04 Limited Sazabys、15年貫き続けた信念 メロディックパンクの裾野を広げた功績
振り返れば2008年に名古屋で結成されたフォーリミは、2011年のKOUHEI(Dr)の加入、そして彼らにとって初めての日本語曲となった「Now here, No where」(2013年のセカンドミニアルバム『sonor』に収録)あたりを境に、それまでいたメロディックパンク/メロコアのシーンから外の世界へとどんどん踏み出していった。「midnight cruising」や「hello」が収録された3作目のミニアルバム『monolith』、さらに「swim」をリードトラックとした4曲入りのシングル『YON』をリリースしたのが2014年、メジャーデビュー作となった初のフルアルバム『CAVU』が2015年。音楽的にはもちろんパンクに根差しながらも、その頃にはフォーリミは「メロディックパンクの新鋭」という限定的な評価ではなく、ロックシーンそのものの次世代を担うホープとしての期待を一身に受けるようになっていた。
ちなみにフォーリミとTHE ORAL CIGARETTES、BLUE ENCOUNTの3組による対バンイベント『ONAKAMA』が開催されたのは2016年。同世代にして当時のシーンをまさに駆け上っていこうとしていた彼らによる「共闘」はかなりのインパクトがあった。やっている音楽のスタイルも、おそらくは目指すべき場所も違う3組が友情とライバル心を燃やす『ONAKAMA』の構図は、そのままフォーリミがどんな闘いを繰り広げていたかを物語っている。彼らは慣れ親しんだ界隈に安住の地を求めず、果敢に外の世界へと殴り込んでいった。キャッチーなメロディやGENのハイトーンボイス、HIROKAZとRYU-TAによるツインギターのカラフルさはそのための武器となった。もともと違うバックグラウンドをもってフォーリミに参入したKOUHEIによるサウンドメイキングもそこには一役買った。
それははたから見れば「メロディックパンクの裾野を広げ、よりポピュラーな存在にしていく」ための闘いであったようにも映る。事実彼らの登場はHi-STANDARD以来と言っていいほどの画期性をもっていたわけだが(2018年の『AIR JAM』でハイスタの前のスロットでステージに立ったあの光景は、まさに「バトンが受け継がれる」瞬間だった)、当の本人たちがそんな使命感を抱えて走っていたかといえば、決してそんなことはないだろうと思う。彼らはただ、自分たちの伝えたいこと、描きたい風景、鳴らしたい音を存分に表現できる場所を探し続けていた。そのなかで彼らの音楽は自然と限られたカテゴリーをはみ出し、広い世界へとバンドを押し出していったのだろう。
たとえば彼らが日本語で歌い始めたとき、ポップなサウンドとメロディを追求し始めたとき、おそらく周囲からは声援と同時に批判的な視線も注がれていたはずだ(それが悪いということではなく、はみ出すというのはまさにそういうことだからだ)。だがそれでも、フォーリミは前に進み続けた。お仕着せの居場所ではなく、自分たちの手で自分たちの「家」を作り上げるために。
2016年にスタートしたフォーリミの主催フェス『YON FES』はまさにその「家」のようなものだ。思いっきり風通しがよく、居心地のいいその場所は、歴史を重ねてどんどん自由で、ジャンルレスで、エイジレスなものになってきている。フォーリミが作り上げた空間のなかで、若手も先輩格も、パンクもポップスもラウドロックも、すべてがのびのびと表現されているあの風景を見ていると、フォーリミなりの闘い方が大きな実を結んだことを実感する。
メロディックパンクという背景にリスペクトと愛情を注ぎながらも、それに寄りかかることなく〈信じろ 未来を〉(「swim」)と自らを鼓舞し〈前に前に〉(「Keep going」)進み続けてきた04 Limited Sazabysというロックバンド。まさにジャンルも世代も超えたアレンジャーたちと楽曲を遊び尽くす『Re-Birth』はその姿勢を貫いてきた15年の集大成としてあまりにもふさわしい。
■配信情報
04 Limited Sazabys『Re-Birth』
リリース日:2023年10月18日(水)
配信URL:https://04ls.lnk.to/Re-Birth
04 Limited Sazabys『Re-Birth』特設サイト
https://www.04limitedsazabys.com/feature/re-birth