Vaundy、『replica』が2週連続トップ10入り 冷静な自己認識と精巧な“複製”技術で成立したアルバム
ところで近年、米津玄師の『BOOTLEG』(2017年)やヨルシカの『盗作』(2020年)など、本作と近しいコンセプトを持った作品をポップスのフィールドでよく見かけるようになった。だが、Vaundyの面白いところは、この“複製”といったテーマを持たせた作品に、とあるフレーズを織り交ぜている点だと思う。それが本作のラストに収録された「トドメの一撃」での一節だ。
現代のインディーミュージックシーンを象徴する存在とも言えるファンクバンド・Vulfpeckのコリー・ウォンを客演に迎えたことで、曲全体に渡って切れ味鋭いカッティングギターが鳴り響くこの曲。そのほか武嶋聡による極上のフルートの演奏や、緻密なストリングスアレンジなど、この曲のサウンド面は特筆すべき点が多い。2時間超えの大作のラストを飾るに相応しい一曲だ。
この曲の2番で飛び出すのが、〈こういうのとか/そういうのとか/偽物じゃできないよね〉という歌詞である。まるで「自分は“複製”ではなく“本物”だ」と言わんばかりのこの言葉に、思わずニヤリとさせられてしまった。単にタイアップ作品に寄り添った歌詞とも言えるし、コリー・ウォンへの賛辞とも受け取れるが、このアルバムのコンセプトを見据えたうえでのフレーズだと考えたら、本作を締めるフレーズとして秀逸だと思う。
人は誰しも知らず識らずのうちに何かに影響を受けているものだ。だからこそ自分(が作る物)がどれだけ“レプリカ”なのかを自覚できているかが重要で、それを見極めるセンスや分析力がなければただの劣化コピーで終わってしまう。その冷静な自己認識と高い“複製”の技術を持つからこそ本作は成立している。その上で、Vaundyにしか出せない独自の要素があるからこそ、彼の作品は多くの人々に支持されているのだろう。
※1:https://natalie.mu/music/pp/vaundy02
※2:https://www.j-wave.co.jp/original/tokiohot100/guest_past/past_20200531.htm
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