ZEROTOKYO、斬新なナイトクラブ体験の追求 ステージとフロアに驚きをもたらす演出システムとは
「LEDビジョンを通して“こんな演出は見たことがない”という声も」(江南)
ーーポストXR的な視覚演出技術を導入されているとのことですが、そういった演出を導入しているナイトクラブは、東京だとZEROTOKYOのほかにも存在するのでしょうか?
高良:もしかしたらイベント単位ではそういった演出を取り入れたケースはあるかもしれませんが、現時点で常設しているのは、僕が知る限りここZEROTOKYOだけです。
江南俊希(以下、江南):ZEROTOKYOでも元々、XRを活用した視覚演出技術を導入しようと考えていたわけではなく、数ある演出機器を連動させてスケールの大きい演出を実現させるという考えが先にありました。このメディアサーバーも特にXRを軸にしたシステムではなく、そういった演出はあくまで機能のひとつです。一方で、XR演出を含めたシステムの拡張性がこのメディアサーバーの魅力であることに間違いはなく、今後さらなる広がりを検討していきたいと考えています。
ーー実際にこのシステムによる視覚演出を体験したお客さんからはどのような反響がありますか?
江南:すごく好評です。特にレセプションイベントの時は、リアルとバーチャルをシームレスに繋ぐ演出にチャレンジすることをテーマに、LEDビジョンにはZEROTOKYOの拡張した空間を映し出してリアルとバーチャルの照明演出を同期させ、さらには透過型のLEDビジョンの奥にDJブースを設けることで、ビジョンに映る映像の中にDJさんがいるような演出を行いました。お客さんからは「ナイトクラブでこんな演出は見たことがない」という驚きの声も上がり、非常に楽しんでもらえました。また、この時は普段あまりナイトクラブに遊びに行かない方もたくさん来ていただいたのですが、そういった層からもすごく良いフィードバックをいただくことができました。
ーー360度LEDスクリーンは、特にどういった目的で導入されているのでしょうか?
内田:LEDスクリーンを空間の中で効果的に活用することを考えた結果、正面だけだと空間に対して物足りなさを感じる可能性が高いということで、今のような形で周囲を囲む360度LEDスクリーンを導入することを決めました。また、最近は、海外の大型ナイトクラブでも360度LEDスクリーンが導入されるケースも多くなってきていますが、やはり正面だけでなく周囲にLEDスクリーンがあることで、よりダイナミックな演出が可能になります。特にフロアのどの場所にいても、360度LEDスクリーンによって演出を楽しめることは、お客さんの体験価値としても非常に大きな意味を持つと思いますね。
ーー出演するDJやVJはイベントのオープン前にサウンドチェックや映像のチェックをされると思いますが、どういった点を踏まえておくとZEROTOKYOのシステムのスペックを有効に活用したパフォーマンスができるのでしょうか?
高良:映像だと、ZEROTOKYOでは乗り込みのVJに対して3Dシミュレーターアプリをお渡ししています。これは現場に行かずとも、実寸で制作された会場モデルおよびLEDスクリーンに、制作した映像を事前にシミュレートすることを可能にします。これによって時間や予算的な制約を超えて映像を準備できるため、ぜひとも活用してもらいたいですね。またアプリ自体も拡張性があり、今後、照明のシミュレーション機能の追加などが実装されていくと、新しい演出が生まれやすくなると思います。
石井:音響面では、ホール音響管理の方の意見を聞くことが大切だと思います。出演するDJさんの好みに合わせて、音の鳴り方を選択できるようにしています。例えば、DJさんの中にはフロアの前から後ろまでとにかく響くような爆音でDJしたいという人もいれば、海外のDJさんだと音量規制が身に染みついておられるので、基本的には耳が壊れないくらいに音量に抑えつつ、フロア全体が鳴るようにしたいという人もいます。そういったプレイされる方のリクエストに応えられるシステムが強みですね。
また、それよりも一歩前の話ですが、基本的に海外のDJさんのアーティストライダー(会場への移動時の要件やリクエストを列記したリスト)の中にはAdamsonのスピーカーの名前が多く見られます。もちろん、人によってスピーカーの好みがあり、必ずしも満足するわけではないと思いますが、そういった信頼と実績のあるスピーカーを常設していることがDJさん、エンジニア、プロモーターにとってZEROTOKYOを利用する大きなメリットだと思います。
「長時間いやすい音質の良さはぜひ体験していただきたい」(内田)
ーーZEROTOKYOでは、総計100本以上のスピーカーが各フロアに設置されているとのことですが、すべてAdamsonのスピーカーなのでしょうか?
石井:サイズや素材やユニットの構成が違うものもありますが、基本的にはそうですね。ただ、B2のスピーカーは国産のビンテージスピーカーを導入していただいています。でも、そのスピーカーに関してもビンテージ故に足りない帯域をカバーするために、Adamsonのサブウーファーを導入していただいています。
ーーまだZEROTOKYOに遊びに来たことがない一般のお客さんにZEROTOKYOの音響、照明、映像が一体となったシステムの魅力を説明する場合、どういった点を特に伝えたいですか?
内田:音に関しては、長時間いても耳が痛くなることのない圧倒的な音質の良さを提供していることをまず伝えたいですね。それと大音量の中でも会話がしやすいことは大きな強みです。また照明、映像演出に関しても、空間の大きさと相まって、スケールを感じられ、楽しんでいただけるものになっていると思いますので、ぜひ一度、実際に現地で体験していただきたいです。
ーー今後、このシステムをさらに理想的なものへと発展させる場合、どういった部分を強化させていきたいですか?
内田:基本的には今あるシステムを最大限活用していくことが課題のひとつだと考えています。現状、やはり100%活用できているかというとそうではないので、それを実現していくためにも今後もCOSMIC LABさんに協力を仰ぎながら、このメディアサーバーを活用するためのスキルを持つVJさんを多くアサインできる環境を作っていくつもりです。
高良:照明と映像の連動に関しても、まだ実装されて間もない段階です。今後は様々な演出が生まれる機会を増やしていき、ここでプレイするVJたちがこのZEROTOKYOでしかできない演出を実現するシステムになればと思っています。例えばトラッキングを可能とするセンサーなどの機材が常設され、システム自体がアップデートされていくとその可能性自体もより広がっていくと思います。特に日本には優れたライブビジュアルクリエイターが大勢いるので、ZEROTOKYOがそのハブ的な場所になり、新たな表現のアイデアが生まれてくるはずです。そのアイデアを実現できるように、システムも成長していければと思います。
※1:https://cosmiclab.jp/art/fujirock-festival21/_