サザンオールスターズ、一曲も例外なく観客を熱狂させた2時間半 45年の重みを感じさせる地元・茅ヶ崎での特別なライブ

・桑田、MCのたびに、ライブビューイングが行われていることに触れ、カメラの向こうの映画館のオーディエンスに声をかける。

 それから、10月1日は茅ヶ崎に初めてのコミュニティFM「茅ヶ崎FM」が誕生した日でもあった。開演前の画面で告知が流れ、桑田もMCで紹介。当日朝10時の放送スタートの第一声は、桑田による開局宣言コメントと、桑田が選曲した加山雄三「君といつまでも」だったという。

・そして、この10月1日は、アントニオ猪木が亡くなってからぴったり1年の日でもあった。

 ゆえに桑田は、MCでそのことに触れて追悼の意を表し、アンコールで「勝手にシンドバッド」を終えたあとは、「1、2、3、ダーッ!」の掛け声でライブ全体を締めた。

 また、本編ラストの「マンピーのG★SPOT」で、桑田がヅラを装着して暴れ回る、というおなじみの演出は、首に赤いタオルをかけた試合時の猪木の形態模写で始まった。なお、今回のヅラは、「爺」のロゴに車のフロントバンパーに「相模33 ち ・・ 45」のナンバープレート、という仕様。曲の締めでは桑田がハンディカメラを操作、その画がLEDモニターに大写しになる、という演出もあった。

・もうひとつのおなじみの演出は、21曲目「みんなのうた」で行われた。

 そうだ。放水だ。画面いっぱいに「水が出ます! ご注意ください!!」という文字が表れ、桑田がスタッフに支えられながら、消防車レベルにごついホースで客席に放水を繰り返す。真夏ではない、つまり猛暑ではないのに放水したことに気がとがめたのか、その後、何度も謝る桑田に、オーディエンスは拍手を送った。

・アンコールの1曲目「ロックンロール・スーパーマン~Rock’n Roll Superman~」が演奏されたのは、4デイズの中でこの日だけだったらしい。

 続く「Ya Ya(あの時代(とき)を忘れない)」の間奏あたりでは、歌詞に合わせてなのだろう、若かりし頃のサザンの演奏シーンが画面に映し出された。

 そして、「希望の轍」を経ての、ラストの「勝手にシンドバッド」では、間奏のコール&レスポンス&シンガロングの中に、桑田の先導で「フレ!フレ!茅ヶ崎!」のコールも織り込まれた。

・1曲目「C調言葉に御用心」、本編ラストの「マンピーのG★SPOT」、ラストの「勝手にシンドバッド」の計3回、ステージ上部から花火が上がったが、終演後にも花火あり。

 「1、2、3、ダーッ!」を終え、ステージを去る前に桑田が「このあと、向こうの漁港の方から花火を上げてくれるそうなので。秋の空に花火が打ち上がるところをご覧ください」と紹介する。

 そして「また帰ってきまーす、バイバイ!!」と叫び、もう一度茅ヶ崎とオーディエンスに感謝を伝え、ステージを下りた。

・前述のとおり、新曲3曲のうち「歌えニッポンの空」は12曲目、「盆ギリ恋歌」は20曲目に披露された。

 そして「Relay~杜の詩」は終演時、MV撮影や、今回のライブのリハーサル、前日までの公演の様子を撮ったドキュメンタリー映像と共にエンドロールが流れる時の音楽として用いられた。つまり、生での演奏はないが、オーディエンスがこの場で最後に聴く曲として配置された、ということだ。

 茅ヶ崎駅を下りてから会場に到着するまでの街並み。サザン通りやサザンビーチなどの標識。普段からコンサートの会場になることが多いような、いわゆるスタジアムとは異なる、茅ヶ崎公園野球場ならではの佇まいや空気感。

 その場所で、18,000人という、普通なら「大観衆」だがサザン的には「ちょい少なめ」なオーディエンスと共にくり広げられるサザンオールスターズのパフォーマンス。上記のようなさまざまな演出。45年前の曲も、31年前の曲も、27年前の曲も、18年前の曲も、8年前の曲も、今年出たばかりの曲も網羅した、ライブで定番の曲もちょっとレアな曲も含めて、1曲の例外もなくオーディエンスを熱狂させ続けるセットリスト──。

 『茅ヶ崎ライブ』というのが、長いサザンの歴史の中にあっても、いかに特別なライブであるか、ということ。45年という年月の価値、重み。そして、45年前も、現在も、サザンオールスターズというバンドが存在しているということ──。

 そのような喜びを、2時間半強、全26曲にわたって、浴びせ放題浴びせてくれた時間だった。それぞれの時代の横浜アリーナや東京ドーム、無期限活動休止の時と活動再開の時の日産スタジアム、1985年1月9日の広島郵便貯金会館(自分が初めて生で観たサザン)など、強く記憶に残っているサザンオールスターズのステージはこれまでにいくつもあるが、それらを超えて忘れられないライブだったかもしれない。

 アンコールで「Ya Ya(あの時代(とき)を忘れない)」を歌い終えた桑田は、スタッフや茅ヶ崎市やオーディエンスに感謝を伝え、そのMCをこう締めてから、次の「希望の轍」に入った。

「また楽しい逢瀬がかないますよう、サザンオールスターズ、次なる計画を練りまして、みなさんにご報告することを、お約束いたします」

 その日を楽しみに待ちたいと思う。

サザンオールスターズの「茅ヶ崎ライブ2023」公式セットリストプレイリストが公開中!
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