リアルサウンド連載「From Editors」第35回:『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』、戦後物語として現代に訴えかけるメッセージ

 また、戦後日本という時代設定、主人公が戦争の生き残りであるというキャラクター設定などにおいて、ほぼ同タイミングで公開された『ゴジラ-1.0』とも様々な共通点があると言えそうです。『ゴジラ-1.0』が民間の力で団結してゴジラに立ち向かう過程で、主人公・敷島浩一(神木隆之介)が自身の恐怖やトラウマを乗り越えていく物語だとしたら、『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』は搾取の根幹にまでメスを入れることで、水木が負の構造から脱していく物語に思えました。

 そしてやや余談ながら、『ゴジラ-1.0』が多くのオマージュを捧げている『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』(2001年)では、ゴジラを“太平洋戦争で犠牲になった人々の怨念の集合体”として描いていましたが、『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 』に登場する妖怪・狂骨もそれに近い存在だと思いました。『ゴジラ-1.0』のゴジラが果たしてそういう存在だったのかは想像の域を出ませんが、両作を見比べてみることで、戦後日本への捉え方の共通項や違いが浮かび上がってくるので面白いかもしれません。

【各界からコメント到着】『ゴジラ-1.0』<大ヒット上映中>

 『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』はかなり重いストーリーですが、現代日本で生活を営む者として大切なことを思い出せるような作品でした。『ゲゲゲの鬼太郎』シリーズを通っていなくても楽しめるので、たくさんの方にオススメしたい1本です。

※1:https://realsound.jp/2023/10/post-1468188.html
※2:https://realsound.jp/movie/2023/11/post-1503905.html

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