2023.06.17 13:00

ASIAN KUNG-FU GENERATION、15年を経て辿り着いた完全版『サーフブンガクカマクラ』　バンドとしての変化と手応え

文・取材＝小川智宏、写真＝堀内彩香

軸があるからエフェクターを1個や2個変えたぐらいじゃ変わらない

――歌詞はどうですか？　15年前に書いた歌詞との整合性というか、昔の曲と並ぶということは考えました？

後藤：それはあんまりないです。今の視点になるから、「和田塚ワンダーズ」とか「日坂ダウンヒル」とかもそうなんですけど、若干自分が年老いたことに言及していて。

――そうですね。

後藤：でも、そういうものでやっていいんじゃないかと思ってたというか。いろんな視点があっていいと思って。

――「石上ヒルズ」には〈スマホ〉という言葉も出てきますからね。

後藤：そう、スマホは出した方がいいかなと思って。

喜多：15年前はギリギリなかったかもしれないくらいですもんね。

――その辺も今と15年前が自然と同居してるような感じがして、聴いていると不思議な感覚になるアルバムでもありますよね。逆に元々の10曲の歌詞を改めて見返した時にどんなことを感じました？

後藤：いいなと思うところがたくさんありましたよ。「七里ヶ浜スカイウォーク」とかは歌詞をちょっと書き換えたりはしましたけど。

――新曲5曲が入ることによって、既存の10曲の歌詞も違う角度で光が当たる感じがするというか、違うメッセージ性が浮かび上がってくる感じがして。そういう意味でもまさにこれが完全版だったんだなと。

ASIAN KUNG-FU GENERATION 『西方コーストストーリー』Music Video

後藤：確かにね。よくまとまったなって感じがしますね。うまくいかなかったらいやだなとは思ってやってましたけど。作ったはいいけど、自分であんまりいいって思えなかったら弱ったぞ、みたいな。自分のなかでは結構意気込んで始めたことなので、なんとか形にしたいって気持ちがあって。プレッシャーがないとは言い切れなかった。でも、マスタリングもすごくうまくいって「よかった」って。

――先ほど喜多さんもおっしゃっていたとおり、ファンにとっても本当に大事な作品ですし。

後藤：だから、再録ってどうなんだろうっていうのも含めてね。でも面白いと思うんですよね。再録ベストとかじゃなくて、アルバムをまるっと録り直す。やってもよくならなそうなアルバムもあると思うんですよ。たとえば『ファンクラブ』とかは録り直す必要ないと思うし、『Wonder Future』とかも録り直してもダメだと思う。そういうなかで『サーフ』はもう1回録る理由があったのはありがたいなという気持ちがありますね。

――しかも新曲がちゃんと入ってリニューアルされるっていうのがすごくいいなと思って。いろんな事情で当時10曲になっていたんだと思うんですけど、余白があったのはこのアルバムにとってはすごく幸福なことだったんじゃないかなって。

後藤：そうですね。それはそう思います。当時がんばってやっても、たぶんこんなに幅広く曲を書けなかったと思うし。

――2016年に『ソルファ』をリメイクした時とは違いますか？

後藤：今回の方がプレッシャーは低いんじゃないですかね。『ソルファ』は『ソルファ』であの人気アルバムをもう1回やる難しさがあるっていうか。あの時はそのままやればいいんじゃないかなと思えたんですけど、今回に関しては新曲があるし、新しく入る曲のクオリティが著しく劣っているといちばん問題になるところだなと思っていたので、曲が書けて喜多くんのギターアレンジがしっかり乗ってきた段階で「いけるかな」と気が楽になりましたね。

――今回リメイクという形で昔の作品に向き合ったことで、バンドとしてはどんな変化を感じますか？

後藤：すごく柔軟になってきましたよね。音作りに関しても、いろんな実験を自分らでやったりするし。これを最初に作った時代は足下（エフェクター）とかもライブとまったく同じにしないと気が済まないくらいの保守性があったと思うんですけど、今は使いたいものだけ繋いでやったりとか、アンプもいろいろセレクトしてみたりとか、そういう柔軟さがある。昔はたぶん、あんまり自分の型がないから型作りに必死だったんですよ。

