RHYMESTER、ジャンル・性別・世代を超える“キング・オブ・ステージ”の佇まい オープンマインドの精神が繋ぐ音楽の輪

 アルバム表題曲である「Open The Window feat. JQ from Nulbarich」は、世界の“今”を象徴したミディアムナンバー。ウクライナ問題をはじめとする様々な社会問題を憂いているのは、決して雲の上のジョン・レノンだけではない。世界中の誰もが1日でも早い終結を望んでいるはず。僕らはすでに武器を手に持っている。ならば、世界とつながることができる窓口=SNSから、愛を叫ぼうと呼びかける。これこそが正しいSNSの使い方であり、現代を生きる僕らの戦い方だ。宇多丸とMummy-Dのラップは冷静でありながらも力強く、そこからこぼれ落ちる怒りが聴く者の胸を揺さぶる。シリアスなラップから連なるJQが歌うサビは、一転浮遊感たっぷりのファルセットとコーラスが秀逸。テレビやスマホから流れるニュースを、食い入るように見つめる人々の様子が目に浮かぶ。

RHYMESTER - "なめんなよ1989 feat. hy4_4yh" (Teaser)

 そして「なめんなよ1989 feat. hy4_4yh」は、宇多丸チルドレンの2MCガールズラップユニット“hy4_4yh(ハイパーヨーヨ)”をフィーチャリング。楽曲のテーマになっている“1989年”は昭和と平成の狭間の年で、RHYMESTERが生まれた年であり、hy4_4yhの2人が生まれた年でもある。世代によって全く異なる意味を持つ1989年。hy4_4yhは〈ファッキューメーン!〉と歌い、RHYMESTERは〈サンキューメーン!〉と歌う。今も昔も〈クソみてぇな世界〉であることには変わりはないが、ヒップホップのバイブスで、世代を超えて通じ合ったフューチャリングは、実に熱く刺激的だ。

 本作には前述のコラボ曲も収録のほか、「Forever Young」にアンタッチャブルのザキヤマ(山崎弘也)が参加した、「Forever Young (ザキヤマ Remix) / スチャダラパーからのライムスター」も収録。宇多丸がパーソナリティを務める『アフター6ジャンクション』(TBSラジオ)テーマ曲「After 6」で始まり、ラストの「待ってろ今から本気出す」まで、極上のラップとビートに乗せて、世界のカルチャー&ニュースをスタイリッシュにお届けするアルバム。コロナ禍を経てライブでの声出しが解禁され、夏フェス開催決定の知らせも続々。本来のライブが帰って来たこの夏、ぜひ聴きたいのがこの『Open The Window』だ。

 またRHYMESTERはこの『Open The Window』を携えて、7月9日の川崎・CLUB CITTA'を皮切りに全国ツアー『King of Stage Vol. 15 Open The Window Release Tour 2023-2024』を開催。各日にReiかhy4_4yhがゲスト出演し、ファイナルには岡村靖幸、横山剣&スモーキー・テツニ(CRAZY KEN BAND)、スチャダラパー、SOIL&"PIMP"SESSIONS、JQ(Nulbarich)、hy4_4yh、Masta Simon(Mighty Crown)、Reiとアルバム参加メンバーが集結することも発表されている。「キング・オブ・ステージ」の本領発揮に期待が寄せられる。

 そのツアーファイナルは来年2月16日、東京・日本武道館。日本武道館でワンマンを開催するのは2度目で、1度目は2007年。RHYMESTERは初の日本武道館公演をもって、グループ活動の休止を発表したという経緯がある。ある意味歴史的であり、ある意味因縁でもある日本武道館。そこで彼らは何を見せてくれるのか。またこのツアーを経て、心に残るものは何なのか? オープンマインドでライブの日を待ち望みたい。

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