East Of Eden、音楽への向き合い方で共鳴する凄腕5人 結成秘話や初ライブの手応えを語る

 バイオリニストのAyasaを中心とする女性5人組ロックバンド East Of Eden。今年8月に結成が発表されると、元prediaの湊あかね(Vo)、D_DriveのYuki(Gt)、Lonesome_BlueのMIZUKI(Dr)、コロナナモレモモをはじめ様々なサポートでも活躍しているわかざえもん(Ba)という豪華なメンバー構成も大きく話題となった。そして、Zepp DiverCity(Tokyo)での1stワンマンライブ『East Of Eden -World Premiere Special Showcase 2023-』(10月8日)を経て、ついに1stミニアルバム『Forbidden Fruit -1st piece-』が12月20日に発売。歴戦の5人による技巧的な側面のみならず、湊の歌を中心に据えた新鮮なアンサンブルとバリエーション豊かな曲調を味わえる、珠玉の5曲が収録された。今回はメンバー5人に、結成の経緯から初ライブの手応え、そして制作の裏側までをじっくりと語ってもらった。(編集部)

発起人 Ayasaが明かす、新バンド人選の理由

──East Of Edenというバンドの成り立ちは、10月8日の1stライブでもAyasaさんの口から語られていましたが(※1)、各メンバーをこのバンドに誘うまでの流れを含め、改めてバンド首謀者のAyasaさんから説明していただけたらと思います。

Ayasa:私もいろいろな音楽活動をさせていただいていますが、昔はインストバンドをやっていたり、今もソロもやりながら『BanG Dream!』(以下、『バンドリ!』)のMorfonicaなどをやらせてもらっています。そんな中で、ひとりのアーティストとしてボーカルが入ったバンドをやってみたいという思いをずっと持っていて、一緒にやるならこの人たちがいいなというメンバーを、自分の中で勝手に妄想していたんです。それがだんだんと実現に近づいていったんですが、最初の段階でチョイスしていたメンバーが豪華すぎて、現実的な問題として難しいなと感じてしまって。なのでパーマネントのバンドというよりも、プロジェクトとしてまずライブができたらいいなという気持ちで、アプローチさせていただくことになったんです。

Ayasa

──なるほど。

Ayasa:と同時に、一緒に活動するなら同性のミュージシャンがいいなという構想も最初からあって。そこから、ビジュアル的には可愛かったり綺麗だったりするんだけど、気質はめっちゃ男前でそれぞれの楽器に真剣に取り組んでいる方を人選していきました。で、まず最初にベースのざえもんちゃん(わかざえもん)にお声がけして。ざえもんちゃんは本当に著名なベーシストで、学生の頃からいろいろな活動をされているのも知っていましたし、私も何度かイベント会場でご一緒したり同じ作品に参加していたりしたこともあったりと、すでに繋がりもあったんです。でも、外から見ていると彼女がバンドに属するっていうイメージがなくて、ソロのベーシストとしてバリバリやっていかれる方なんだろうなと見ていたので、ファーストアプローチも「バンドを組むので入ってください」ではなくて「こういうプロジェクトをやるんですけど、そこに参加してもらうことは可能ですか?」と低いところから入っていって。実際にそのお話をした頃、ざえもんちゃんは海外に行かれていて、そこでもいろんな経験をされた上で「やりたいです」と言ってくださったんです。

──わかざえもんさんは、1stライブのMCでもバンドに対する憧れを語っていましたよね。

わかざえもん:そうですね。もともとはバンドをやりたくて、バンドに憧れてベースを始めたので。もちろんバンドを組んでいた時期もあったんですけど、前のバンドは「ひとりのベーシストとして、よりスキルを磨いていきたい」ということで抜けさせていただいて、そこから月日が流れ、いろんな経験をしてく中でもずっとバンドをやりたいという思いが自分の中にあったんです。なので、Ayasaさんからお話をいただいたときに、声をかける予定のメンバーとプロジェクトの構想を聞いてすごくワクワクしましたし、「だったらカッコいいものになるはずだ!」と思い、自分も参加したいなという気持ちになりました。