――なるほど。

後藤：なるべく変わったことをしたくないっていうか、したら音がブレちゃうんじゃないかと思ってたと思うんですけど、今は別にエフェクターを1個や2個変えたぐらいじゃそんなに変わらないっていうかね。出したい音の幅がある程度定まってきてるから、そういうのはすごく楽です。昔だったら引き受けてくれないようなディテールのチェンジを山ちゃんや建ちゃんも引き受けてくれるようになったんですけど、それは本人たちにちゃんと軸があるからなんですよね。潔なんかは勝手に変わってっちゃうから、それはそれで見守ってないといけないんだけど（笑）。

――（笑）。

後藤：「俺ってどう叩いてましたっけ？」みたいになっているときがあって、それは知らんわって（笑）。

伊地知：同じことを2回できない病なんです。

後藤：同じこと2回できないってある？　っていう。でもまあ、自分らしさをちゃんと捕まえられるようになってきたんじゃないですか。たかだか機材ぐらいじゃ自分が変わっちゃうことなんてないって、よくわかってるっていうか。そういう肝の据わり方というか、ちゃんと地に足ついてるところがそれぞれにあるんじゃないですかね。

山田：うん。バンドサウンドを進化させていきたいということもあるし、2008年当時のプリミティブさとはまた違う追求の仕方は、自分もしていきたいと思っているので。そうやって微妙な音の変化とかもちゃんと楽しみながら、面白さを感じながらやれているからこそレコーディングが楽しいのかなって思います。あと、やっぱり新しい曲はすごく整理されてると思うんです。こう並べて聴くと不思議なもので旧曲と新曲の差みたいなものはそんなに感じないんですけど、1個1個ちゃんと聴くとすごく洗練されているのを感じて。和音の整理のされ方とかもサウンドを追求するからこその作り方になってるんだろうし、そういう面白さもあるなっていう。

喜多：15年前よりは確かに和音の感じとか整理の仕方とかもわかってきたっていうのはあるんですけど、エモさだけは失いたくないというところは念頭に置いて、レコーディングに臨みましたね。むしろ、ギターでそこを担いたい、みたいな。それはちゃんと伝わるように音に残せたんじゃないかなって。エモさが失われていないのは、きっと聴いてくださる皆さんにも伝わるんじゃないかな、と。

――失われていないというのもそうですし、また違ったエモさみたいなのが出てきている感じがしますよね。「和田塚ワンダーズ」とか、いいですもんね。

喜多：「和田塚ワンダーズ」のギターソロなんて、自分でやっといて泣いちゃいますよ。あれは確かに15年前だとできないと思う。

――その辺も含めて、さっき後藤さんもおっしゃいましたけど、15年経ったことに対して肯定的に受け入れていくような態度が歌詞にも音にもちゃんと出ているところが、完全版の完全版たるゆえんかなと思います。

伊地知：さっき同じことが2回できないという話がありましたけど、15年前、このアルバムを録る時に練習をしないでスタジオに入ろう、そのまま録っちゃおうってゴッチに言われていたんですよ。それはなぜかというと、それまでのアルバムが作り込みすぎていて、それはいいことでもあるんですけど、いい意味での手抜きというか、「一発しか録音できない中のかっこよさみたいなのがうちらはできてないよね」っていうゴッチからの提案でもあったんです。その時できていなかった、練習をせずにかっこいい音源を録音するっていうことが、15年経ってちゃんと理解できてきて、そういう心持ちで今度は音にこだわって、作り込みすぎないというか、積み上げすぎないよさ、いい感じの抜き差しができるようになった。そこはすごく変わったなと思うんですよね。当時一発録りで録った音源もみんなにかっこいいって評価してもらったんですけど、じつはそれぞれ悔しいところもあったりして。今もう一度やることができて本当によかったなと思います。

後藤：みんなに楽しんでもらえるといいですね。これを聴いてギターを買ってみようかしら、みたいな気持ちになって、真似してみようかなと思ってくれる人がいたらいい。相変わらずそんなに難しいこと、やっていないので。

■リリース情報
先行配信EP『サーフブンガクカマクラ(半カートン)』
URL：https://kmu.lnk.to/SBKHancarton
＜収録曲＞
01.石上ヒルズ
02.柳小路パラレルユニバース
03.西方コーストストーリー
04.日坂ダウンヒル
05.湘南エレクトロ
06.和田塚ワンダーズ

