ハンブレッダーズが語る、音楽の原体験としての『NARUTO』シリーズ 『BORUTO』ED「またね」に込めたメッセージも

 1999年から2014年にわたり、『週刊少年ジャンプ』で連載された岸本斉史の代表作『NARUTO-ナルト-』。同作は、2002年10月にアニメ化され、その後も『NARUTO-ナルト- 疾風伝』、『BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS』が放送され、愛され続ける長期シリーズとなった。昨年10月、アニメの放送開始20周年を迎え、そのメモリアルイヤーの締め括りとして、2023年9月2日、3日の2日間にわたり、歴代のテーマ曲を手掛けた7組のアーティストが出演するライブイベント『NARUTO THE LIVE』が開催される。

 今回、9月2日に出演予定のハンブレッダーズにインタビューを行い、4人それぞれの『NARUTO』『BORUTO』に対する思い入れや、彼らが『BORUTO』2023年1〜3月エンディングテーマとして制作した「またね」に込めた想い、また、ライブ当日に向けた意気込みについて聞いた。小学生の時に『NARUTO』と出会った直撃世代の彼らの熱い想いに、ライブに参加予定の方はもちろん、『NARUTO』『BORUTO』ファンの方々にも触れてみてほしい。(松本侃士)

音楽の原体験の一つでもある『NARUTO』

――はじめに、皆さんそれぞれの『NARUTO』『BORUTO』との出会いについて聞かせてください。

ムツムロ アキラ(以下、ムツムロ):最初の『NARUTO』との出会いはアニメで、曲とセットで覚えていますね。当時小3で、アジカン(ASIAN KUNG-FU GENERATION)の「遥か彼方」の「遥か」が読めなくて、なんで平仮名で書いてくれないんやろうって思ってました(笑)。それで、僕、初めて買ってもらった漫画が『NARUTO』なんですよ。アニメを観て両親にねだって買ってもらったんですけど、当時は、アニメのすぐ後のストーリーが漫画で展開されると思ってて、実際に漫画を読んだら全然知らないキャラばっかりで、漫画ってこういうもんなんだって初めて知った体験でしたね。

木島:僕は、小3か小4の時に、よく親と家の近くのショッピングモールに行ってて、親の買い物に付き合うのが嫌だったんで、いつも本屋さんで待ってたんです。今ではもうできないんと思うんですけど、当時はその本屋で立ち読みができて、その時に『ジャンプ』と初めて出会いました。立ち読みというスリルを小学生ながらに味わいながら、初めて『NARUTO』に出会って、「サスケ奪還編」のところを読んで、そこからアニメを観始めた感じでした。

でらし:僕の場合、『NARUTO』のアニメの第1話を、夕方にテレビで観た時のことを今でもはっきりと覚えているんですけど、その後しばらくの間『NARUTO』を全然通ってなくて。でも、アジカンやサンボマスター、FLOWが担当している主題歌はもちろん知っていました。だから、すごくアニメが流行ってるっていう認識はずっと自分の中にあったんです。で、ちゃんと『NARUTO』を読み始めたのが大学生の時で、たしかもうその時には漫画の連載がクライマックスに近かったんですけど、公式のアプリがあって、それで毎日少しずつ読み進めて。そしたらもう途中からおもしろすぎて我慢できなくなっちゃって、単行本で一気に読んだのが、本当の意味での『NARUTO』との出会いでした。

 ただ振り返ると、アプリで読み始める前とかにも、大学生の時に僕やムツムロさんがたまってた友達の家があって、よくみんなでプレステの『ナルティメットヒーロー』をやってたんですよ。たぶん今でもできると思います、指が覚えてるので(笑)。漫画を読む前からゲームで『NARUTO』の世界には触れていたので、読み進めていく中で、「このキャラってこういう大事な役なんだ」という驚きが何度もありましたね。

ukicaster:僕はアニメ先行で、それこそ第1話から観ていた覚えがあって、その時からどっぷりはまっていたわけではないんですけど、さっき話題に出ていたように『NARUTO』のゲームが当時めっちゃ友達の間で流行ってて。と言っても、誰かが持っていたわけではなくて、近所の電気屋さんのゲームコーナーに『激闘忍者大戦!』の体験版があって、学校が終わったら友達とよくやりに行っていた思い出が今でも残ってます。

――それぞれの『NARUTO』への思いがよく伝わってきました。先ほど話が出ましたが、アジカンやサンボマスター、FLOWをはじめ、これまで名だたるアーティストたちがアニメ『NARUTO』『BORUTO』にテーマ曲を提供してきた歴史があります。そうした系譜に連なる形で、『BORUTO』のエンディングテーマを担当すると決まった時は、どのようなことを感じましたか?

