SHISHAMO、This is LAST、KALMA……TikTokで人気を得るギターロック曲 シンプルなサウンドと共感性の高い歌詞が共通点に
近年、SNSの多様化により、若年層へ音楽文化が浸透し情報収集をする手段がWebやSNS中心となってきた。特にTikTokが誇る影響力は非常に大きく、TikTokを経由して、メインストリームへと羽ばたいていくアーティストも少なくない。その潮流の中で、注目したいのがギターロックの存在だ。特に共感性の高い歌詞を紡いだ楽曲が人気を博しているように思う。もちろんサウンド面も大きく作用していると思うが、ここ最近でTikTokでバズった若手バンド、ねぐせ。やヤングスキニーを例にすると、分かりやすく、口ずさみたくなる歌詞、そして若いリスナーが共感するワードが散りばめられた楽曲だからこそ、若年層がヘビーユーズするTikTokで火がついたように感じる。この記事では、そんな共感性の高い歌詞を散りばめ、TikTokを中心に人気を得たバンドの楽曲をいくつか紹介していく。
SHISHAMO「君の目も鼻も口も顎も眉も寝ても覚めても超素敵!!!」
まず最初に紹介するのは、3ピースロックバンドのSHISHAMO。彼女たちの人気の高さは言わずもがなだとは思うが、ここに来て2021年にリリースされたアルバム『SHISHAMO 7』の収録曲「君の目も鼻も口も顎も眉も寝ても覚めても超素敵!!!」がTikTokで注目を集めている。同楽曲に好きな人や“推し”を歌詞にのせて動画にすることが流行しているが、やはり歌詞が分かりやすく、共感性が高い。誰もが経験したことがあるであろう恋にまつわる可愛らしい歌詞で、〈私たちもう恋人同士なのに大好きなまま/このときめきも このドキドキも/少し落ち着く予定だったのに〉という冒頭から伝わる、恋のワクワク感でリスナーを引き込む。一方で、〈私のものじゃなくなるその日のために〉というフレーズで恋の終わりも予期させるこのバランス感こそが若い世代の共感を呼んでいる所以だろう。
This is LAST「#情とは」
続いて、千葉県柏市発スリーピースロックバンド・This is LASTの楽曲「#情とは」。ABEMAオリジナル恋愛番組『花束とオオカミちゃんには騙されない』挿入歌でもあるこの楽曲もまた、共感性の高いフレーズが随所に散りばめられている。切実な恋愛模様を想起させる歌詞に、広がりのあるサウンド。特に〈今更、思い出す価値もないのに/過去にすがり泣く自分が/「情けないな」〉という歌詞からは、いま抱く感情の種類が分からず苦悩する主人公像も窺える。「情」という感情の答えを出そうとする楽曲のタイトルに「#」をつけるあたりもTikTokで拡散されやすい理由なのかもしれない。
KALMA「わがまま」
結成以降、常に等身大の歌を届け続けているKALMAの楽曲で、特に共感性が高い言葉を紡いでいる「わがまま」はバンドのアンセム的存在な楽曲。とてもシンプルな歌詞ではあるが、どこか人懐っこくて、“わがまま”な自分を愛してほしいというシンプルな感情が全面に出ている。〈いつか有名になってお金が増えたら/キミのわがままに なんでも付き合うよ/毎日焼肉食べに行こうよ!〉という歌詞から見えるのは“男の夢”とでも言おうか。でも結局ダラダラしてしまう主人公像に共感を覚えてしまう。なんとも痛快でシンプルな楽曲だ。