『NARUTO THE LIVE』に向けて徹底予習!(3)KANA-BOON、チコハニ、ハンブレッダーズらと『BORUTO』のシンクロ性
木ノ葉隠れの里に生まれた忍者・うずまきナルトを主人公に、2002年10月からアニメ放送がスタートした『NARUTO-ナルト-』、続く『NARUTO-ナルト- 疾風伝』は、2作合わせて実に720話という大長編スペクタクルの幕を、15年後の2017年3月に閉じた。『週刊少年ジャンプ』における原作の連載もすでに2014年に終了していたが、海外での人気も高い作品に続編の要望が高まるのは当然のこと。結果、ナルトの息子・うずまきボルトを主人公にしたスピンオフ続編『BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS』が、岸本斉史の原作・監修のもと、アシスタントであった池本幹雄が作画を担当して2016年に連載開始。同名のTVアニメも2017年4月にスタートし、2023年3月に293話にわたる第一部が終了した。
『NARUTO』の最終戦争となった第四次忍界大戦から15年後を舞台に、主要キャラクターの子供たちが活躍する物語だけあって、『BORUTO』では従来のバトル要素や仲間との絆のみならず“家族”を取り巻く人間関係の、さまざまな形がフィーチャーされているのが大きな特徴。すでに第二部の制作も決定しているということで、続編への期待が高まる。そんな中、9月2日・3日に幕張メッセイベントホールで開催されるのが『NARUTO THE LIVE』だ。アニメ放送開始20周年イヤーを締めくくるメモリアルイベントとして、『NARUTO』シリーズのオープニング/エンディングテーマ曲を担当した7組のアーティストが集う豪華なステージは、まさに2日限りの夢の祭典。その出演者の中から、今回は『BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS』のテーマ曲を手掛けた3組の4曲をセレクトし、物語とのシンクロ性を検証してみたい。
まず、1話から26話という物語冒頭のオープニングテーマとなったのが、KANA-BOONの「バトンロード」。その時点でKANA-BOONは『NARUTO』シリーズとすでに3曲もタイアップしている“ベテラン”だけあって、物語の始まりを飾るにふさわしい爽快な疾走感といい、主人公であるボルトの置かれた状況や心情と絶妙に重なるリリックといい、初代オープニング曲として“欲しい”ポイントを十全に備えている。『NARUTO』シリーズでは頻出する光・火・風・影といった文字が散りばめられ、タイトルの“バトン”が『NARUTO』世代の親から『BORUTO』世代の子へと想いを引き継ぐ様を表しているのは言わずもがな。うちはサラダやミツキといったクラスメイトもそれぞれに“親”との因縁を抱える中、火影として木ノ葉隠れの里を治める父・ナルトからボルトが受け取った“バトン”は、とりわけ重かった。入学したアカデミー(忍者学校)で「火影の息子」「七光り」と陰口を叩かれ、存在の大きすぎる父に反発しがちな序盤では、「どんな道を選ぶのか、おやじとか関係ねえよ。俺は俺の道を行く。これは俺の物語だ!」という台詞も。そんなボルトの心情に2番Aメロの〈君だけの軌道に添うものだけは手離さないでよ〉というフレーズがピタリと寄り添い、サビに現れる〈咲かせれば偉大な伝承花〉というワードが心励ましていく。また〈見たいのさ この目で新章を〉と歌う3サビを、あえてTVオンエアバージョンで起用しているのも見逃せない。
そして『BORUTO』のもう一人の主人公とも言えるカワキが登場し、悲惨な境遇から救い出されてボルトたちの仲間となった206~230話(2021年放送)でオープニングテーマに起用されたのが、CHiCO with HoneyWorksの「我武者羅」だ。幼い頃から『NARUTO』シリーズが大好きだったというCHiCOが、オファーを受けてお披露目を決めた秘蔵曲という経緯もあり、”HEY! HEY!”と拳が突き上がるチコハニ史上最強のロックチューンに。特に206話から220話の「カワキ編 大筒木覚醒」は、カワキを苦しめてきた謎の組織・殻とのバトル、その呪縛からの解放が一つのテーマでもあり、楽曲の勢いとCHiCOの切なさ滲むエモーショナルな歌唱は、戦いの中で大きな人間的成長を果たしていくキャラクターたちの姿を彷彿させずにはおかない。〈一人じゃなかった 繋がるんだ〉という2番のBメロは作中「チャクラとは繋ぐ力」と語ってカワキを心酔させたナルトの台詞とリンクし、また、チコハニ特有の青春感も思春期の真っただ中にいるボルトたちの空気感にピッタリ。〈大人の願い なぞろうなんて そんな大義必要ない 自分にただ正直に 歩んで行けばいい〉という反抗が、2番で〈“子供の思い分かるはずない” 井の中のガキが騒いで 階段のぼる度知る 大人は戦ってた〉と受容に転換するAメロなどは、チコハニらしさと『BORUTO』らしさを両立させているのが出色だ。