ムツムロ:初めて買ってもらったCDが『NARUTO』のテーマ曲を集めたベスト盤で、僕にとって『NARUTO』は、音楽の原体験の一つでもあるんですよね。なので、『BORUTO』のエンディングテーマを担当することが決まった時は、不思議と懐かしい感じがしました。全てはここから始まってるんだよな、って。

――『NARUTO』のベスト盤の中で、当時、特によく聴いていた曲はありますか?

ムツムロ:どれも好きだったけど、やっぱりアジカンの「遥か彼方」はすごくインパクトが強くて。それと、FLOWの「GO!!!」は、クラスみんなで歌ったり運動会で踊ったりしていた曲だったんで、その2曲はいろんなことを思い出しますね。

 あと、ORANGE RANGEの「ビバ★ロック」もよく聴いてました。初めて家族でカラオケに行った時にその曲を歌おうと思ったら、僕がよく聴いていたアニメで使用されていたバージョンとORANGE RANGEのアルバムに収録されているバージョンで歌詞が違って。初めて人前で歌おうとしたら何も歌えず出鼻をくじかれるという体験をしたという思い出もあって、この曲は印象に残っています。

ASIAN KUNG-FU GENERATION 『遥か彼方』
FLOW「GO!!!」MUSIC VIDEO (TVアニメ『NARUTO -ナルト-』OPテーマ)
ORANGE RANGE『ビバ★ロック』MV

――『NARUTO』シリーズへの強い思い入れが伝わってきます。ムツムロさんが、「またね」(『BORUTO』2023年1〜3月エンディングテーマ)の歌詞を書く際に、大切にしたことや意識していたことがあれば聞かせてください。

ハンブレッダーズ「またね」Music Video | アニメ「BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS」エンディングテーマ

ムツムロ:『NARUTO』『BORUTO』を改めて観返した時に、ナルトもボルトも、自分よりも強大な存在に果敢に立ち向かっていっているという点が共通していて、そういう姿勢は、ちょっと大袈裟かもしれないですけど、ロックバンドと通じるところがあるなと思って。僕、同調圧力だったり、自分より大きな力が降りかかってきた時にグッと拳を握ってファイティングポーズをとっちゃう癖があるんですけど、それと通ずる部分があるような気がして。そうしたシンパシーを感じながら「またね」の歌詞を書いたことを覚えています。

 例えば、〈君がさよならを言いたいなら/僕がまたねを付け足す〉という部分には、現実にはどうしようもない別れがつきものだけど、そうした流れに対してしっかりと抗いたいという気持ちを込めています。ネガティブなことがあった時に、それをどうにかしてポジティブに捉えられないかと僕自身いつも考えていて、この曲でもそうした考えを書いています。

 今回は『BORUTO』のエンディングでしたが、根幹はずっとそういうことを歌い続けている気がするんですよね。「大丈夫だぞ」って、曲ごとに違う言葉で毎回言っているバンドだと思います、ハンブレッダーズは。そのまま「大丈夫だよ」って言うのは直接的すぎてかっこ悪いから、いつも表現を変えている。そういう意味においては、歌詞を書く上での根本のスタンスは今回も変わっていないと思います。

――「またね」は、ハンブレッダーズの揺るがぬメッセージが貫かれていながら、同時に、ボルトとカワキの関係性についても歌われているようにも感じました。

ムツムロ:もちろん、意識しながら書いてますね。僕、原作を読んで、カワキがめっちゃ好きだったんですよ。生まれ育った境遇ゆえにずっと葛藤している感じや、愛情を素直に受け入れられない自分と受け入れたい自分の間で行ったり来たりしている感じを、すごく魅力に感じて。そうした境遇の違いを飛び越えて分かり合えるんじゃないか? という想いを「またね」で書いたつもりです。

関連記事