本当に歌が上手くないと歌手にはなれないので、アイドル的な人でもすごく上手いです。さっきのトラブルの話ではないですけど、どんな環境でも臆することなく歌い上げられる人ばかりで、ライブに圧倒的に強いという印象です。オケもすごく緻密に作られています。伝統音楽的なものを上手く織り込んであって、もちろん洋楽的な音をやる方もいますけど、最先端をいっている感じがする。英語ができる方も多いので、欧米のアーティストと交流されている方もたくさんいて、洋楽的なエッセンスがかなり入ってきている印象です。

――そういう中国の音楽から影響を受ける部分はありますか?

toku:ライブ会場での音作り、例えば日本よりも圧倒的に低音が出ているとか、そういうところはもう少し日本での曲作りや編曲の時に視野に入れておかないと、中国で演奏した時に合わないなと思いました。そういう意味で1曲目の「TEN」には、そういったエッセンスも入れていますけど、結局は「自分がやりたいようにやる」というところに行き着きましたね。

――今作には「一蓮托生」を始め、「幻愛遊戯」「謳歌爛漫」なども収録しています。やはり漢字の曲名は、中国では理解してもらいやすいですか?

MARiA:それはすごくあると思います。「極楽浄土」がヒットした裏には、それも一つのポイントになっているはずです。

――歌詞に英語が少ないのも意識してのことですか?

MARiA:それは単純に英語が苦手というだけですね(笑)。最近はどれだけ美しい日本語を生み出せるかに注力しています。日本語の響きはすごく美しくて、漢字の意味の捉え方も中国とは違っていて、そこも中国の方々に面白いと思っていただいている要因の一つです。ここまできたら、日本語の美しさを徹底的に追求するのもいいなと思っています。

【MV】GARNiDELiA「暁桜」/ スマホゲーム「陰陽師」7周年記念ソング
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