kiwano「コンパクトミラー」がバイラルチャートイン 弾き語りから“推し”紹介動画のBGMなどでも拡散

 同曲はTikTokから火がついてヒットにつながったと言えるだろう。本人による弾き語り動画が何度も投稿されたことに加え、アーティストのさとうもかがカバー動画を公開したこともあり、最初は「#歌ってみた」などでの投稿が多かったが、その後、歌詞の〈「クラスの中心にいるような/タイプね」 人当たりいいけど〉というフレーズにのせて、自分の推しを紹介する動画のBGM、さらにもっとプライベートな“彼氏”や“クラスの人気者男子”を紹介する動画に使用される形で拡散し、ヒットにつながった。2024年1月8日現在「#コンパクトミラー」は1110万回視聴を突破している。

コンパクトミラー / kiwano Lyric video

 「コンパクトミラー」は、kiwanoが作詞・作曲・編曲・録音を担当。リリースに伴いリリックビデオが公開されており、スマートフォンで撮影したと思われるフレーミング、ラフな編集、少し照れたような笑顔を浮かべる主人公(kiwanoが演じている)が、デート中の彼女を撮影したシチュエーションを想像させ、歌詞にばっちりはまっている。

 今回ピックアップした「コンパクトミラー」も然り、kiwanoの楽曲は、決してBPMは早くないが、どの曲も軽やかだ。アレンジもアナログシンセの音色が印象に残るが、どこかトイミュージックを彷彿させるような愛嬌がある。ギターもピアノも演奏できるkiwanoならではのサウンドの抜き差しもアレンジに幅を出している。加えて、ちょっと舌足らずなボーカルアプローチや、ファルセットに移行する時のゆらぎなど、どこか不安定で、そこが独特の浮遊感となり、楽曲に軽快さを加えている。

 「コンパクトミラー」は、サビでのコーラスの掛け合いも楽しいミディアムポップチューン。トーンの母音を途中で区切って歌うところが多々あり、余計なお世話ながら譜割りを少し変えたらもっとオシャレなサウンドになるだろうと思うのだが、そこをあえて変えずに、そのまま生かしているところには、自分の歌声を熟知しているからだろう。カラフルで多彩な要素をしっかり整理して響かせるあたりにアレンジャーとしての技量を感じるが、「コンパクトミラー」の最大の魅力は、少しレトロ調な楽曲と声質のマッチングの妙だ。口語体の歌詞と相まって、とても中毒性が高い。多くの女の子にとって“ミラー”は毎日手にするもののひとつ。古の物語から、ミラーは女の子の夢を叶える魔法の道具であることが多かったが、「コンパクトミラー」では、鏡に映る自分に自問自答し、鏡の向こうに恋の行く末を見ている。抗えない気持ちと変わらない現実。でも恋をしていて地に足が着かないーーそんな、自分ではどうにもならない“恋する自分”を見事に描写している。

 年の初めから、若手アーティストに触れることができたのも、バイラルチャートのおかげである。今年もたくさん新しい出逢いがあるに違いない。

※1:https://charts.spotify.com/charts/view/viral-jp-daily/2024-01-03
※2:https://indiegrab.jp/interview/87398/

星野源、曲作りの新たなスタイルが確立された2023年 サマソニや『LIGHTHOUSE』も振り返る

星野源にとって2023年はひたすら曲を作り続けた1年だったという。3年ぶりの有観客ライブ開催、『SUMMER SONIC 202…

2023年の国内音楽チャートを読み解く 長期的ヒット、タイアップの重要性……今年の傾向も予想

Spotify、Apple Music、Billboard、LINE MUSIC、YouTubeなど、2023年の年間邦楽チャー…

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「連載」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる