リュックと添い寝ごはん、自信が芽生えて変化した制作スタイル 松本ユウ&堂免英敬が明かす、挑戦的なバンドの現在地

「全員で音を追求していく時間がすごく増えた」(堂免)

――「反撃的讃歌」も「Be My Baby」も、ベースラインがめちゃくちゃいいですよね。まさに真っ直ぐ行くところと色をつけるところのバランスがすごくいい。

堂免:ありがとうございます。嬉しい!

――その「Be My Baby」は松本さんがおっしゃったように全然違うことを歌っている曲ではあるんですけど、通じ合う部分もすごくあるなと思うんです。これはどんなところから生まれてきた曲なんですか?

松本:とにかくテーマは純愛で。最初は、ドラマのタイアップも決まったから恋愛ソングを書いた方がいいのかなって思ったんですけど、ドラマを観て「これは恋愛じゃない。純愛だな」と思って、キーワードにしていきました。

――恋愛と純愛の違いって、松本さんの中ではどういうものですか?

松本:純愛は何かに対して本当に真っ直ぐな気持ちのことだと思います。恋愛は僕の中のイメージでは、ちょっと小洒落た感じがするんですよね。ちょっと原石じゃない感じがするというか。今回はその原石の部分を書きたいなと思ったんですよね。そう思うと結構書きやすかったなと思います。

堂免:でも、この曲も結構いろいろコロコロしたんですよ。

松本:コロコロしたね。

堂免:その結果、一番ハッピーになったなって。「反撃的讃歌」とは違う方向だけど、伝えたいことが真っ直ぐ伝わる。歌詞とメロディがベストマッチした曲になったと思います。

リュックと添い寝ごはん / Be My Baby [Music Video]

――その「コロコロした」というのは、要するにメンバー間で解釈が分かれて、やり取りをしながら作っていったということですよね。それはよくあるんですか?

松本:最近はよくありますね。僕が意見をより言いやすい環境にしたいという気持ちもあって、そうなっているのかな。

――そういうときのバンドの空気はどういう感じになるんですか?

松本:結構ピリッとするんですよ。沈黙が5分続く、みたいな。

堂免:全然煮え切らないまま終わる場合もあるよね。ここでは結論が出ないから、1回家に帰って各々聴いてみよう、みたいな。以前は本当に「ここはこれで、ここはこれで」みたいに指示を出して進んでいく感じだったので、あまり反対意見も出なかったんですけど、それは変わっていってるなと思います。

――その違いは音に出ていますよね。リュックと添い寝ごはんの鳴らす音が『四季』までとは明らかに変わった。『四季』は松本さんの頭の中で鳴っているものを、いかにバンドで形にするかということを一生懸命やったアルバムだったと思うんですよ。でも「反撃的讃歌」と「Be My Baby」に関しては、その要素もあるけど「やっぱり4人でバンドだよね」っていう方が勝っていく感じがする。音がバチバチぶつかってグルーヴが生まれていくみたいな、前のめりで熱いニュアンスがすごく新鮮ですよね。

堂免:今まではできた曲に対して、自分なりの弾き方で弾いてみるみたいな感じだったんです。でも今は、全員で音について追求していく時間がすごく増えた感じがします。

――当然そこで松本さんが主導権を握ると思うんですけど、誰が一番声が大きいんですか?

松本:それはもうヒデですね。曲全体を通して、ヒデが常に「こっちの方がいいんじゃない?」とか「これは嫌だ」とか言ってくることが多い。大変ではあるけど、その意見も「まあわかるしな」っていうときもあるし。ぬん(Gt)さんも曲全体に対して言うこともあるけど、どちらかというと彼自身のギターの音とかフレーズについて話し合うことが多いですね。

堂免:今まではやっぱり、どこかで「ユウがそう言うならそうなんだろう」と思っていた節があって。でも、それだけではバンドとして成長できないなと思って、「はっきり言うようにしよう」って。その転換のきっかけが『四季』を作ったことだったんです。

「これまでの“今を生きていくことが一番”とは感覚が違う」(松本)

――やっぱり『四季』を作って間違いなく4人とも手応えを感じたんだと思うんですよね。そして同時に、もっと先に行きたいっていう気持ちが湧いてきた。それは歌詞にもすごくよく出ている気がして。どちらも〈今〉という言葉が出てきますけど、これまで歌ってきた「今」とは違うニュアンスがありますよね。より前に向かって「今を越えていく」みたいな感覚がすごく強い。

松本:確かにどちらの曲も、先がしっかりと見えている「今」みたいな感じですね。これまではとりあえず今を生きていくことが一番だよって歌ってたんですけど、ここで書いているのは、先の未来に問題が生じていることがわかっている上での「今」なんだと思います。書いているときも感覚は違いました。

――それはきっと、今バンドをやる上での気持ちともリンクするものだと思うんですよね。例えば「Be My Baby」も、確かに二人を主人公に描かれた歌ではあるけど、決してその関係だけに閉じていない。バンドとリスナーのこととか、バンド内のこととか、いろいろなものを重ねて聴くことができる強さを持ったものになったんじゃないかと。