『サーフブンガクカマクラ(完全版)』
特設サイトURL：https://www.sonymusic.co.jp/Music/Info/AKG/SBKC/
7月5日（水）発売
CD予約：https://kmu.lnk.to/bmvsqJ
仕様
・初回生産限定盤[CD+サーフブンガクカマクラお散歩MAP＆楽曲解説]
3,600円（税込）
・通常盤[CD]
定価3,300円（税込）
＜収録曲＞
01.藤沢ルーザー
02.石上ヒルズ
03.柳小路パラレルユニバース
04.鵠沼サーフ
05.西方コーストストーリー
06.江ノ島エスカー
07.腰越クライベイビー
08.日坂ダウンヒル
09.七里ヶ浜スカイウォーク
10.稲村ヶ崎ジェーン
11.極楽寺ハートブレイク
12.長谷サンズ
13.由比ヶ浜カイト
14.和田塚ワンダーズ
15.鎌倉グッドバイ

【購入特典】
・Amazon.co.jp：メガジャケ(CDジャケットの24cm×24㎝サイズ)
※商品名に、【Amazon.co.jp限定特典】の記載があるページからの購入のみが対象。
・TOWER RECORDS全店（オンライン含む/一部店舗除く）：オリジナルポストカード
・楽天ブックス：オリジナルアクリルキーホルダー
・楽天ブックス(ファミリーマート受け取り限定特典)：オリジナルアクリルコースター
・セブンネットショッピング：オリジナルアクリルカラビナ
・「サーフブンガクカマクラ（完全版）」応援店特典：オリジナルステッカー
※応援店の店舗詳細については追って案内。
※特典は数に限りあり、無くなり次第終了。
※特典絵柄は追って案内。
【購入はこちら】https://kmu.lnk.to/bmvsqJ

■ツアー情報
『Tour 2023「サーフブンガクカマクラ」』
9月29日（金）福岡Zepp Fukuoka
開場17:30/開演18:30
※フロントアクトあり
10月1日（日）東京Zepp Haneda(TOKYO)
開場17:00/開演18:00
※フロントアクトあり
10月4日（水）大阪BIGCAT
開場18:00/開演19:00
10月5日（木）大阪なんばHatch
開場17:30/開演18:30
※フロントアクトあり
10月8日（日）宮城SENDAIGIGS
開場17:00/開演18:00
※フロントアクトあり
10月15日（日）北海道ファクトリーホール
開場17:00/開演18:00
※フロントアクトあり
10月18日（水）愛知Zepp Nagoya
開場17:30/開演18:30
※フロントアクトあり
10月21日（土）広島広島CLUB QUATTRO
開場17:00/開演18:00
※フロントアクトあり
10月22日（日）広島広島CLUB QUATTRO
開場16:00/開演17:00
11月2日（木）東京日本青年館ホール
開場18:00/開演19:00
11月3日（金・祝）東京日本青年館ホール
開場15:00/開演16:00
11月19日（日）東京TACHIKAWA STAGE GARDEN
開場16:00/開演17:00
11月22日（水）神奈川鎌倉芸術館大ホール
開場18:00/開演19:00
11月23日（木・祝）神奈川鎌倉芸術館大ホール
開場15:00/開演16:00

スタンディング：一般¥6,600（税込）／U-23サポート¥4,600（税込）
全席指定/ 2階指定席：一般¥7,700（税込）／ U-23サポート¥5,700（税込）
※3歳以上チケット必要
U-23サポートチケット：23歳以下の方は「U-23サポートチケット」を購入可能。
※各公演日来場時に23歳以下の人が対象。当日会場にて、年齢証明ができるもの「学生証/公的写真付証明書(マイナンバーカード・免許証等)」を持参のこと。
※当日会場にて証明書をご提示いただけなかった方は、当チケットの対象にはなりません。お忘れになりませんよう、必ず証明書をお持ちいただき、ご提示をお願いいたします。
※一般チケットをご購入後、会場で年齢をご提示いただきましてもキャッシュバックは致しかねます。またU-23サポートチケット完売後、一般チケットをご購入いただきましてもキャッシュバックは致しかねます。
※前年まで実施していた、会場でのキャッシュバックはおこないません。
一般発売日：8月20日（日）10:00（9/29福岡公演～10/22広島公演）
9月24日（日）10:00（11/2東京公演～11/23神奈川公演）
Info: ASIAN KUNG-FU GENERATIONオフィシャルホームページ：www.asiankung-fu.com
Tour 2023特設サイト：http://www.akglive.com/tour2023/

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