Skoop On Somebodyの揺るがない軸 『Nice'n Slow Jam -beyond-』に込めた“自分たちを越える”想い

Skoop On Somebodyの揺るがない軸

 2021年12月に長らくグループを離れていたKO-HEY(Dr)が12年ぶりにREJOINし、再び3人組となったSkoop On Somebodyが、ニューアルバム『Nice'n Slow Jam -beyond-』をリリース。新曲はもちろん、「THE FIRST TAKE」で150万回再生を記録した「sha la la -From THE FIRST TAKE」、TAKE(Vo)・KO-ICHIRO(Key)の2人時代に久保田利伸が提供した曲にKO-HEYがアレンジを施した「Every Kiss, Every Lies ~Plug & Play~」、映画の主題歌としてしか聞けなかった3人バージョンの「椛 ~momiji~ Original ver.」など全10曲を収録。現状に止まることなくアップデートを続けるSkoop On Somebodyの今が映し出されたアルバム。年末にかけて開催される恒例のクリスマスツアーに向けても、期待が高まる作品になった。(榑林史章)

Skoop On Somebody「ステラ」Music Video (@skoop_jp)

“beyond”に込めた想い 記念碑的なアルバムではなく通過点に

――アルバムタイトルの『Nice'n Slow Jam』は、2001年発売のセルフカバー&バラードコレクションのタイトルから取られていますね。

TAKE:はい。『Nice'n Slow Jam』は僕らのアルバムの中でも一番世の中に届いた作品だし、2012年にも『Nice'n Slow Jam 15years Limited』をリリースするなど、節目ごとにこのタイトルでアルバムをリリースしてきました。今回は新曲がありつつ、9月と10月に東京と大阪で開催した『Discotique Nite 2023』というライブで、2人時代の曲「Every Kiss, Every Lies」と「ラビリンス」を3人で演奏して、それを作品として残したいと思いました。そもそも『Nice'n Slow Jam』は、「sha la la」がヒットしてアルバムを出す時に、メーカーから「SKOOP時代の曲をもう一回、世の中に問いませんか」と言われて、セルフカバー楽曲を収録した作品です。そういう意味では3人から2人になり、そこへまたKO-HEYがREJOINした3人の節目というか。何周年という節目ではなく、僕らの音楽的な部分での節目になったと思って、『Nice'n Slow Jam』がいいんじゃないかと。じゃあサブタイトルはどうしようかと考えている中で、“beyond”というアイデアがKO-HEYから出ました。

KO-HEY:“beyond”には「越える」などの意味があって。2人だとデュオだけど、2人でやっていた時の曲を3人でやった途端、バンドになるという印象があります。過去にも既発曲をリアレンジする企画をやらせてもらいましたけど、25年以上経ってまたリアレンジをすると、25年以上の経験を経たなりの良く言えば熟成されたものや、若い時とは違った汗とか熱量みたいなものが出ていると感じて。そういう若い時の自分たちを「越える」みたいな気持ちと、逆に大人になった今でしか出せない味もあるよなということで、“beyond”と付けました。つまり、自分たちを越えていくみたいな。それに僕は離れていた期間が12年以上ありますので、いちファンとしての客観的な目線で音源を触れるというのもすごく幸せでしたね。

KO-ICHIRO:“beyond”というワードからは、未来をも見据えているというニュアンスを感じ取れますよね。これは記念碑的なアルバムではなく通過点であり、まだまだ成長したいと思っているので、“beyond”がぴったりじゃないでしょうか。

――1曲目の「One Life Stand」がすごく格好いいファンクチューンで、「越えていく」という意思表示がヒシヒシと伝わります。デジタルで加工するのではなく、あえてトークボックスを使っているのもポイントです。

KO-ICHIRO:あれは編曲のGakushiくんがやってくれたんです。普通の声でもデジタルで近づけることはできるのですが、やっぱりチューブをくわえて生で演奏することで、また違ったニュアンスが出るんですよね。

TAKE:これは最後に「TAKEも何か作れ」みたいな空気だったので(笑)。ビートを流してフロウしていてできたんです。それでトラックメイクをGakushiに投げたところ、あえて今っぽいことではなく「Skoop On Somebodyはこうであってほしい」という、骨太でファンキーでエッジーなものを返してくれました。先ほどKO-HEYが僕らのファンだと言ってくれたのと同じように彼もファン目線で、「Skoop On Somebodyってこうでしょ!」というものを、逆に僕たちが浴びせかけられたみたいな。「ここまでファンキーか!」と驚いたけど、Gakushiの編曲センスが光っていますね。