わかざえもん

Ayasa:というわけで、まずざえもんちゃんがパーティに加わり(笑)。それと並行して、Yukiさんにも声をかけていました。Yukiさんのことはずっと前から存じていて、とんでもなくお綺麗で、女性ギタリストとしてもすでに有名な方でしたけど、最初に私の中ではYukiさん……というかD_Driveさん自体にシンパシーを感じていたんです。というのも、かつて私がやっていたインストバンド Sword of the Far Eastは、よく周りから「歌ったほうが絶対に売れるよ。歌えばいいのに」って言われていたんですね。それに対して、私は「絶対にやらないです!」と答えていて。だって、一度歌ってしまったら、それ以降も歌わないとダメと言われちゃうじゃないですか。そんな中で、「ちゃんとインストで戦っているバンドもいるじゃないか」とD_Driveさんのことをずっとリスペクトしていたんです。その後、私はSword of the Far Eastを卒業してソロになったんですが、私が2016年に出演したSONY XperiaのCMにYukiさんが翌年出演したり、何度か「ギターはYukiさん、バイオリンはAyasaさんでどうですか?」という企画のお話をいただくもなぜか実現しなかったりと、Yukiさんの存在をより近くに感じられるようになって。今度こそ一緒にやりたいと思って、SNSを通じてDMを送ってみました。

Yuki:私はもちろんインストも好きですけど、それと同じくらい歌モノも好きで、イベントではボーカリストさんと一緒にやらせていただいたこともあったんです。でも、D_Driveも精力的に活動していますし、なかなかそういったことを自分発信でやる暇がなかったところに、今回こういうお話をいただいて。最初はプロジェクトというお話でしたが、そこからパーマネントのバンドとして活動したいという話になったときも「じゃあD_Driveを辞めてください」という感じでは全くなかったですし、「D_Driveも今まで通りやっていただいて、こっちもみんなで集まれるときに頑張って活動していきましょう」ということだったので、それだったらどっちも頑張りたいなと思い「ぜひやらせてください!」とお返事しました。

Yuki

Ayasa:で、Yukiさんが一緒にやってくださるという段階で、MIZUKIさんともお話しして。MIZUKIさんのこともずっと存じ上げてはいたものの、現場が被ることがあまりなかった中で、Lonesome_Blueさんの楽曲「Parallel World」のレコーディングやMVに参加させていただく機会を得て、MV撮影のときに初めてお会いしたんです。同い年ということもあって、最初から超気さくに話しかけてくれて。「Lonesome_Blueで初めてツーバス踏みました」とおっしゃっていたんですけど、そのためにものすごく練習をされていたのもわかりましたし、ステージ上ではそういう大変な姿を一切見せず、ずっと笑顔で恐ろしいツーバスを踏みまくっている。その気概もすごくカッコいいですし、音もパフォーマンスも華やか。ドラマーってステージで一番どっしり構える楽器だからこそ、常にそういう笑顔でステージを照らせる人にいてほしかったので、「いろいろバンドをやられていますけど、さらにEast Of Edenもいけますか?」と聞くだけ聞いてみようと。でも、お話をしたらすぐ快諾してくださって、ここにご降臨いただいています。

MIZUKI:Lonesome_BlueのMV撮影や1stライブでAyasaさんとご一緒させていただいたときに、人間的にもめちゃくちゃいい方だなと思ったし、バイオリンとドラムがめっちゃハマってすごく楽しいなと感じたんです。その頃、私はLonesome_Blueと真空ホロウをやっていたんですけど、ちょうどEast Of Edenのお話をいただいたタイミングに真空ホロウの解散が決まっていたので、「やりたいです!」と答えました。

MIZUKI

Ayasa:ここで楽器隊は揃ったんですけど、頑張ってすごく良いメンバーを集めたからこそ、一番肝となるボーカリスト選びが最大の難関でした。すごいボーカリストを見つけないとこのバンドを動かせないな、と。私もイベントなどでいろんなボーカリストとご一緒させていただくことがありましたが、バンドに入って歌ってくれるボーカリストとなるとまたちょっと違うじゃないですか。そうやって迷っていたときに、East Of Eden立ち上げ段階からいろいろ相談に乗ってもらっていたスタッフさんから「prediaの湊あかねさんって知ってる?」とYouTubeのリンクが送られてきて。prediaさんのことはもともと知っていたんですけど、昨年6月に解散したことを私は知らなかったんです。それで、湊さんのYouTubeを観てみたんですけど、「綺麗でしょ、私」という感じで歌うボーカリストと違って、カメラ目線も全然していなくて、マイクの前でひたすら男前に歌いまくっていて。ちゃんと歌声を届けようとしているように感じたので、すごく惹かれて、一度お会いしてみようと思ったんです。初対面のときからすごく柔らかい雰囲気で、この方がバンドのセンターにいたら他の楽器メンバーも楽しくライブができるんじゃないかと思って、湊さんにご降臨いただきました。

