ナオト・インティライミ、wacci・れん・Rin音と繰り広げた音楽的冒険 ジャンルレスな交流で深化するアイデンティティ

 ナオト・インティライミがニューアルバム『アドナイン』をリリースした。昨年11月に前作『虹色∞オクターブ』を発表。12月に神奈川・ぴあアリーナで2Daysライブ『ナオト・インティライミ@ぴあアリーナMM ティライミワールド カーニバル2022~絶対に見逃せないLIVEがそこにはある~』を開催。楽曲、ライブの両面でさらに表現の幅を広げてきたナオト。前作からわずか8カ月というインターバルで届けられた本作『アドナイン』においても彼は、果敢に音楽的なトライを繰り広げている。

 タイトルの『アドナイン』とは、音楽のコードの種類“Add9th”に由来する。“Add9th”はテンションコード(四和音の定番のコードに1音を加えたコードのこと)の一種。楽曲のなかで効果的に使うことで、透明感、甘さ、切なさなどを感じさせる響きを重ねることができる。音楽でいうドミソは人生における衣住食。そして Add9thはプラスアルファだけれども人生を素敵に彩ってくれるもの。このアルバムもあなたの人生の“Add9th”であって欲しい―このタイトルには、ナオト自身のそんな思いが込められているという。

ナオト・インティライミ「ひそかに絶好調(with wacci)」Lyric Video

 アルバム『アドナイン』のもう一つの特徴は、コラボレーション楽曲だ。「ひそかに絶好調(with wacci)」「愛してた(feat.れん)」「EQ(feat.Rin音)」。幅広いアーティストとの出会いから生まれた楽曲が、本作の豊かな響き―まるでテンションコードのような―につながっている。

 「ひそかに絶好調(with wacci)」は、作詞・作曲/橋口洋平、ナオト・インティライミ、編曲/村中慧慈、ナオト・インティライミで制作。昨年メジャーデビュー10周年を迎えたwacciは「恋だろ」「別の人の彼女になったよ」などのヒット曲で知られる5人組バンド。ナオトがバンドと共作したのは、この曲が初めてだ。

 ナオトが橋口洋平(Vo/Gt)に投げかけた“ひそかに絶好調”というワードから始まったというこの曲は、いいこと、うれしいことがあっても表立って喜べなかったり、嫌なこと、悔しいことがあっても表に出せない日本人特有の(?)在り方をテーマにしたミディアムチューン。心地よく、切ないメロディと“わかるわかる!”と共感を呼ぶ歌詞のバランスが素晴らしい。生々しく、リラックスした雰囲気のバンドサウンドとボーカルの掛け合いからも、両者の良い関係が感じられる。

ナオト・インティライミ「愛してた(feat.れん)」Music Video

 「愛してた(feat.れん)」は作詞・作曲/ナオト・インティライミ、編曲/Naoki Itaiで制作。原曲は2012年にリリースされたナオトのシングル曲となる。

 お互いに強く思い合い、“愛してる”という気持ちを残しながらも離れなくてはいけない。そんな切ない関係性を情感豊かに描いたこの曲は、ここ数年、TikTokなどで10~20代のリスナーを中心に再び注目を集めている。リメイクバージョンにフィーチャーされたのは、れん。リアルな感情を映し出す歌詞、豊かな表現力をたたえたボーカルによって注目を集めている2003年生まれのシンガーソングライターだ。

 れんの主な活動フィールドは、SNS。TikTokでバズった「愛してた」を、Z世代を代表するアーティストとともにリメイクすることは、世代を超えて優れた楽曲を受け継ぐという意味も含んでいると思う。すべてのフレーズにしっかりと感情を込め、互いの思いを増幅させる二人のボーカルの共鳴も、この曲の聴きどころだ。

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