――歌詞はストレートに、これが自分たちのスタイルだと宣言している。

TAKE:「越える」と言っていますが、歌詞は大人のズルさがあって(笑)。がむしゃらに人と比べてもしょうがないんじゃないかなって。今の自分たちの年齢感を、こういうゴリゴリのファンクに乗せる面白さを楽しんでいただく感じですね。

――〈パンケーキにはジャムorマーマレード〉という歌詞が象徴するように、スタイルはそれぞれで、自分たちの好きなように楽しめばいいと。

TAKE:こういう言い方は語弊があるかもしれないけど、人生ってどうでもいいことの連続じゃないですか。後で振り返ると、大したことなかったなって。正解を探しても意味がなくて、自分に訪れた出会いや、いろんなことを正解にしていくのが自分なんだよというメッセージです。

――ちなみにパンケーキには?

TAKE:僕はメープルシロップ派です(笑)。メープルシロップでも良かったんだけど、ハマりが悪かったので。

――今作には配信曲も含めて新曲も多数収録されています。「きみには弱い」は王道感があって、他のアーティストの名前を出すのは失礼かもしれないのですが、Original Loveっぽさを感じまして。

Skoop On Somebody「きみには弱い」Music Video (@skoop_jp)

TAKE:まさにそうなんです(笑)。実は今のスタッフの中にOriginal Loveの制作に携わった人がいて、ミーティングの時にそういった王道のAORをS.O.S.でやったら面白いんじゃないかと提案してくれたんです。例えばボビー・コールドウェルの「風のシルエット」とかでも使われているようなコードなんですけど、KO-ICHIROプロデュースで、そのコードを使って何度聴いても飽きない曲になりました。どうやって思いついたんですか?

KO-ICHIRO:家で必死にもがいて(笑)。聴こえ面はシンプルで、弾くのもそんなに大変じゃないけど、ちょっとだけスパイスが効いていて、それが何度繰り返されても飽きない。つまり聴き心地重視ですよね、この曲は。どこか懐かしくて新しいところもほしくて。

KO-HEY:図らずともOriginal Loveのベースだった小松秀行くんが、ベースを弾いてくれています。

――また「THE FIRST TAKE」では150万回再生を記録した、「sha la la -From THE FIRST TAKE」も大きな聴きどころです。

Skoop On Somebody - sha la la / THE FIRST TAKE

KO-HEY:1回目でいければいいんですけど、何かがあった時、テンションが下がるのが怖くて、どこかでそういう緊張感がありました。

TAKE:最初は結構意気込んじゃったんです。アレンジをこうしよう、ああしようみたいな。でも最終的に、「いやいや、いつも通りやろうよ」ということになって、いつもの仲間と一緒にいつものように演奏して歌いました。飾らない自分たちのいつも通りのスタイルが、皆さんの日々の中で、ちょっとした癒やしやエネルギーになってくれたことが、すごくうれしい。あと海外の方のコメントがたくさんあったのもうれしかったです。「言葉を超えるんだ!」と思って。

――ルーツとなっている洋楽が、ちゃんと血肉になっているという。

TAKE:はい。自分たちもかつては、英語が分からなくても洋楽を聴いて泣けたりしていたし。日本語で海外の人が楽しめるものをいつか作れたらいいなと思って、日本語の美しさにもこだわって活動してきたので、その夢がここでちょっと叶えられた感じでした。英語のコメントで「このダディたちやばい!」みたいなのもあって、それはすごくうれしかった。

KO-ICHIRO:カメラは回っているけど、純粋に音を楽しんだ。そういう意味ではスタジオライブのような感覚でした。だから変な力が入ってもしょうがないし、いつも通りの仲間に来てもらって、ステージでやっていることをスタジオでやらせてもらっただけだから、いい意味で力が抜けているところが、皆さんに伝わりやすかったのかもしれない。着飾って頑張って歌っている僕たちじゃないという。

――「THE FIRST TAKE」を観てライブに足を運んでくれた人も?

TAKE:ライブのアンケートを読むと、そういう人は結構多いみたいですよ。昔好きだったけど少し離れていた人が、「THE FIRST TAKE」を観て「まだやってたのか!」と言って、ライブに帰ってきてくれたり。気にはなっていたけど、ライブに行ったことはなかった人がライブに来てくれたり。今はファンじゃないと聴いちゃいけない時代ではないから、好きに僕らの曲を楽しんだり使ってくれたりしてくれたら本望です。

――今作では2人時代の楽曲を3人バージョンでリアレンジした「ラビリンス ~Mo' Passion~」と「Every Kiss, Every Lies ~Plug & Play~」を収録しています。「Every Kiss, Every Lies」は、久保田利伸さんの提供曲です。

