サバシスター「ジャージ」

　淡い青春の楽曲かと思いきや、実はメルカリで横取りされたジャージの歌である「ジャージ」は最注目ガールズバンド・サバシスターの代表曲。まさかの切り口ではあるが、意外と似た経験をしたことがある方も多いのではないだろうか。ここまで触れてきた楽曲は恋愛をベースとした共感だが、「ジャージ」のような日常を切り取った共感もまた、若い世代へリーチするのだろう。とはいえ、〈可愛かった君とあのジャージは／知らん誰かに取られたし〉の冒頭からはこんなテーマで書かれたとは分からない。裏側を知ることでより楽しめる楽曲の1つだ。

マルシィ「未来図」

　最後に紹介するのは、切ない失恋ソングで若い世代から支持されるバンド・マルシィの「未来図」。この楽曲は海外リスナーに飛び火し、昨年Spotify バイラルチャートにて台湾で1位、タイで4位、香港で3位を記録するなど、アジア圏でも人気を博した。言葉の壁を越える、洗練されたサウンドと歌声が注目されているが、歌詞に目を向けるとやはりそこには共感性の高いフレーズが散りばめられている。長年、付き合っているカップルが主人公となるこの楽曲は、愛の形をこれでもかと表現した歌詞が魅力的。直接的に“結婚”というワードは出てこないが、どこかプロポーズを匂わせる、幸福感溢れるサウンドとフレーズ。このシンプルさこそが、若いリスナーにウケているのかもしれない。

　TikTokをはじめとするSNSを起因にスマッシュヒットが生まれる昨今だが、今後はシンプルなギターロックサウンドに乗せて共感性の高い歌詞を紡ぐバンドがよりメインストリームへ羽ばたく予感がする。ぜひ、サウンドだけでなく歌詞にも注目して音楽を楽しんでほしい。