Icekun「Selfish girl」、バイラルチャート好調 “エモさ”だけでは片づけられない楽曲の魅力

Selfish girl

 Icekunの名前を「Selfish girl」のヒットで初めて知った方も多いのではないだろうか。実際筆者もそのひとりである。ネット上にもあまり情報が見つからず、それでも諦めずリサーチを続けると、どうやら音楽プラットフォーム・SoundCloudを中心に楽曲を発表しているアーティストであることが見えてくる。投稿されている楽曲の中で最も古いものが約1年ほど前であることから、最近音楽活動を活発化させたアーティストだろうか。そうすると謎の新人シンガー・ラッパーといったことになるが、その楽曲クオリティは侮れない。唯一の頼りとなるSoundCloudにアップされている楽曲群を聴いてみると、いずれの楽曲からも「Selfish girl」に通底するエッセンスが抽出できることに気づく。それは「メロウなトラック」と「オートチューンのかかったボーカル」だ。ローファイヒップホップにもリンクするゆったりとした哀愁あるトラックに、カニエ・ウェストの「808s & Heartbreak」を彷彿とさせる印象的なボーカルのオートチューン処理。この2つが融合することによって「Selfish girl」で感じるいわゆる“エモさ”が演出される。しかし、単純なエモさだけで片づけられないのが「Selfish girl」の魅力である。遊び心のあるトラック、特にイントロ部分に注目してほしい。オートチューンがかかったボーカルを音階ごとにチョップして、シンセの音色として利用したイントロ部分は、非常にキャッチーでありながら、新しい耳障りを感じさせる。ボーカルをひとつの音として捉え、イントロの旋律に利用する発想が見事に功を奏した結果と言えよう。また、ここで挙げたトラックの特質だけでなく、リリックにも目を向けてほしい。ストレートな別れのラブソングに仕上がっている心の叫びのような血の通ったリリックと、無機質なオートチューンのかかったボーカルのアンバランスさこそ、楽曲全体の切なさを演出しているように思える。

 これまでのチャート推移から見ても、さらなるヒットの兆しが見える「Selfish girl」。まだサブスクではこの1曲のみの配信となっているが、ぜひSoundCloudをディグって「Selfish girl」以外の楽曲もチェックしてみてほしい。

※1:https://charts.spotify.com/charts/view/viral-jp-daily/2023-08-23

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