TAKE:はい。久保田さんは、KO-HEYが復帰することを伝えた時も「おめでとう! 日本のMint Conditionが復活だね!」と言ってくださって。2人時代は2人時代の良さがあったけど、3人になった上でのものをやってみようじゃないかと思って、この曲と「ラビリンス」を前回のツアーで演奏したら、KO-HEYが入ったことでより広がりのあるものになって。

KO-HEY:「Every Kiss, Every Lies」を僕が初めて演奏したのが“REJOIN”の時で、2人だとデュオだけど3人だとバンドになるというか、バンドでライブをやることでより映えたので、歌がより色気の出るアレンジにしたいと思いました。打ち込みは打ち込みの良さがありますが、これは生々しくやりたいなと。

――サブタイトルの「Plug & Play」は、アンプラグドの逆みたいなイメージですか?

KO-HEY:そうなんです。だから極力フォーリズム+αで、生演奏しました。そういうアレンジ一つで育っていく曲になればいいなと思います。

KO-ICHIRO:リミックスという手法があるじゃないですか。それともちょっと違うんですけど、同じ素材なのに新たな息吹を感じさせる、とてもいいアレンジになったと思います。

TAKE:KO-HEYとKO-ICHIROのそうした職人技をふんだんに楽しんでもらえるのも、『Nice'n Slow Jam』シリーズの魅力の一つです。ちょっとマニアックですけど、今の時代アルバムを聴いてもらうのは大変ですから、フックとしてそういう世界を提示してもいいんじゃないかなと。音もかなりこだわったので、そのあたりもぜひ楽しんでもらえるとうれしいです。

――「椛 ~momiji~ Original ver.」は?

KO-ICHIRO:これはKO-HEYくんが抜ける前の、最後の楽曲だったんです。『引き出しの中のラブレター』(2009年公開)という映画の主題歌として「椛 ~momiji~ 」を作らせてもって、3人での活動として最後にレコーディングしました。シングルでリリースした時は2人バージョンだったので、今回は映画で使われた3人バージョンを収録していて。ずっと映画でしか聴けないバージョンだったので、KO-HEYがREJOINした今、改めて皆さんに3人バージョンを聴いていただこうと。

KO-HEY:CD化されていなかった、ある種のデッドストックみたいな曲です。

TAKE:歌って思ったんですけど、作詞の市川喜康さんが、KO-HEYが休止するタイミングで、僕らに授けてくれたメッセージだったんだなって、今回改めて気づきました。当時は映画に合っている歌詞だったし、深くまでは考えていなかったのですが、今歌ってみると、KO-HEYが帰ってくる未来のための歌詞だったんだなと、解釈が僕の中で変わりました。そう思うと本当に不思議ですよね、歌詞とか曲って。

――出会いの奇跡、尊さを称えながら、未来も見据えた歌詞。今回収録されるべくして収録された1曲ですね。あと「祈り ~Club SOS ver.~」ですが、「Club SOS ver.」とついている曲は、3人だけで演奏して歌っているものですね。

KO-HEY:今、世の中で起きているいろんなことも含めて、結果的にメッセージじゃないけど、みんなでもっと心豊かに笑顔で過ごせるようになるといいよね、という大きな願いとか祈りが、ここには込められています。

――最後の歌い上げの熱さがすごい。

KO-HEY:3人だけで重ねたとは思えないですよね。

TAKE:SKOOP時代から節目のライブでは必ず歌っていた曲だったので、育っていたんだと思います。これだけ育っていて、すでに原曲とは違うものになっていたから、この機会にもう一回作品としてレコーディングしたいと思って。多分一生歌っていくのだろうと思います。

――当時はどういうイメージで書かれていたのですか?

KO-ICHIRO:ベースとなるものはスタジオで一発録りしたんですけど、クワイヤ仕立てにしたいと思って自分たちで声を幾重にも重ねていて、そういう意味では少し力が入っていました。ライブで大事な時にやっていくうちに、どんどん育って今の自分たちによりフィットして、時代の空気感だったりを感じさせるものになりました。自然に今こうなったんだよというものをかたちに残したかった。だから素直に、曲に気持ちを向けて、スタジオでいつも通り演奏している感じ。何回かはテイクを録りましたけど、大きくブレることもなくできたかな。意図的に「ああしてみよう」「こうしてみよう」とやっても、上手くいく曲ではないというか。今の自分たちの良いかたちが乗せられたのではないかと。

――歌は?

TAKE:シンプルだからさらっと歌うこともできるんですけど、そこにその時代だったり気分だったり、感情を込めないと意味のない曲というか。本当はこういう曲を歌わなくてすむ世界になればいいなと思いながら歌っています。

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