湊あかね(以下、湊):もちろんお話をいただいたときは嬉しかったです。自分的にはprediaを解散してからは「グループをまた組むことはもうないだろうな」と思っていたんですけど、すごいメンバーが集まったという話を聞いて、これはやらないわけにはいかないだろと思って。自分の中でワクワクが湧いてきたので、「ぜひやりたいです!」とお返事をしました。

──湊さんはバンド自体初めての経験ですよね。

湊:そうですね。やったことがないから逆に好奇心が湧きましたし、一から始められるんだったら楽しいじゃないですか。なので、やりたいですとお答えしたんです。

湊あかね

リハーサルで合わせた感触は「1回目から期待以上」

──こうして最強のパーティが揃い、8月8日に結成発表と同時に最初の楽曲「Evolve」を公開。その2カ月後の10月8日には1stライブを開催するわけですが、「そもそもオリジナル曲が1曲しかないのに、どうやってライブをするんだろう?」と思っていたんです。

Ayasa:“エンドレス「Evolve」”をするしかないのかなと(笑)。

MIZUKI:10回くらい繰り返してね(笑)。

Ayasa:お客さんも1曲しか知らないバンドのライブによく来てくださったなと、純粋に嬉しくて。ライブが終わったあとにSNSを見たら、皆さん「カバー曲もやると思っていた」と言っていたんですけど、わりかし最初の段階から「カバーするなら、うちら何のカバーをやるの?」っていうことで、やらない方向で意見が一致していたので、とにかくライブまでにオリジナル曲をたくさん揃えねばと必死でした。

──でも、皆さんそれぞれにいろんな活動をしているから、リハーサルも大変だったんじゃないですか?

Ayasa:9月にパッと集まって、集中的に何回かリハーサルをしました。しかも、ゲネが終わったあとに他のバンドやプロジェクトの本番を踏んできているメンバーも多かったので、かなりタイトでした。でも、過酷な環境をともに乗り越えるってそれこそバンドらしいなと。「頑張ろうね!」ってお互い励まし合うのも、ソロやサポートメンバーだったらまたちょっと違うじゃないですか。そういうところでバンド感を得られたのも、私は良かったなと思っています。

Yuki:リハーサルの前に何曲かレコーディングをしていたので、みんながどんなプレイをしてどう歌うのかは音源としてはわかっていたんですけど、実際のライブとなるとまたちょっと違うじゃないですか。最初こそ曲を覚えて弾けるようになることに必死だったんですけど、みんなでまず「Evolve」を合わせてみたら、いきなりすごい手応えを感じられて。そこですごくテンションが上がりましたし、自分ももっと頑張らなくちゃという思いも芽生えて、1回目から期待以上でした。

MIZUKI:曲がすごく難しいのに最初のリハからある程度まとまっていたし、誰かの気持ちが昂ってきたときにそれが音に乗って伝わるから、そうなると自分の気持ちも上がるじゃないですか。みんな一緒にそうなるところも感じられたので、すごく楽しかったですね。あと、新しい曲をやるたびにAyasaさんが「最後に無事で会いましょう!」と言ってくれて(笑)、そういうリハーサルの空気感も良かったし、終始安心して臨めました。

わかざえもん:それぞれ舞台は違えど第一線で続けてきた人たちばかりなので、私自身も刺激をもらうときもありましたし、逆にこれだけキャリアを持った人たちが集まってここまでうまくまとまったことが奇跡だなと感じていて。ここまで来られたのはAyasaさんの人選も大きいと思いますし、いろんなバランスを踏まえてのこの5人だったんだろうなと、改めて実感しています。

East Of Eden / Evolve [Extended Version] (Music Video)

──僕がライブを観て新鮮に映ったのが、湊さんが踊っていないことでして。

湊:そうですよね。私も新鮮でした(笑)。

Ayasa:私は踊ってほしいな(笑)。

湊:じゃあ、今度は踊ろうかな……(笑)。そういう曲がいくつかあってもいいかなとは思いますけど、私はダンスってあまり得意じゃないほうなので。アイドルをやるにつれてある程度できるようにはなったけど、実は踊らないで歌いたい派なんです(笑)。ただ、これまではダンスで歌詞を覚えていたところもありましたけど、逆に踊らなくなったことでちゃんと歌詞を覚えられるようになりました。

──しかも、今は全部ひとりで歌うわけですものね。

湊:なかなかそういう経験もなかったので、改めてひとりだけで歌うって大変だなと実感しているところです(笑)。

──バンド演奏だと音圧も今までとは全く異なりますよね。

湊:全然違うから、本当に生演奏ってすごいんだなとリハーサルのときに思い知らされて。「これは相当頑張らないと置いてかれるぞ」と、そこで気持ちを入れ替えることができました。

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