松本:そうですね、いろんな純愛に分散していってるなという感じがします。「Be My Baby」っていう曲名も、この曲を作ってるときにレコーディングエンジニアさんに赤ちゃんが生まれたこともあって、このタイトルになったんですよね。

堂免:歌録りの前日に生まれたんです。

松本:なので、いろんな愛の形の曲になったなって思います。

堂免:しかも赤ちゃんだけじゃなくて、恋人とか、愛しい人を総称して“ベイビー”って呼んだりするじゃないですか。だから「Be My Baby」にもいろんな意味があるなって。

松本:ヒデがこのタイトルを最初に提案してくれたんです。それで同じタイトルの曲があるのかなって調べたら、COMPLEXの曲が出てきて。

――そうですね。吉川晃司さんと布袋寅泰さんのユニット。

松本:その印象だとちょっと違うのかなと思ったんですけど(笑)、その下にThe Ronettesの曲も出てきたので、そっち寄りな「Be My Baby」のイメージで。

――この曲の歌詞をよく読むと、決して愛に溢れている幸福な曲だけではないというのもポイントで。〈消えない消せない過去の中/溺れないように〉とか、〈消えてなくなる 今の中/はじまりの歌を〉とか、Bメロの部分では見える風景が変わる感じがありますよね。

松本:なんか、人間を表したいと思っていたんです。人生、ずっとポジティブなことばかりじゃないし、誰かを思っているだけでもないというか。どこかにネガティブな自分もいるし、後ろめたさを感じたりもすると思うので。それをここで表現したいなと思ったんですよね。

――今おっしゃったことって、今のリュックのポイントだなと思うんです。「Be My Baby」で歌っていることは、「生活」で歌っていたこととも通じると思うんですけど、日々を愛していくことの裏側にあるしんどさも、ちゃんと歌い込んでいるのがすごく大きなことなのかもしれないなって。

松本:ああ、言われてみれば。

堂免:18〜19歳の頃じゃ歌えなかったかもしれないね。

――この2曲を経て、今も曲はどんどん作っている状態なんですか?

松本:今も作っていて、ざっくりとしたデモだけでも40曲ぐらいあります。それをどう出していこうか、どうアレンジしていこうかっていうタイミングですね。まだどうなるかわからない曲ばっかりなんですけど(笑)。中華っぽい曲もあったりするし。

堂免:でも、別のリュックと添い寝ごはんを見せることができそうだなって思うと、楽しみですね。

――ちなみにお二人は最近はどんな音楽に興味を持っているんですか?

松本:今月よく聴いた曲のプレイリストは116曲あるんですよ。僕はなんだろう……bonobosの解散ライブの音源が出たので、そればかり聴いているかな。あとはもう一度、ミツメブームが来ていたりします。

堂免:僕は、エルヴィス・プレスリー……!

――ええ!?

堂免:原点に戻りすぎて、キング・オブ・ロックンロールをずっと聴いています。あとピーター・マクポランドっていう宅録系のシンガーソングライター。シンプルに曲がめっちゃいいです。

松本:あとはThe Bagpipes、よかったよね。

堂免:うん、よかったね。

松本:まだアルバム1枚しか出してないんですけど、全曲いいんですよね。

――相変わらず振り幅がすごいですね(笑)。それがまたリュックの音楽にどう反映されていくのか、楽しみにしています。

松本:はい、ガンガン頑張ります!

■リリース情報
リュックと添い寝ごはん
New Single「Be My Baby」
https://jvcmusic.lnk.to/bemybaby

New Single「反撃的讃歌」
https://jvcmusic.lnk.to/hangekitekisanka

■全国ツアー情報
リュックと添い寝ごはん
『ワンマンツアー2023 夏 “baby”』
8月11日(金・祝)大阪・味園ユニバース OP 16:00 / ST 17:00
8月18日(金)北海道・札幌PENNY LANE24 OP 18:30 / ST 19:00
8月23日(水)愛知・NAGOYA CLUB QUATTRO OP 18:00 / ST 19:00
9月3日(日)宮城・仙台darwin OP 16:30 / ST 17:00
9月9日(土)石川・金沢GOLD CREEK OP 16:30 / ST 17:00
9月16日(土)岡山・CRAZY MAMA 2ndROOM OP 16:30 / ST 17:00
9月18日(月・祝)福岡・LIVEHOUSE CB OP 16:30 / ST 17:00
9月28日(木)東京・Spotify O-EAST OP 18:00 / ST 19:00

チケット
https://eplus.jp/sleeping-rices/
全自由¥4,000(税込/各会場、ドリンク代別途必要)

■限定リリース情報
ツアー会場限定EP『BABY TUNES』
全国ツアー会場限定販売
価格:¥1,000(税込)
<収録曲>
01. 反撃的讃歌 (house ver.)
02. Be My Baby (house ver.)
03. 恋をして (house ver.)
04. 電波塔 (house ver.)
05. BONUS TRACK

リュックと添い寝ごはん オフィシャルサイト

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