SPECIAL OTHERS、日比谷野音に響かせたシンガロング 9カ月連続リリースの新曲もふんだんに披露したツアー初日を振り返る

 短い休憩を挟み、第2部は「Fanfare」からスタート。9カ月連続リリースの幕開けを高らかに告げる、まるでファンファーレのようなメインテーマに拳を突き上げて応えるオーディエンスたち。曲が進むにつれ、プログレッシブに展開していくリズムはまるで安全装置のぶっ壊れたジェットコースターのようだ。

 細かく刻まれるハイハットの上を疾走するエレピのリフ。おなじみ「Good morning」のイントロが流れ出すと、どよめきのような歓声とともに客席のあちこちからハンドクラップが自然発生的に鳴り始めた。〈Close your eyes. Take my hands. Can you fly away with me?〉と歌われる、キャッチーなリフレインをシンガロングして会場が一つに。コロナ禍でひさしく見られなかったその光景に思わず胸が熱くなる。

 彼らの代表曲であり、ライブの人気曲「IDOL」を演奏する頃にはあたりはすっかり暗くなっていた。まるで洪水のように音の渦が押し寄せてきたかと思えば、一瞬にして静寂を生み出す4人の演奏は“人力EDM”とでも言うべきか。躍動感たっぷりのリズムと、切なくもどこか懐かしいメロディのコントラストはスペアザの真骨頂である。

 「ステージはそんなに暑くもなくてちょうどいいくらいなんだけど、そっちはどうなの? ちょうどいいでしょ? いやー、よかったよかった。なんてツイてるんだ俺たち」と宮原が喜びの声を上げる。「野音ってさ、大先輩たちが数々の伝説を作ってきたところでしょ。今日のライブも、その“伝説”の一部に入れてもらうことはできませんか?」と芹澤が客席に呼びかけると、ひときわ大きな歓声が上がった。

 「1年ぶりに野音をやって、皆さんの顔色が良くなってきているというかね」と柳下。「こうやって皆さんに囲まれ、いい笑顔を見てるとステージ上ですごい人になれたような気がしています」と言って、「ニコニコの日」の第5弾シングル「Bed of the Moon」を演奏し本編終了。鳴り止まないアンコールに応えて再び4人がステージに登場し、それまで喋らなかった又吉が「やっぱり、ちょっと喋るわ」と言って話し出す。ところが柳下が、音をミュートし忘れたまま次にやる予定だった「Laurentech」の最初のコードを鳴らしてしまい、客席のあちこちから歓喜の声が上がり始めて又吉の挨拶は強制終了となるハメに。いつもとぼけたムードを醸し、会場を緩めてくれる又吉は“最後の野音”でも彼らしさ全開だった。

 目まぐるしく展開していくそのセクションごとにオーディエンスが湧き立つ「Laurentech」。〈You give me what I am you know it is Laurentech〉と歌われるメロディをシンガロングして、この日のライブは終了。

 「どうもありがとうございました。幸せでした。普通のおじさんに戻ります!」と宮原。ここからスタートしたツアーは全国計11会場を回り、12月9日の那覇 桜坂セントラルで幕を閉じる予定である。それまでに「ニコニコの日」の新曲たちは、ステージ上でどのように進化していくのか。その過程も楽しみだ。

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